弁護士コラム

2025.04.08

ストリートピアノと著作権?

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皆さんは、「ストリートピアノ」はご存じでしょうか。 駅や、施設においてあるピアノで、許可された時間であれば誰でも弾いてよいピアノのことであり、上手な方が、突如ストリートピアノで有名曲を弾き始め、人だかりができるという動画を見られた方も少なくないのではないでしょうか。 私も小さいころ、エレクトーン教室に通っていたことがあるのですが、今でも楽譜は一切読めず、即興で演奏などもできないので、ストリートピアノとは無縁な生活を送っています。

 

ストリートピアノで演奏する際に、JPOPや洋楽などをアレンジして弾かれる方もいらっしゃると思いますが、あるとき、「これって著作権とはかは問題にならないのかな」と思い、調べてみることにしました。

まず、著作権法22条では

「著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下「公に」という。)上演し、又は演奏する権利を有する。」

と規定されており、公の演奏、すなわち、不特定多数の公衆に聞かせることを目的とした演奏の場合には、著作権者の許諾が必要となります。 この規定だけをみると、ストリートピアノで演奏する場合にも著作権者の許可が必要になるように見えます。 しかし、著作権法上、公の演奏が、①営利を目的とせず、②聴衆又は観衆から料金を受けず、③演奏している人に対し報酬が支払われない場合には、著作権者の許可を得ずに演奏することが認められています(著作権法38条1項)

したがって、ストリートピアノを演奏する方の場合、営利目的ではなく、お客さんや料金はもらわず、かつ、演奏の報酬ももらっていないため、手続きをすることなく演奏をすることができます。

しかし、ピアノが設置されている場所がショッピングモールなどの商業施設の場合、ピアノを設置することで、お客さんを誘引しているとして営利目的が認められ、商業施設側が許可を得なければならないという可能性もあります。 難しいお話になってしまうかもしれませんが、演奏する主体が、演奏者自身なのか、それとも場を提供している商業施設なのかという論点になります。 この点については、裁判例などがあるわけではないため、あくまでも私自身の見解とはなってしまいますが、そのピアノでどういった曲を演奏するのかについて、商業施設側では何ら指示などもないため、あくまでも演奏主体は、演奏者自身であり、商業施設側で特段手続きをする必要はないと思います。

このように、ストリートピアノでの演奏については、原則として手続きは不要となります。 しかし、演奏している方が、その様子を動画に収め、動画配信サイトで配信する場合には、営利目的があるため、著者区権者の許可が必要になります(ただし、基本的に動画サイトなどが、一括で許可を得ているケースが多いため、個別の手続きは不要であることが一般的です。)。

日常的な出来事をみて、法律的にどうなのかなと思ってしまうのは、弁護士の職業病なのかもしれませんが、何気なくしてしまった行為が法律に反し、刑罰や賠償金を払うなど不利益を被ってしまう可能性もあるため、皆さんもこれ大丈夫かなと思うことがあれば、行動する前に調べたり、弁護士に相談することをお勧めします。

 

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2025.04.07

無料求人広告の「無料」は要注意?被害事例と対策を那珂川の弁護士が解説

「無料で求人広告を掲載できます!」

そんな甘い誘い文句に惹かれて契約したものの、後から高額な請求を受けたり、契約トラブルに発展したりするケースが増加しています。こうした「無料求人広告」をめぐるトラブルは、契約内容や法律に関する知識が十分でないまま進めてしまった結果、思わぬ損害を被る経営者の方が少なくありません。

本記事では、無料求人広告に潜む典型的なリスクや具体的な事例、そして被害を防ぐための対策や、すでに被害にあってしまった場合の解決策を、弁護士の視点から詳しく解説します。

1. 無料求人広告をめぐるトラブルが増える背景

1-1. 「無料」の誘惑と広告業者の収益構造

採用活動を行う企業にとって、広告費の負担を抑えられる「無料求人広告」は魅力的です。一方で、広告業者やプラットフォーム運営会社も事業として収益を上げる必要があるため、「無料」と銘打ちながら実際は別の形で費用を請求する仕組みを用意しているケースがあります。たとえば「無料期間の終了後、自動更新で課金」などが典型例です。経営者の方がこうした収益構造を十分理解せずに契約してしまうと、後々思わぬ請求に発展する恐れが高まります。 コロナ禍や景気の動向によって、求人市場も激しく変化していますし、人材確保に苦戦する企業が増えていることで、このようなトラブルに対する相談の件数も年々増えています。

1-2. 行政や弁護士会も注意喚起を強化している理由

こうしたトラブルは、企業側だけでなく求職者も巻き込む可能性があり、社会的影響が大きいことから、厚生労働省や弁護士会などの公的機関も注意喚起を行っています。求人内容の虚偽表示や過度な要求を受けた場合は、早めに専門家へ相談するよう呼びかけが強まっているのです。

【関連情報】求人広告についての法的根拠と関連法令のポイント

職業安定法・労働基準法と求人広告のルール

無料求人広告を含めて、求人広告は本来、企業と広告業者間の契約だけではなく、労働者を募集する行為として職業安定法や労働基準法の範囲にも関わってきます。求人広告の内容が虚偽表示や過度に誤解を与えるものであれば、行政からの指導や是正勧告を受けることもあり、企業イメージを大きく損なうリスクがあります。

