弁護士法人Nexill&Partners(那珂川オフィスサイト)

有責配偶者について①~原則について~

【ご相談者様からのご質問】

  結婚して15年になる夫から,数年前より他の女性と不倫をしており,その人と一緒になりたいので離婚して欲しいと言われました。突然のことでとても驚いています。まだ子どもも小さいですし,私としては離婚せずに家族での生活を続けていきたいと考えています。以前,先生のブログを見て,別居期間がある程度あると,離婚したくないと主張しても離婚が認められるとのことなのですが,私の場合でもそうなってしまうのでしょうか。

 

【弁護士からの回答】

夫婦のいずれかの不貞行為が発覚した際,通常,不貞行為が行った人が,配偶者から離婚を突きつけられるのが一般的ですが,ご相談者様の事例のように,不貞行為をした側から離婚を求めるケースも少なくありません。

そこで,今回から数回にかけて,有責配偶者にまつわる問題についてご説明させていただきます。今回は,有責配偶者からの離婚請求に関する原則についてご説明させていただきます。

 

まず,離婚事由について規定している民法770条1項では,1号から4号については,「配偶者」と規定されていることから,相手方が不貞行為を行ったことや,悪意の遺棄を行った場合の規定であることは間違いありません。もっとも,770条1項5号は,単に「婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき」と規定してあり,条文上,夫婦のどちらからでも,離婚の請求をすることができるように規定されています。そこで,不貞行為を行った夫婦の一方が,婚姻関係が破綻しているとして,770条1項5号を根拠に離婚の請求をした場合,離婚は認められるのでしょうか。

この点について,昭和27年2月19日の最高裁判決では,不貞行為を行い,妻以外の女性と同棲している夫からの離婚の請求を行った事案において,離婚の請求を認めませんでした。その際の理由としては,不貞行為を行った夫からの離婚の請求が認められてしまうと,妻としては不貞もされて離婚もされてしまうというまさに,踏んだり蹴ったりである(実際の判決の理由中で「踏んだり蹴ったり」という文言が使われました。)ということを述べています。そして,上記最高裁判決以降,不貞行為等婚姻関係を破綻する原因を作った配偶者(「有責配偶者」といいます。)からの離婚請求は認められないとされてきました。

したがって,ご相談者様の事例においても,不貞行為を行っているご主人からの離婚請求は原則として認められないことになります。もっとも,例外的ではありますが,有責配偶者からの離婚請求が認められる場合もありますが,それについては,次回,ご説明させていただきます。