離婚後も親子の交流を維持することは、子供の健全な成長にとって大変重要です。そのため、離婚した父母の協議により、月1回、2か月に1回等、子供との面会交流が行われています。
しかし、中には離婚した元配偶者に子供を会わせたくないという方も多くいらっしゃいます。今回は、様々なケースを想定して、調停や審判を行った際に、それぞれ面会交流をさせないという方法を取り得るかご説明していきます。
1 面会交流を禁止・制限できる例
(1) 非監護親が子供を虐待していたケース
子供を現実に養育する親のことを「監護親」、養育しない親のことを「非監護親」といいます。
子供が過去に非監護親から虐待を受けており、非監護親に恐怖心を抱いているような場合や、面会交流を行った際に非監護親が虐待を加えるおそれがある場合には、面会交流を実施することが子の利益を害するため、面会交流を禁止・制限すべき理由があるとされています。
ただ、監護親からこの種の主張がなされる場合、非監護親は虐待の事実そのものや程度、子供が恐怖心を抱いていることについて争うことが多く、事実認定が困難となる傾向が見られます。調停では、診断書や怪我をした写真、警察や医師に相談した記録等の提出を求められることが多いので、証拠をきちんと確保しておきましょう。
(2) 非監護親が過去に子供を連れ去ったことがあるケース
子供を現在の生活環境から強引に離して連れ去ることは、養育環境の安定を害することになり、子供に精神的打撃を与える可能性が高いと言われています。そのため、非監護親が過去に子供を連れ去ったことがある場合には面会交流を禁止・制限すべき理由があるとされています。
もっとも、過去に連れ去りの事実があっても、非監護親が真摯に反省し、二度と子供を連れ去らないという確約をしているような場合は、面会交流が認められる可能性があります。その場合でも、決して子供を連れ去ることがないように、弁護士等の第三者の立会いや、面会の場所を制限する等して連れ去り防止策を講じることが重要です。
(3) 非監護親が監護親にDVをしていたケース
監護親が非監護親によるDVの被害者で、非監護親に対する恐怖心やPTSDのため、非監護親との接触に耐えられない場合には、面会交流の実現が現実的に困難なことがあります。特に子供が年少者だと、監護親の協力なしに面会交流を実施できないこともあり、面会交流を禁止・制限せざるを得ない場合も考えられます。
ただ、非監護親から監護親へDVがあっても、子供に対しての暴力は一切なく、子供が非監護親を慕っているという場合もあります。面会交流を禁止・制限すべきかどうかはあくまでも子供の利益の観点から判断されるべきものなので、監護親についての事情をもって当然に面会交流を禁止・制限されるわけではありません。監護親と非監護親の接触を回避することによって面会を実現することが可能になることもあるので、家族の協力や第三者機関の利用も考えられます。
(4) 監護親が非監護親を嫌悪しているケース
実務上、面会交流をさせたくない要因として一番多いのが、監護親が非監護親に対する感情的反発等から面会交流を拒絶するケースです。しかし、面会交流は子供の利益の観点から実施の当否等を検討すべきものなので、監護親の非監護親に対する拒絶を理由に面会交流の禁止・制限が認められることはあまりありません。
場合によっては、非監護親との紛争によって監護親に抑うつ状態が現れ、育児放棄に至る等、子供の利益を害する事態が懸念されることもあります。その際は当分の間直接的な面会交流を見合わせるなどの措置がとられることもあります。間接的な面会交流として、手紙のやりとりをしたり、写真や動画を送付するといった方法もあります。
(5) 子供が面会交流を拒んでいるケース
監護親から、「子供が非監護親に会いたくないと言っている」と主張されるケースも多く見られます。例えば子供が非監護親の監護親へのDVを目撃して恐怖心を抱いており、非監護親に会いたくないという場合には、面会交流を禁止・制限することも考えられます。
しかし、子供が非監護親に会いたくないと言っていることが事実でも、監護親が非監護親を嫌悪している影響から、子供が非監護親に対して拒否的感情を抱いている場合があります。
また、本当は子供が非監護親に会いたくても、同居している監護親に対する遠慮から、面会交流をしたくないと言っている場合もあります。もしくは、監護親と非監護親が面会交流をめぐって対立することを嫌い、面会交流に否定的になることもあります。
いずれにせよ、子供の真意を把握するには慎重な検討を要するところであり、調査官による子供の意向、心情や監護状況等の調査を行った上で、子供の意思を把握する必要があります。
(6) 監護親が再婚し、子供が再婚相手と養子縁組しているケース
子供が監護親の再婚相手と養子縁組をしても、非監護親が子供の実親であることに変わりはないため、子供が非監護親からの愛情を実感する機会としての面会交流の重要性は変わりません。したがって、再婚し、養子縁組をしているという理由のみで面会交流を制限したいというのは難しいです。
2 面会交流を拒否するリスク
もし面会交流の取決めが調停等でなされた場合、それを拒否すると非監護親は強制的に面会交流を実現できる立場にあるため特に大きな問題となります。ただし、この「強制的」というのは、無理やり子供を連れて行くことができるという意味ではなく、間接強制のことを意味しています。間接強制とは、義務を履行しない者に対して、「義務を履行せよ。もし履行しないときは、1回の不履行につき10万円を支払え。」という命令を家庭裁判所が出す制度です。
義務を履行しないとお金を支払わなければならないので、心理的なプレッシャーを受け、義務を履行するようになることを意図しています。
したがって、面会交流が決まっているのに子供を会わせないという方法はお勧めしません。
3 まとめ
今回は、面会交流をさせたくない場合に、どのような理由であれば面会交流の禁止・制限が調停・審判において認められるのかご説明しました。面会交流をさせたくない理由として様々なものがありますが、面会交流が子供に悪影響を及ぼさない限り、非監護親と子供の交流維持にできるだけ協力しましょう。
また、子供によっては、面会交流自体は楽しみでもその前後の監護親の態度に心を痛めストレスを感じる場合があります。子供が面会交流を行う際は笑顔で送り出し、非監護親とどのような話をしたのか詮索したり、日頃から非監護親の悪口を言うことは避け、子供が楽しく過ごせるように心がけましょう。