景品表示法や不正競争防止法が絡む可能性

求人広告が消費者向けに公開され、そこで料金や待遇の面を誇大にアピールする場合、景品表示法による規制がかかる場合があります。過大な表示や虚偽の宣伝が認定されると、行政処分や公表などのペナルティを受け、信用を大きく失いかねません。また、他社を誹謗するような比較広告は不正競争防止法が適用される可能性もあるため、特に注意が必要です。

2. 具体的なトラブル事例と騙しの手口

2-1. 掲載後に高額請求されるパターン

業者側からは「とりあえず無料で掲載できます」と促されたものの、契約書の隅に「一定期間を超えた場合は有料プランに移行する」旨が小さく書かれていたり、あるいは口頭と書面で説明が食い違っていたりするパターンです。企業側は気付かずに利用を続けていたところ、後から「無料期間はとっくに過ぎている」として有料プランの料金を請求されるのが典型です。

2-2. 「無料期間終了後」に自動更新扱いで多額の支払いを求められる例

広告代理店や求人サイトによっては、無料期間終了後に自動更新される仕組みが設定されており、事前に解約手続きを取らなかった企業に対して「今月から有料枠に移行しています」として請求書を送り付ける手口もあります。 前述した掲載後の高額請求のパターンと似ていますが、こちらは、最初から「一定期間は無料だが、解約手続きをしない場合は自動更新で有料になる」という仕組みが明示的かつシステムとして設けられているケースです。自動更新になる旨の通知があまりにも曖昧なため、トラブルになるケースが増えています。

2-3. 広告内容の誤記載を理由に責任を転嫁されるケース

広告業者側が勝手に求人内容を改変し、その結果、求職者や企業に混乱が生じることもあります。たとえば「週休2日制」とすべきところを「完全週休2日制」と記載し、契約と異なる就業条件を提示してしまったために、企業が求職者からクレームを受けるトラブルです。業者が責任を逃れようとする例もあり、法的対応が必要になる場合があります。

3. 無料求人広告の“悪質な手口”と見分け方

3-1. 極端な好条件を提示されている

「採用が決まっても費用は一切かかりません」「何名採用しても無料です」といった、あまりにも魅力的に聞こえる勧誘には注意が必要です。こうした場合、契約を結んで詳しい利用規約を確認してみると、実際には有料サービスへの自動移行や、成功報酬以外の手数料が別途発生するといった条項が潜んでいることが少なくありません。無料期間中のサポート範囲も限定されていて、後から追加料金を請求される可能性もあるため、契約前にしっかりと文面をチェックしましょう。

3-2. 手数料体系が不透明

「掲載費は無料でも、システム利用料や応募者情報管理費を別途頂きます」といった説明をする業者の中には、詳細な費用内訳や支払い条件を曖昧にしたまま契約を急かすところがあります。複雑な手数料内訳や料金体系を並べ立てられ、よくわからないと思っていても「時間がない」「今契約しないと枠がなくなる」と迫られたりすると、とりあえず急いで契約してしまおうという心理になりやすいでしょう。費用項目が明確に一覧化されていない場合は、後から請求内容を争うことが難しくなるため、必ず見積書や契約書の詳細を確認するようにしましょう。

5-3. ハローワークや行政機関のロゴを無断使用する悪質例

企業側が安心感を抱く要因の一つとして、「公的機関との提携」や「行政機関のロゴが使われている」ケースが挙げられます。しかし、実際には何の協力関係もなく、ロゴやイメージを無断で使用している悪質業者も存在します。公式サイトのように装っているだけで、個人情報の取り扱いや契約内容が杜撰である場合が多く、万一トラブルが起きても連絡先や実態が不明瞭で対処不能になる可能性があります。少しでも疑問があれば、管轄の行政機関に問い合わせ、真正な取引先なのかどうかを確かめるのが安全です。

5-4. 問い合わせ先や契約形態が不明瞭

「会社概要」ページや利用規約に、住所・電話番号・代表者名などがほとんど記載されていない会社の場合、何か問題があっても相手に連絡を取る手段が限定され、やり取りができなくなる恐れがあります。さらに、契約形態があいまいで「広告主としての権利義務」がどこに帰属するのか不明瞭なまま掲載を進めてしまうと、後から責任の所在が不明になるリスクが高まります。メールフォームだけを窓口にしている業者も注意が必要です。契約前に必ず正式な連絡先と担当者を確認しましょう。

6. 被害を未然に防ぐための対策と注意点

6-1. 広告掲載前に確認すべき事項とヒアリングポイント

・無料期間の具体的な範囲(何カ月、何回、何名の採用まで?)

