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実行犯ではないのに処罰される?<br>~共謀共同正犯について~

2021年9月24日、福岡地方裁判所にて、特定危険指定暴力団の工藤会のトップ2名に対し、死刑判決と無期懲役判決が言い渡されました。

判決の言い渡された2名は、いずれも自分が実行犯ではない殺人事件について、「共謀共同正犯」として処罰されています。
本日は、この一般の方にあまりなじみがない、「共謀共同正犯」についてご説明させていただきます。

まず犯罪は大きく分けると、全て単独で行う「単独犯」と複数の人が犯罪に関与している「共犯」に分別されます。
そして、「共犯」には説明しますが、「共同正犯」「幇助(ほうじょ)」「教唆犯」(2つを併せて「従犯(じゅうはん)といいます。」)に区別されます。

共同正犯は、刑法60条に「二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする」と規定されており、共同して犯罪を実行した場合には2人とも同じ責任を負うことになります。

幇助犯とは、共同正犯以外の行為で正犯の犯罪行為を容易にする行為を行ったこと指し、刑法62条1項で「正犯を幇助した者は、従犯とする」と規定されており、幇助犯も処罰の対象になります。

また、教唆犯とは、他人をそそのかして、犯罪を実行させる罪であり、刑法61条1項で「人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する。」と規定されており、教唆犯も処罰の対象となります。

そもそも刑罰という重大な不利益を被る場面では、個人が自己の行為によって犯した結果についてのみ処罰されるべきであるという考え(これを「個人主義」といいます。)が採用されており、共同正犯は、個人主義の例外であり、共犯者が心理的物理的に影響を及ぼし合う関係になることで犯罪結果が生じやすくなるため共犯の場合には双方とも結果を負う形になります。

そして、共同正犯は上記刑法60条のとおり「共同して犯罪を実行した」と規定されており2人以上の人が共同して犯罪を行うことが予定されていますが、判例上、実行行為を行っていなくても、「2人以上の者が特定の犯罪を行うため、共同意思の下に一体となって互いに他人の行為を利用し、かつ自己の行為を他人に補充するという意味で、緊密な相互利用相互補充関係があれば」共謀共同正犯として、結果についても責任を負うとされています。

これにより、集団詐欺等の犯罪集団などにおいても刑罰を科すことができるようになったのですが、共謀の事実が認定ができなければ共謀共同正犯を認定することができません。

今回の裁判でも、工藤会のトップ2人が共謀した事実に関する直接的な証拠が何ら存在しなかったため、間接的な事実を積み重ねて共謀の事実が認定されています。

本件については、被告人側から福岡高等裁判所へ控訴がされているため、控訴審においてどのような判決がなされるか、今後も注目していきたいと思います。

 

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