弁護士法人Nexill&Partners(那珂川オフィスサイト)

離婚訴訟について

<ご相談者様からのご相談>

 夫との離婚調停が先日不成立になりました。これ以上話し合いではまとまりそうにありません。裁判しかないと考えています。離婚の裁判をするにはどうしたらいいのですか。また,どのくらいで裁判は終わるのでしょうか。

 <弁護士からの回答>

  これまでは,話し合いにより離婚が成立する場合として協議離婚,調停離婚についてご説明させていただきましたが,今回からは,裁判離婚についてご説明させていただきます。裁判による離婚を考える場合それまでの協議離婚や,調停よりも時間や労力,費用がかかることになります。今回は,離婚訴訟の大まかな流れをご説明させていただきます。

 離婚訴訟を提起するためには,家庭裁判所に対して訴状という書面を作成し,収入印紙(離婚とともにどのような請求を行うかによって金額は異なります。)や切手に加えて戸籍謄本,住民票などの必要書類を準備します。
 訴状には,請求の原因として,民法が規定している離婚原因に該当していることを主張する必要があります(民法が認める離婚原因については,別の機会にご説明させていただきます。)。また,裁判の特徴として,争点(相手方が争っている事項)については,単に主張するだけでは足りず,証拠がなければ裁判官に事実を認定してもらうことはできません(これを証拠裁判主義といいます。)。したがって,訴状の提出ともに,必要な証拠についても同時に提出することが一般的です。

  訴状を裁判所に提出すると,裁判所で訴状の体裁等に間違いないか確認した後,訴状が相手方に送達されます(訴えた人を「原告」,訴えられた人を「被告」といいます。)。相手方に対しては,訴状とともに第1回目の期日についての連絡書面が入っており,その日に出廷(裁判所に行くことです)するよう求められます。通常,第1回目の期日は,訴状を提出した日から1か月程度先に指定されます。

 裁判の期日では,離婚調停と異なり,基本的に話し合いの場は設けられません(別の機会にご説明しますが,和解の場面では話し合いの機会が設けられます。)。期日では,書面が提出されたことを確認する手続(「陳述」といいます。)と証拠の原本確認等が行われた後,裁判官から,原告被告それぞれ(もしくは一方のみに)に対し,次回期日までの準備事項(書面作成,証拠の準備等)が告げられ,次回期日を当事者及び裁判官と協議して決めたら,期日は終了になります。代理人として期日に出廷する場合でも,期日でのやり取りは上記と変わらず,早いときには5分程度で期日が終了してしまうときもあります。

  そして,複数回期日及び期日間での書面でのやり取りがなされた後に,裁判官から和解の提案などが出され,和解にも応じられない場合には,争点に関し尋問等の証拠調べ手続(尋問等の証拠調べ手続については別の機会にご説明させていただきます。)を行い,争点に関する審理が尽くされた段階で判決が言い渡されます。
  判決がでれば必ず終わるというわけではありません。相手方が判決に不服がある場合には,控訴してくるため,控訴審も行われます。場合によっては控訴のさらに次の段階である上告をしてくる方もいらっしゃいます(控訴・上告については別の機会にご説明させていただきます。)。

  当事務所にご相談いただく方からは,「裁判だとどのくらいかかるのですか。」とご質問いただくことが多くありますが,裁判が終結するまでの期間に関しては,争点の数,証拠の有無・量,裁判官の意向,当事者の意向等様々な要素によりどのくらいかかるのかが大きく異なってきます。早期に和解が成立すれば数か月で終了する場合もありますし,争点が多く,当事者の感情的にも対立している事案等の場合には,第1審の判決がでるまでに1年以上かかってしまう場合も少なくありません。あくまで私の感覚にはなってしまいますが,離婚の訴訟を行うのであれば最低でも半年程度は時間を要するのではないかと感じております。

  このように,裁判となるとこれまでの調停とは異なり,訴訟に移行するまでの手間や訴訟が始まってからも書面の作成に追われ,かつ,裁判官はあくまでも法律に則って判断するため,専門的な法的主張を行う必要があります。弁護士の立場かすると,早い段階(協議の段階)から弁護士に依頼していただいた方が,早期かつ円満に解決する可能性が高いと考えておりますが,協議や調停ではなんとかご自身のみで進めていた方であっても,訴訟を起こす場合,訴訟を起こされた場合のいずれでもあっても,おひとりで進めるのはほぼ困難です。
  したがって,いよいよ離婚訴訟となった場合には,なるべく早めに弁護士にご相談していただき,代理人としてご依頼ください。