・有料プランへの切り替え条件・時期

・中途解約や契約更新の手続き方法・違約金の有無

・担当者や問合せ先

上記の点は契約前に最低限確認をしたうえで、相手の回答内容を記録に残しておきましょう。文章で残しておくことで、後から「言った言わない」の水掛け論を回避できます。 また、契約書を作成・レビューする際、必ず「費用は本当に無料か」「有料プランへの自動移行になっていないか」など、トラブルになりそうな部分が契約書内に記載されていないかを確認してください。

6-2. ネット上での評判のリサーチで信頼性をチェック

インターネット上で企業名やサービス名を検索し、トラブル事例や苦情が出ていないかを確認するのも効果的です。実際にトラブルにあった企業が情報を発信しているケースもあるため、気になる場合は契約の前に一度検索をかけてみるとよいでしょう。

6-3.少しでも疑問を持ったら弁護士へ早めに相談を

「営業担当者の説明と契約書の内容がどうも違う」「このまま掲載してよいのだろうか」と迷う場合は、契約をする前に弁護士に相談されてください。見積もり段階や契約締結の前の段階で法的観点からのリスクチェックを行うことで、トラブルを防ぐことができます。

7. すでにトラブルにあってしまった場合の対処法

7-1. 高額な請求が来た場合でも支払いはしない

無料求人広告だと思っていたのに高額な請求が届いた場合でも、いきなり費用を支払わないようにしてください。まずは契約書の内容やメールなどでの契約時のやり取りを確認し、請求の根拠が契約書に明示されているのか、口頭説明や案内資料との食い違いはないかを確認してください。企業側が「無料」と信じていた根拠があれば、民法上の錯誤や詐欺を主張できる可能性もありますが、先んじて支払いを行ってしまうと後から法的に争う余地が狭まるため、事実関係を固めるまでは支払わないのが原則です。

7-2. 速やかに弁護士に相談する

既に多額の請求書が届いている場合は、できるだけ早めに弁護士へ相談をし、適切な法的手段を取ることをお勧めします。 契約の内容や状況に応じて、取り得る手段が変わってきますので、専門的な視点からアドバイスを得られるのは大きなメリットです。

7-3. 関連サイト(行政・弁護士会)が示す注意点

厚生労働省のハローワークや各地の弁護士会、日弁連などが無料求人広告のトラブルについて注意喚起を行っています。実際に被害が発生した企業が相談窓口に駆け込むケースも増えており、公式サイトには典型的なトラブル例や解決策のアドバイスが掲載されています。契約前にこれらの情報を参照することで、必要な情報収集を行うことができます。

日弁連サイト 

ハローワークサイト

8.弁護士に相談したら何をしてくれる?弁護士が行う法律構成と初動対応

無料求人広告を巡ったトラブルが発生した場合、弁護士がまず行うことは、企業が「契約は無効、もしくは取り消し得る」と主張できる法的根拠を整理することです。具体的には、(1) 民法上の錯誤・詐欺、(2) 消費者契約法(※小規模事業者で準用される場合を含む)、(3) 不当利得や信義則違反などが考えられます。

たとえば営業担当者が「永年無料」と明言していたのに、契約書には有料プランへの自動移行がこっそり書かれていた場合、錯誤や詐欺を理由に契約の無効・取り消しを主張する余地があります。また、景品表示法や職業安定法など、広告表示や労務関連の規制が絡む場合には、事業者側の不正行為を指摘できる場合もあるでしょう。 弁護士が代理人となって広告業者への対応を行う際は、 “内容証明郵便”を使った書面通知から始めるのが一般的です。

内容証明郵便は、配達した日付と配達した文書の内容を郵便局が証明してくれるため、裁判手続きに移行した際の証拠としても有効になります。書面での通知を行う際は、契約書の条項と実際の口頭説明が著しく異なる点や、企業が無料と思い込まされた経緯を具体的に示しつつ、請求の法的根拠を問う形で文書を送ります。

ここで「契約自体が無効・取り消し得る」「すでに支払い請求に応じる義務がない」「必要ならば裁判手続きも辞さない」という姿勢を明確に示すことで、業者の不当な請求を引き下げられる可能性が高まります。業者にとっては、弁護士名義の内容証明が来るだけでトーンダウンするケースもあり、ここで解決できる場合も少なくありません。

仮に、業者が請求を撤回しない場合は、(1) 契約無効・取り消しを裁判で主張する、(2) 不当利得返還を求める、(3) 業者の不当表示や誤認を理由に損害賠償請求を検討するなど、複数の選択肢が考えられます。いずれの方法でも、弁護士が法的構成を整理し、契約書やメールでのやり取りなどを精査し主張立証を行うこととなります。

9. 弁護士に相談するメリット

9-1. 契約前のリーガルチェックで法的アドバイスを受けられる

「無料」と謳う求人広告でも、実際には細かい条件や期間が付されていることが多々あります。弁護士が事前に契約書や利用規約を精査しておけば、後から思わぬ請求を受けるリスクを大幅に低減できます。問題のある条項が見つかった場合は、業者と契約を進める前に修正交渉や代替案を提示することも可能です。

9-2. 弁護士に対応をしてもらうことでの負担軽減

すでにトラブルが発生してしまった場合は、弁護士に代理人として広告業者との交渉を依頼することで、企業側は本来の業務に集中しながら問題解決に向けた手続きを進められます。 法的な観点での精査や立証が必須になるため、弁護士のアドバイスを受けながらの実施が推奨されます。

10. まとめ:無料求人広告トラブルは早期対策が肝心

「無料求人広告」の落とし穴は、企業が十分に内容を確認しないまま契約してしまうところにあります。魅力的な言葉ほど警戒し、契約書や利用規約をしっかりと読み解くことが、トラブル防止の第一歩です。少しでも怪しいと感じる広告提案を受けた場合は、早めに弁護士に相談しましょう。 「いきなり高額な広告費の請求を受けた」「契約書の内容をどうチェックすべきかわからない」とお困りの方は、当事務所の無料相談をご利用ください。

 

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2025.02.02

節分っていつですか?

