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発言の「撤回」・・・すれば問題なし??

 

 最近、政治家や著名人が不適切な発言を公の場などで行った時に、記者や、国会議員などが「発言を撤回されないのですか?」「直ちに発言を撤回してください」と問い詰めるシーンや、問題発言を行った人本人が、「謝罪し、直ちに発言を撤回させていただきます。」などと発言しているシーンをよく見かけます。

 こういったシーンを見て思うのが、発言を撤回したからといって、問題発言を行ったという事実がなくなるわけではないのに、なぜ、撤回をしたり、執拗に撤回することを求めたりするのか、とても不思議に感じています。

 撤回することで、問題を早期に収束させたいう思惑や、撤回させたことで、発言の不当性を世間にアピールしたいというような思惑があるのだろうと思いますが、あまりにも撤回ということがピックアップされ過ぎなのではないかなとも思っています。

 「撤回」という言葉は、辞書等では「発言・提案など先行する場面での行為等を後に取り下げることをいう。」等とされていますが、法律上の用語としての「撤回」とは、「意思表示を行った者が、ある行為を将来に向かって無効とさせること。」を意味します。
 似たような概念で「取消」というものがありますが、これは、「過去に遡って」無効とさせる点で「撤回」とは異なります。

 民法上「撤回」が用いられているものとしては、「承諾の期間を定めてした契約の申込みは、撤回することができない。」(民法521条1項)、「承諾の期間を定めないで隔地者に対してした申込みは、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは、撤回することができない。」(524条)といったものがあります。

 また、同じ民法の中で、遺言の撤回という制度もあります。
民法1022条では、「遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。」と規定されており、一度遺言を書いたあと、再び遺言を書く際に、前の遺言について撤回すると記載することで、一度書いた遺言を撤回することができます。

 また、もう一度遺言を作成しなくても、遺言の内容と矛盾した行為を遺言を作成した人が行った場合、その行われた行為の範囲で、遺言を撤回したものとみなされます。

 例をあげるとすると、自宅を息子に相続させると記載した遺言を作成した後に自宅を売却した場合には、自宅を息子に相続させるという部分のみ遺言を撤回したことになります。

 この遺言の撤回については、さらに、遺言の撤回の撤回(元の遺言が復活するということになります。)ということも概念上は考えられるのですが、とても複雑になってしまうので、この辺にしておきます。

 話がとても脱線してしまった感は否めないですが、上記のとおり、法律上の撤回は、法的な効力を将来にわたってなかったことにすることはできますが、問題発言は、撤回したとしても発言したという事実をなかったことにはできないので、公の場での発言される方は慎重に発言してもらいたいなと感じています。