弁護士コラム

2018.06.29

破産に関するよくあるご質問④

【ご相談者様からのご質問】

 これまでの先生の回答を見ていると,「破産は悪いこと」というイメージは間違っていたとわかりました。でも,借金を基本的に返さなくて済むのに,今までと同じような生活を送れるということはないですよね。

【弁護士からの回答】

 今回は,破産をしたことで,申し立てた人に対し,どのような不利益があるか否かについてご説明させていただきます。

 Q8.一定期間,選挙権が剥奪されてしまうということを聞いたのですが・・・

 A .そのようなことはありません。公職選挙法などにも破産をしたことで選挙権を失う等という記載は一切ありません。また,立候補する権利(被選挙権といいます。)についても何ら制限はなされないため,破産手続中であっても,立候補すること自体は理論上可能です。とはいえ,選挙には多額の費用が必要になり,そういった選挙費用に支出するお金があるのであれば,債権者に分配すべきと判断されるのが通常ですので,現実的には,破産手続中に立候補することは困難でしょう。

 

Q9.運転免許が取り消しになったりするのでしょうか。

A.そのようなことも一切ありません。そもそも,破産することと,運転免許の資格の適格性に何ら関連性はないと思います。こういった都市伝説的な噂がでていることからも,破産に対する間違った悪いイメージが浸透してしまっているのだなと感じます。

 

Q10.相続権がなくなることはありませんか?

A.民法には相続人たる資格を失う事由として,相続欠格事由及び相続人の廃除に関する規定がありますが(民法891条,892条),同規定の中に,破産をしたことで,相続人たる地位(推定相続人といいます。)を失うことはありません。なお,破産手続の開始決定前に被相続人が亡くなり,相続が開始した場合には,相続により受領した財産については,換価して債権者へ分配されることになります。逆に,破産手続き開始決定後に相続が発生した場合には,相続により得た財産は破産者が自由に処分することができます(これについては,別の機会にご説明させていただきます。)。

 

Q11.破産をすると,郵便物が自分の手元に届かなくなると聞いたのですが本当ですか。

A.管財事件というものになると,破産の手続きが続いている期間は,郵便物が管財人の弁護士の事務所に送付されることになります。別の機会にご説明させていただきますが,破産の手続きには,換価する財産がなく,免責(債務を免除することです。)させても何ら問題が無いと判断される「同時廃止事件」と,換価する財産がある場合や,免責させてもよいか調査する必要がある場合の「管財事件」の2種類があります。そして,管財事件になった場合には,管財人の弁護士において,破産者の財産を調査する必要があるため,破産手続きの期間中に限り,破産者宛の郵便物が管財人の弁護士の事務所宛に転送されることになります。もっとも,破産の手続きが終了すれば,管財人の転送は終わり,普通に郵便を受け取ることができます。

 

Q12.破産をすると引っ越しができないと聞いたのですが。

A.引っ越しができないわけでありませんが,裁判所の許可が必要になります。上記でご説明した管財事件になると,何度か裁判所に破産者自身が行く必要があり,かつ,管財人の法律事務所へ足を運ぶ必要があります。したがって,破産手続中に関しては,裁判所において破産者の所在を把握しておく必要があるため,引越しにより住所が変わる場合には事前に裁判所の許可を得てから引っ越しなどをする必要があります。

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