 

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皆さんはおうちで節分の豆まきをされますか?
先日、長男に幼稚園で何をしているか尋ねたところ、「節分の鬼のお面を作っている」と言われました。
豆まきの日にはおそらく私がそのお面を被ることになると思うので、上手に作ってほしいなと思っています。
ただ、今3歳の長女は、毎年私が鬼のお面をかぶって現れると号泣してしまうので、ちょっと申し訳ないなと思いつつ、今年は3歳にもなったし、泣かないで豆まきができるのかなとも期待しています。

 

そんな豆まきを行うのは節分ですが、今年(2025年)の節分は2月2日になります。
妻に「今年は2月2日が節分だ」と話したら、「節分は毎年2月3日じゃないの?」と言われました。
そう言われてみると、節分=2月3日のイメージが私にもあり、なぜ今年の節分が2月2日なのか気になったため、調べてみることにしました。

まず、「節分」とは「季節を分ける」ことを意味しており、「各季節の始まりの日」の「前日」のことを節分といいます。
しかし、今では「立春」の「前日」のみを「節分」と呼ぶようです。
そもそも、季節の変化が起きるのは、地球が自転軸を23.4°傾けた状態で公転(太陽の周りを回ること)しているためです。(日光の当たる時間や長さが変わるため、暖かい季節や寒い季節ができます。
※最近、長男が宇宙のことに興味を持っており、購入した宇宙の図鑑に書いてありました。)

そして、国立天文台では、地球の公転軌道上の一定の位置に来た時点を季節の目印としています。
皆さんも「立春」「立冬」などを聞いたことがあると思いますが、公転軌道を24個の目印で細分化したものを二十四節気といいます。

このように、「立春」が日付で決まっているわけではなく、公転軌道に従って決まるものであるため、節分の日も変動することになります。
というのも、地球は太陽の周りを365日と約6時間かけて1周するため、4年に1度、閏年を入れることで調整しています。
しかし、二十四節気については閏年だけでは調整が追いつかないため、立春の日がずれることがあり、その前日である「節分の日」もずれるということです。
したがって、2024年がうるう年であったため、翌年の2025年の立春は2月3日となり、今年の節分は2月2日となるとのことでした。

法律事務所のコラムなのに法律的な話が一切出てきていなくて恐縮ですが、私と同じように気になった人が調べる際の助けになればと思い、書かせていただきました。

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2025.01.09

年末年始と法律

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このコラムを書いているのが、2024年12月31日の大晦日です(「大晦日」とは、最後に来る「晦日」(旧暦で月の最後の日のことを言うようです。)というそうです。)。
年を重ねていく中で年々1年過ぎるのが短くなっていくように感じますが、今年1年家族とともに健康に過ごせて何よりだなと感じています。
2025年には長男が幼稚園を卒園し小学校に入学、長女も幼稚園に入園するなど新しい環境になりますが、どちらも元気で頑張ってほしいなと思います。

そんなことを書いている年末年始ですが、子供のころは冬休みもクリスマス前後からある程度ありましたが、社会人になると年末年始の休みは、12月29日から翌年1月3日までというのが、いつのまにか当たり前になっていたような気がします。

 

ですが、この年末年始の休みのルールについては、法律などで定められているわけではありません。
まず、休日や祝日について規定している「国民の祝日に関する法律」という法律があるのですが、その中で、年末年始の休みは1月1日の「元日」しか定められていないため、それ以外の日については、国民の休日や祝日ではないことになります。

ただ、官公庁等の行政機関については「行政機関の休日に関する法律」という法律で、「12月29日から翌年の1月3日までの日」が休日となっています(1条1項3号)。
また、立法府である国会については「国会に置かれる機関の休日に関する法律」が、司法機関である裁判所については「裁判所の休日に関する法律」が、同様に、12月29日から1月3日について休日とする旨規定されています。

このように、官公庁などの休日と足並みを揃えるような慣習によって、民間企業についても12月29日から1月3日を休みにするような企業が多くなっています(法律事務所は裁判所と密接に関連するため、裁判所の休みに合わせているところがほとんどだと思います。)。
しかし、上記の通り法律上の休日ではないため、上記の期間を休日とする企業では、就業規則で、12月29日から1月3日も休日とすると規定されているところがほとんどだと思います。

2024年から2025年の年末年始は、土日をまたぐため、暦通りとなると、9連休となります(私も9連休をいただいています。)。
長い休み中に何もしないと、新年だらけてスタートしてしまいそうなので、運動や仕事も少ししたいなと思っています。

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2024.12.20

マラソンと法律

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今年の最初のコラムで、こっそりダイエットをしていたことを告白していたのですが、このコラムを書いている現在も無事リバウンドすることなく、むしろ今年の初めより減量することができています。
というのも、ダイエットでジムに通いだしてからランニングマシンで走るようになり、次第に走ることが楽しくなってきて、今ではジムは解約して、ひたすら走るようになりました。
少しずつですが、スピードが上がり走る距離が伸びてきて、どうせならマラソン大会にも出てみたいと思うようになり、来年(2025年)の3月に佐賀で行われるさくらマラソンにもエントリーをするようになりました。
初めてフルマラソンを走るのですが、一応サブ4(4時間切り)を目標にしています。
もし、さくらマラソンに出場される方がいらっしゃれば一緒に頑張りましょう!

