皆さんは、「ストリートピアノ」はご存じでしょうか。 駅や、施設においてあるピアノで、許可された時間であれば誰でも弾いてよいピアノのことであり、上手な方が、突如ストリートピアノで有名曲を弾き始め、人だかりができるという動画を見られた方も少なくないのではないでしょうか。 私も小さいころ、エレクトーン教室に通っていたことがあるのですが、今でも楽譜は一切読めず、即興で演奏などもできないので、ストリートピアノとは無縁な生活を送っています。
ストリートピアノで演奏する際に、JPOPや洋楽などをアレンジして弾かれる方もいらっしゃると思いますが、あるとき、「これって著作権とはかは問題にならないのかな」と思い、調べてみることにしました。
まず、著作権法22条では
「著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下「公に」という。)上演し、又は演奏する権利を有する。」
と規定されており、公の演奏、すなわち、不特定多数の公衆に聞かせることを目的とした演奏の場合には、著作権者の許諾が必要となります。 この規定だけをみると、ストリートピアノで演奏する場合にも著作権者の許可が必要になるように見えます。 しかし、著作権法上、公の演奏が、①営利を目的とせず、②聴衆又は観衆から料金を受けず、③演奏している人に対し報酬が支払われない場合には、著作権者の許可を得ずに演奏することが認められています(著作権法38条1項)。
したがって、ストリートピアノを演奏する方の場合、営利目的ではなく、お客さんや料金はもらわず、かつ、演奏の報酬ももらっていないため、手続きをすることなく演奏をすることができます。
しかし、ピアノが設置されている場所がショッピングモールなどの商業施設の場合、ピアノを設置することで、お客さんを誘引しているとして営利目的が認められ、商業施設側が許可を得なければならないという可能性もあります。 難しいお話になってしまうかもしれませんが、演奏する主体が、演奏者自身なのか、それとも場を提供している商業施設なのかという論点になります。 この点については、裁判例などがあるわけではないため、あくまでも私自身の見解とはなってしまいますが、そのピアノでどういった曲を演奏するのかについて、商業施設側では何ら指示などもないため、あくまでも演奏主体は、演奏者自身であり、商業施設側で特段手続きをする必要はないと思います。
このように、ストリートピアノでの演奏については、原則として手続きは不要となります。 しかし、演奏している方が、その様子を動画に収め、動画配信サイトで配信する場合には、営利目的があるため、著者区権者の許可が必要になります(ただし、基本的に動画サイトなどが、一括で許可を得ているケースが多いため、個別の手続きは不要であることが一般的です。)。
日常的な出来事をみて、法律的にどうなのかなと思ってしまうのは、弁護士の職業病なのかもしれませんが、何気なくしてしまった行為が法律に反し、刑罰や賠償金を払うなど不利益を被ってしまう可能性もあるため、皆さんもこれ大丈夫かなと思うことがあれば、行動する前に調べたり、弁護士に相談することをお勧めします。
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