弁護士コラム

2019.03.27

【不動産】区分所有建物の管理(前編)

区分所有建物の管理について、前後編の2回に分けて見ていきましょう。
前編では、主に管理組合の成り立ちやその役割について説明していきます。

1 区分所有法と区分所有建物の管理の概要

マンションで共同して生活していくためには、玄関ホールや廊下の清掃、エレベーターの保守点検といった日常的なものから、建物全体の補修といった中長期的な修繕計画に基づく建物の修繕まで、多種多様な管理行為が必要となります。そして、当然にこういった管理を行う役割を担う人が必要となります。

(1)区分所有法上の管理に関わる規定

区分所有法は、区分所有者の共有に属するマンションの共用部分の管理について、建物の保存行為を除き、その決定を、①区分所有者らで構成される管理組合の集会決議、または②規約によるものとして、③管理者(管理組合が法人である場合は、管理組合法人)がこれらの管理組合の決議や規約を執行するものと定めています。

【不動産】区分所有建物の管理(前編)

しかしながら実際のところ、マンションを管理していくためには多くの知識と労力が必要とされるため、専門業者の助力が必要な場合が圧倒的に多くなるため、外部へ委託されているのが一般的です。

次に、管理組合の内部組織について見てみましょう。
区分所有法は、法人化されている管理組合については理事・監事の規定を置いていますが、法人化されていない管理組合についてはこれらの規定を置いていません。
しかしながら実際のところは、法人化されていない管理組合であっても上記のような役職が設置され、管理組合の意思決定が行われることが一般的となっています。

つまり、実際のマンションの管理は、区分所有法に規定のない管理委託契約により外部に委託され、具体的な管理組合の内部組織は規約により構成されていることが多いため、区分所有法のみの理解ではマンション管理に関わる法律関係を理解することはできないということです。
以下に、管理組合、管理規約、理事長(管理者)、理事・監事、管理会社(管理の委託)について順次解説していきます。(管理規約以降の項目は後編にて)

2 管理組合

(1)管理組合の成立

区分所有者は、その個々人の意思にかかわらず、建物等を管理するための団体の一員となり、所有者全員で建物等の管理のための団体を構成し、この団体を「管理組合」といいます。

(2)管理の対象物

管理組合が管理する対象は、どういった物になるのでしょうか?
区分所有法では、区分所有者の共有に属する①共用部分と②建物の敷地及び共用部分以外の付属施設(これらに関する権利を含む)の管理・変更に関する事項は管理組合の集会の決議または規約によるとしており、これらが管理組合による管理の対象物となります。

管理組合による管理の対象物として区分所有法3条に列挙されているのは「建物」「その敷地」「付属施設」であり、上記にある①共用部分②建物の敷地及び共用部分に限定されているわけではありません。
更に、規約では「建物又はその敷地若しくは附属施設の管理または使用に関する区分所有者相互の事項(法30条)」について定めることができるため、管理の対象物を、規約によって上記①や②以外に拡大することも可能なのです。

なお、専有部分に属する物は、当然ながらその部分の区分所有者自身が管理することが原則ですが、例えば水道管を思い浮かべると分かるように、その枝管・支管が専有部分に属する設備であっても、その本管は共用部分に属しており、配管としては構造上一体となっているため、専有部分・共用部分に関わらず一体的に管理する方が効率的な管理対象もあります。
そういった場合にも、規約によって区分所有者ではなく管理組合がその管理を行うよう定める事が可能となっています。

(3)管理組合の法的性格と権限

1の(1)でも少し触れましたが、区分所有建物の管理組合には、①法人化されている場合と②法人化されていない場合の2つのケースが想定されます。
①法人化されている場合
管理組合そのものが権利・義務の主体となり得る
管理組合法人は、その事務に関して区分所有者らを「代理」するものであり(法47条6項)、管理組合法人の法律行為の効果は最終的には区分所有者に帰属します。

②法人化されていない場合
管理組合の法的性格は、その組織の実態に応じて判断されることとなり、組合内で規約を定めて集会が行われている場合は、その多くが権利能力なき社団と判断されます。
また、①と同様に②の管理組合における管理者も、その職務に対し、あくまでも「区分所有者」を代理するもの(法26条2項)と定められています。

つまり、管理組合が法人化しているか否かに関わらず、区分所有建物の管理に関する法律関係は、その本来的な権利・義務の帰属主体が組合ではなく区分所有者にあるということを理解する必要があるのです。

(4)決議の効力と決議事項

管理組合の決議の効力は、決議当時の組合の構成員のみならず、その特定承継人にも及び、更には建物又はその敷地若しくは附属施設の使用方法につき賃借人などの占有者にも及びます。
なお、区分所有法が定めている決議事項は表1の通りで、「区分所有者及び議決権の各過半数」で決するべき普通決議事項(法39条)と決議用件が加重された特別決議事項があります。
また、区分所有法に規定されていない事項についても、区分所有法や公序良俗、その他の法律に反しない範囲で、規約で集会の決議事項とすることも可能です(法30条1項)。

【普通決議事項】

1 18条本文 区分所有者の共有に属する共用部分の管理に関する事項
2 21条、18条本文 区分所有者の共有に属する敷地または付属設備の管理に関する事項
3 25条1項 管理者の選任・解任
4 26条4項、47条8項 管理者等に対する訴訟追行権の授権
5 33条1項但書、42条5項、45条4項 法人でない管理組合において管理者がないときの規約、集会議事録、書面決議の書面の保管者の選任
6 39条3項 集会における電磁的方法による議決権の行使
7 41条 集会の議長の選任
8 49条8項、50条4項、25条1項 管理組合法人の理事および監事の選任・解任
9 49条5項 理事が数人ある場合の代表理事の選任または共同代表の定め
10 49条の3 理事の代理人の選任の禁止
11 52条1項本文 管理組合法人の事務
12 55条の3 管理組合法人の清算人の選任
13 57条2項・4項 区分所有者等の共同利益は違反行為の停止等の請求の訴訟提起
14 57条3項・4項、58条4項、59条2項、60条2項 区分所有者等の共同利益は違反行為に関する法57条から60条までの訴訟に関する管理者等への訴訟追行権の授権
15 61条3項 建物の小規模一部滅失の際の復旧

 

【特別決議事項】

1 17条1項 区分所有者の共有に属する共用部分の変更
2 21条、17条1項 区分所有者の共有に属する敷地または付属設備の変更
3 31条1項 規約の設定・変更・廃止
4 47条1項 管理組合の法人化
5 55条1項3号、2項 管理組合法人の解散
6 58条1項・2項 区分所有者等の共同利益は違反行為に対する専有部分の使用禁止請求
7 59条1項・2項 区分所有者の共同利益は違反行為に対する区分所有権等の競売請求
8 60条1項・2項 占有者の共同利益は違反行為に対する引き渡し請求
9 61条5項 建物の大規模一部滅失の際の復旧
10 62条 建物の建て替え

 

(5)決議の限界

管理組合の決議といえども、区分所有法の規定に反することは勿論できません。
区分所有法では、集会の招集・議事の手続について34条以下に規定を置いています。
また、決議の内容についても、決議の内容が公序良俗に反してはならず、かつ区分所有法の規定に反することもできません。

 

後半に続きます。

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