前置きが長くなってしまいましたが、本日はマラソンについてのお話です。
フルマラソンの距離は42.195kmですが、これは第4回ロンドンオリンピックでのイギリス王女アレクサンドラによるわがままが由来となっています。
すなわち、それまでのオリンピックでのマラソンの距離は開催地によって異なっていたのですが、第4回ロンドンオリンピックの際、アレクサンドラ王女はマラソンのスタート地点を城の窓から見えるように宮殿の庭、ゴール地点を競技場にあるボックス席の前に設置してほしいと要望したため、距離が延び、42.195kmとなったとのことです。
そして、第8回のパリ大会以降はこれが正式な距離となりました。

日本でのマラソン大会では、日本陸連競技規則により、

  1. コースの長さは競技距離より短くてはならず、かつ距離の誤差は競技距離の1000分の1以下でなくてはならない。※誤差はプラス42メートルまでOK
  2. スタートとゴールの2点間の理論上の直線距離は、そのレースの全距離の50%以下とする
  3. スタートとフィニッシュの2点間の標高の減少は、1/1000km、すなわち1kmあたり1mを超えてはならない。

という条件をクリアしたコースが陸連公認コースとして認定されるそうです。
ちなみに距離については、国際陸連の規定に従い「距離計測自転車」というものを使用して計測するそうです。

皆さんもマラソンの大会などをテレビで見られているのでご存じだと思いますが、マラソンは通常、公道(道路)を使用して行われるので交通規制が行われます。
しかし、本来道路は交通の用に供されるものであるため、マラソン大会を開催し交通規制をするためには、道路交通法上、事前に許可を受ける必要があります(道路交通法77条1項4号)
なお、この警察署長の許可に関する通達があり、要約すると交通に影響を及ぼす程度が低いほど許可が得られやすいとされており、交通量の少ない日として日曜日又は祝日と書かれています。
このことからマラソン大会は日曜日に開催されることが多いのかもしれません(私が走る佐賀さくらマラソンも日曜日に開催されます。)。

 

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2024.11.26

ナンバープレートで使われていないひらがなは?

ナンバープレートに使われない

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先日、家族で旅行した際、現地でレンタカーを手配しました。
レンタカーに乗られたことがある方はわかるかもしれませんが、基本的にレンタカーは、「わ」ナンバーです。
しかし、旅行の際、妻から「れ」と書いてある車も多く見かけると言われたことで、「れ」ナンバーもレンタカーではないかと思い、ナンバープレートについて調べてみました。

ナンバープレートは、道路運送車両法によって公道を走る車には表示することが義務付けられており、正式名称は「自動車登録番号標」といいます。
なお、軽自動車に取り付けるナンバープレートを「車番号標」といいます。

このナンバープレートには,管轄する運輸局が記載されている「地域名」と「分類番号」(ナンバーの上部にある「福岡●●●」という記載です。)、後述する「ひらがな」、「一連指定番号」(4桁の数字で一般的に「車のナンバー」といわれるのがこの数字です。)が表示されています。

そして、ナンバープレートの「ひらがな」については、登録種別といって、車の用途が記載されています。
具体的には、自家用車か、事業用車か、レンタカーか、普通自動車か小型自動車かという種別にわかれています。

ナンバープレートに使われない

例えば、自家用車かつ普通自動車の場合には「さすせそ、たちつてと、なにぬねの、はひふほ、まみめも、やゆよ、らりるろ」が、事業用車かつ普通自動車の場合には「あいうえ、かきくけこ、を」が使われることになります。
なお、レンタカーについては、普通自動車の場合には「わ、れ」が、小型自動車の場合には「わ」のみが割り振られるようです。
ちなみに、業務用の小型自動車では「り、れ」が割り振られるため、レンタカーでなくとも「れ」が割り振られることもあるようです。

この登録種別のなかで「お、し、へ、ん」の4文字は使われていないようです。
「お」は「あ」や「む」と見間違える可能性があることや「を」と発音が同じであるという理由で、「ん」は発音がしづらいという理由だそうです。
また、「し」と「へ」については、「し」は「死」を連想させ縁起が良くないこと、「へ」は「屁」を連想させイメージがよくないことが理由で使われていないとのことでした。

発音がしづらいということなどで使わないという運用は当然かなと思いますが、縁起やイメージが悪いという理由で使われていないというのは少し驚きました。
また、普段は4桁の数字にしか目がいかないナンバープレートですが、今回調べたことで、今後はひらがなについてもつい目が行ってしまうなと思いました。

 

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2024.10.25

鞭(ムチ)打ちの刑が日本でされることは?(罪刑法定主義)

鞭(ムチ)打ちの刑が日本でされることは?

