弁護士法人Nexill&Partners(那珂川オフィスサイト)

物損の問題点③~評価損について~

<ご相談者様からのご質問>

  先日,買ったばかりの新車にぶつけられてしまいました。加害者の保険会社の人は,きちんと修理代金は払いますとおっしゃっていただいているのですが,せっかくの新車だったのに,これで事故歴や修理歴が記録されてしまい,事故車になってしまうのがとてもショックです。事故車になったことについても何か請求できないのでしょうか。

 

<弁護士からの回答>

  物損事故の場合,基本的に修理費用が当該交通事故の損害と判断されます。しかし,ご相談者様のように,事故歴や修理歴が記録されることにより,自動車の価値全体が下がるという事実は否定できません。そこで,本日は,物損事故における評価損についてご説明させていただきます。

 

  物損事故にあった場合,修理により,外観や性能が回復することが一般的であるため,「欠陥が認められない」「性能や外観の低下がない」などとして,当該車両に事故歴,修理歴が残ることによる損害については認められないとされた裁判例も過去には存在しました。

  もっとも,自動車は非常に精密かつ複雑な構造をしており,かつ,骨格部分等内部がどのようになっているのかについては,修理の際に正確に把握することは困難であるといえます。したがって,修理されたといっても,完全に修理されているとはいえない可能性があり,隠れた損傷があるかもしれないということや,修理後車両を使用していく際に,無事故の自動車よりも不具合が発生しやすくなるのではないかという懸念が残る以上。事故車であるということ自体により,現実門隊として,中古車市場において価格が非常に低く評価されてしまうのは事実です。

  したがって,一定の場合には,修理歴が存在することによって価値が下がったことによる損害(評価損)が裁判例においても認められるケースが多くなってきました。この評価損(格落ち損ともいいます。)ですが,上記のように修理することが前提となっていますので,修理することができない全損事故の場合には,損害として認めることができません。

  また,全損事故でない場合であっても,全てのケースで評価損が認められているわけではありません。当該自動車が初年度登録から何年間経過しているか(3年以上経過している自動車の場合,認められる可能性が低くなる印象があります。)走行距離がどの程度あるか(距離が多いほど認められない方向に働きます。),車両のどの部分に損傷があるか(骨格部分に損傷がある場合には認められやすい方向に働きます。)など様々な事情を総合的に考慮して判断することになります。 

  また,評価損が存在すると認められた場合にどの程度損害額が認められるのかについては,修理額の20%~30%と判断するもの(これが一般的です。)や,中古車販売価格等を調査したり,修理業者等に事故歴があることによる評価の下落分を査定してもらう等様々な方法があり,高級外車の場合等は比較的高額な評価損が認められる場合もあります。

  いずれにせよ,評価損の請求については非常に専門的な分野なので,是非一度弁護士にご相談ください。