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先日、シンガポールにて女性に対し、性的暴行を加えた日本人男性に対し、禁固刑(刑務所に収監される刑です)と鞭打ち20回の刑を言い渡された判決が確定したとのニュースに触れました。
判決が確定したということはこの日本人に対しては鞭打ちの刑がかせられることになるのですが、鞭打ち刑はどんな刑なのかと思って調べてみました。

シンガポールでは、鞭打ちの刑がかされることはめずらしくないらしく、観光でシンガポールに訪れた観光客が公共物に落書きをして捕まり、鞭打ちの刑が科せられることがあったそうです。
女性と51歳以上の男性には科すことができず、回数は、一般の男性は24回以内、少年の場合は10回以内とされています。
どうやら、この鞭打ちとても痛いらしく、1回打たれるだけでも失神する受刑者もおり、回数をわけて執行されるそうです。
執行のタイミングも決まっておらず、いつ執行されるかという恐怖におびえながら過ごすそうです。

鞭(ムチ)打ちの刑が日本でされることは?

ニュースのコメントでは、日本でも性犯罪などに鞭打ちの刑を科すべきだというような意見もありましたが、日本ではこのような刑罰を科すことができるのでしょうか。

まず、日本では、刑法9条で

「死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする。」

とされています。
※ただし、改正がなされており、令和7年6月1日からは、懲役刑と禁固刑が「拘禁刑」という刑罰に一本化されることになります。
懲役は、「刑事施設に拘置して所定の作業を行わせる」刑(刑法12条2項)で、禁固は、刑事施設に収容される点では懲役刑と同じですが、所定の作業(労働)の義務がないものです。
※一本化された拘禁刑では、刑事施設の裁量で作業がされることになります。

そして、日本では犯罪や刑罰は、法律で規定されていなければ科すことはできないため(罪刑法定主義といいます。)、
上記刑法9条で規定されている以外の刑罰を科すことはできません。したがって、現状、日本では鞭打ち刑を科すことができません

では、現行の刑法を改正して、鞭打ち刑を定めることができるのでしょうか。
最も効力が強い法律のことを「最高法規」といい、この最高法規に反する法律は無効となります。
日本での最高法規は憲法で、憲法に反する法律の規定は無効になるところ、憲法36条では

「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる」

と規定されており、この「残虐な刑罰」とは、最高裁判所の判例上、「不必要な精神的、肉体的苦痛を内容とする人道上残酷と認められる刑罰」とされています。
そうなると、鞭打ち刑については、不必要に肉体的苦痛を内容とするものであり、人道上は残酷と認められることは明らかだと思うので、日本では鞭打ち刑を科すことはできません。

日本では刑罰の目的が、司法矯正といって、犯罪を犯してしまった人の社会的な更生を目指すことが目的とされていることや、戦前の明治憲法下において拷問や残虐な刑が科されていたことの反省から、残虐な刑罰は「絶対に」禁じられているのですが、シンガポールでは、犯罪を犯した人に対する制裁を科すという目的が強いようです(シンガポールでは日本に認められている執行猶予という刑事施設に収容されることを猶予する制度はありません)。

すこし、話はずれますが、日本では、今、死刑制度が「残虐な刑罰」に該当するので廃止すべきではないかと議論がなされています。
死刑については、多くの国が廃止していること、冤罪だった場合のリスク、被害者側の立場などから様々な意見がある問題ですので、今回の記事をきっかけに、死刑を残すべきかという点について検討されてみてはいかがでしょうか。

 

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2024.09.09

トイレ休憩、タバコ休憩は「休憩時間」?

トイレ休憩、タバコ休憩は「休憩時間」?

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コロナでのテレワークの普及や、働き方改革の一環でのフレックスタイム制の導入など、働く時間や場所が多様になっています。 しかし、そういった中でも、定時に会社に出社し、お昼頃の休憩時間に休憩を取り、定時や少し残業をして帰るというような、今まで通りの働き方をされている方も少なくありません。 そういった中で、お昼の休憩時間(タイムカードなどを打刻して休憩する時間)とは別に、トイレに行っている時間や、喫煙される方がタバコを吸いに行っている時間など、厳密にいうと働いていない時間があると思います。 そういったトイレ休憩やタバコ休憩の時間を給与が発生しない休憩時間とすることはできないかという相談がごくまれにあります。 そこで、今回は、トイレ休憩、タバコ休憩についてどういった取り扱いがなされているのかについて説明させていただきます。

1.休憩時間とは

使用者と労働者の関係について規律する労働基準法の34条1項では、

「使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分、8時間を超える場合においては少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない」と規定しています。そして、この「休憩時間」とは、「労働が労働から完全に離れることを保障される時間」

とされており、休憩時間に該当する場合には、その時間について、労働者に賃金を支払う必要はありません。 簡単にいうと、労働時間の途中にある労働時間でない時間を指します。そして、「労働時間」とは、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」をいいます。したがって、トイレ休憩やタバコ休憩が「休憩時間」に該当するかについては、その時間が使用者の指揮命令下に置かれている状態といえるかという点から判断することになります。

2.トイレ休憩について

トイレ休憩については、そもそも生理現象としての排泄を行うためのものであり、短時間であることから、完全に使用者の指揮命令下(労働)から解放されていることが保証されているとはいえないため、「休憩時間」には当たらないことになります。したがって、トイレ休憩の時間を休憩時間として賃金を支払わない取り扱いをすることは労働基準法違反となり認められません。

3.タバコ休憩について

近年、健康志向から喫煙者は減少していますが、喫煙者の方にとって勤務時間中一切タバコを吸わないというのはなかなか耐えられないのが実情ではないでしょうか。タバコ休憩の時間が休憩時間に該当するか否かが争われた裁判例では、「職場内で喫煙していたとしても、何かあればただちに対応しなければならないのであるから、労働から完全に解放されている状態とはいえない」として、休憩時間には該当しないとの判断がなされております。となると、厳密にいうとタバコ休憩の時間も労働時間として給与が発生していることになり、タバコを吸わない人との間の不公平感があるようにも思えますが、仕事中に飲んでよいとされるコーヒーを作っている時間などは休憩時間とならないことは争いはないと思うので、それとの対比を考えると逆にタバコ休憩のみ認めないというのは逆に問題になってしまうかなと思います。

4.トイレにこもっている場合や、何度もタバコ休憩に行く場合は?

上記でご説明したとおり、トイレ休憩やタバコ休憩が労働基準法上の「休憩時間」にあたらないとしても、例えば、病気でもないのにトイレに何十分も閉じこもっていたり(携帯を持ち込んでトイレでゲームをしているような人もいるようです)、短時間に何度もタバコ休憩を行うということは許されるわけではありません。 そのような行為を従業員が行っている場合には、職務専念義務違反として懲戒処分の対象となったり、賞与の減額事由となります。もっとも、使用者側の場合、単に「あの人はしょっちゅうトイレに行っている」というような主観的な内容だけで処分などをすることは、後々紛争に巻き込まれるリスクがあるため、タバコ休憩の時間や、理由なく離席している状況等を記録しておくことが望ましいでしょう。

5.さいごに

こうした細々した休憩について会社側が逐一管理するということは、働きづらい環境になってしまうリスクもあり、なかなか現実的ではないとは思います。 一方で、働いている人も、無配慮にタバコ休憩をしてしまうと、他の従業員から反感を買ってしまうかもしれません。使用者も労働者も、みんなで働きやすい環境にするよう心掛けてもらいたいなと思いました。

 

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2024.08.19

進むカスハラ対策

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以前、ブログで現在は様々なハラスメントが存在することをご紹介させていただきましたが、今回はその中でも紹介したカスタマーハラスメント、略して「カスハラ」についてご説明させていただきます。

以前の記事はこちらから:なんでもハラスメント?~現代のハラスメントの問題点~

最近のニュースで、各企業において、カスハラに対して毅然とした対応をとることを表明しているという情報に触れました。具体的には、JR東日本では、カスハラが行われた場合、乗客への対応はしない。悪質と判断した場合には警察や弁護士などに相談して、厳正に対処するという方針をホームページにも掲載しており、会社としてカスハラについては対応しないという毅然とした対応を示しています。

そもそも「カスハラ」とはいったいどういった行為を指すのでしょうか。この点、厚生労働省から出されている「カスタマーハラスメント対策マニュアル」では、カスハラの定義として「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業関係が害されるもの」と定義されており、簡単に言うと、理不尽なクレーム言動がカスハラに該当するとされています。

そして、カスハラに該当する行為の具体例としては、以下のような行為が挙げられています。

(1)要求の内容が妥当性を欠いているケース

  • ・提供する商品・サービスに瑕疵(傷や欠点など)や過失が認められないにもかかわらず何かを要求する行為
  • ・要求内容が商品やサービスに関係ないものであること

(2)要求実現のための手段・態様が社会通念上不相当な言動の場合

2-1.内容如何にかかわらずカスハラに該当するもの
  • ・暴行や傷害などの身体的な攻撃
  • ・脅迫・中傷・名誉毀損などの精神的な攻撃
  • ・威圧的な言動
  • ・差別的・性的な言動
  • ・継続的・執拗な言動
  • ・土下座の要求
  • ・不退去や居座りなどの拘束的な行動
  • ・従業員への個人的な攻撃や要求
2-2.内容の妥当性に照らして不相当に該当する場合がある行為
  • ・商品交換の要求
  • ・金銭補償の要求
  • ・謝罪の要求

そして、このようなカスハラ行為について、企業が放置していたり適切な対応を取らない場合、従業員のモチベーションの低下にとどまらず、カスハラにより、従業員の心身を害するようになってしまった場合には、安全配慮義務違反等で損害賠償の対象となってしまう可能性もあります。企業が、毅然とした対応を表明しているのも、会社として従業員を守る姿勢であると表明することで、カスハラ行為自体を未然に防ぐとともに、安全配慮義務を尽くしているというアピールにもなるからであると思います。

しかし、気を付けなければいけないのは、全てのクレームが問題というわけではありません。会社の商品やサービスに欠陥やミスがあった際に、正当な方法でクレームをいう こと自体はむしろ顧客の権利であり、それすらも禁じられるわけではありません。

したがって、適正なクレームとそうでないカスハラを区別する判断が必要になりますが、その判断については、顧客の要求内容に妥当性があるか、要求を実現するための手段・態様が社会通念に照らして相当かという点を基準に判断していくことになります。

具体的な場面において、カスハラに該当するか否か判断に迷ってしまう場合もあると思います。そうした際に会社において顧問弁護士と契約していれば、その場ですぐに判断するのではなく「弊社が契約している顧問弁護士に相談した上で後日対応したいと思います」と回答することも可能になると思います。また、顧問弁護士がいるということを表明するだけでも、カスハラ行為を未然に防ぐこともできると思います。

当事務所は多数の顧問契約を締結いただいておりますので、カスハラに該当するか、どのように対処すればよいかという点について経営者の皆様に適切にアドバイスができると自負しております。当事務所の顧問契約は「フレックス顧問契約」といって、お支払いいただいた顧問料が無駄にならない顧問契約であるため、今回この記事を見られた経営者の皆様は是非一度ご検討ください。

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フレックス顧問についてはこちらから:フレックス顧問契約

 

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2024.07.24

これは違法ではないのですか!?~刑事法と民事法~

弁護士がわかりやすく解説!これは違法ではないのですか?民事法と刑事法

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当事務所では、企業様だけではなく、個人の皆様も含め、様々な方が相談に来ていただいております。
ご相談に来られる方のなかで、「相手方が〇〇なのは違法なのではないですか?」と仰られる方が多いと感じます。
ご相談に来られる方に対しては、ご説明させていただいているのですが、今回は、この「違法」という言葉について、場面などを分けてご説明させていただきます。

まず、辞書的な意味の「違法」とは、文字通り、「法、法律に背くこと」を言います。
したがって、「違法」という言葉をきちんと説明するためには、この「法律」の中身を検討する必要があります。

1.刑事法上の違法

法律の中には、違反すると、刑事罰を課されることが規定されている法律があり、これを「刑罰法規」といいます。
刑法などが一般的ですが、それ以外にも労働基準法の一部なども刑罰が課せられる刑罰法規が含まれています。
このように、刑罰法規に反する行為をした場合には、刑事法上違法な行為ということになります。

2.民事法上の違法

上記の刑事法上の違法な行為とは別に、民事法上違法な行為として定められている行為があります。
民法709条では、

「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」

と規定されており、不法行為に基づく損害賠償請求について定めています。
このような不法行為に基づく損害賠償請求権が発生するためには、相手の行為が違法な行為である必要があり、この場合の違法行為とは民事法上の違法な行為ということになります。

3.2つの違い

この刑事法上の違法な行為と民事法上の違法な行為とは同じように見えますが、違う場合があります。
例えば、人を殴ってケガをさせた場合、その行為は傷害罪(刑法204条)に該当する行為として刑事法上違法な行為に該当し、かつ、不法行為に基づく損害賠償が発生する行為であり民事法上も違法な行為に該当します。

これとは異なり、例えば、既婚者の人と、不貞行為を行ってしまった場合、不法行為(不貞行為)に該当するので、民事法上の違法となることは当然です。
しかし、不貞行為は、現在の法律では犯罪ではないため(戦前の日本の法律では、「姦通罪)」として犯罪行為でした)、刑事法上の違法な行為には該当しません。

4.民事法上の義務違反行為

さらに、民事法上の義務違反行為というものが存在します。
例えば、お金を借りているのに返さない、請負代金を支払う義務があるのに支払わない、物を買って、代金を受け取ったのに商品を引き渡さないというように民事法で認められる契約法上の義務に反する行為がそれに該当します。
この民事法上の義務違反行為についても例えば、給料を一切払わないという場合には、労働基準法の刑罰法規にも反する行為であるため、刑事法上も違法ですが、貸したお金を返さないという行為は、刑事法上違法な行為ではありません(そもそもお金を返す意思がないのに借りたという場合には、詐欺罪として犯罪行為に該当する場合もあります。)。

上記の「〇〇は違法ではないのですか!?」という場合、この民事法上の義務違反行為をしている相手が犯罪に該当するのではないかという質問であることは多いです。
したがって、この場合の回答としては「契約上の義務には反しているのですが、犯罪ではないのですよ」と異様な回答になると思います。

5.最後に

刑事法上の違法な行為について定める刑罰法規については、その目的が刑罰を定めることで、犯罪行為をなくし、社会の秩序を維持することにあります。
他方、民事法上の違法な行為や、民事法上の義務などを規定する民事法(民法、商法等)は、その目的が、私人間の紛争や取引ルールを定めることで、紛争を解決するということなどがあります。 このように、それぞれの法律の目的が異なるため、違法の概念が異なってくることになります。

このように、刑事法上の違法な行為、民事法上の違法な行為、民事法上の義務違反行為と異なるものが同じような違法、違反というような言葉でひとくくりにされているため、分かりづらくなっているのではないかと思います。
説明する私が、こうした理屈を理解していないと、ご相談に来られる方にもきちんと理解してもらうことはできないと思いますので、日々研鑽を怠らないようにしたいと思います。

 

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