弁護士法人Nexill&Partners(那珂川オフィスサイト)

SNSで嫌がらせを受けたら

【相談事例⑭】

先日,知り合いから,夫が女性と不貞をしているなどとSNSで書き込んでいる人がいると教えてもらい,その人の書き込みをみると,確かに主人が不貞をしている書き込みが頻繁になされていました。(その書き込みは誰であっても見ることができる状態になっています。)。一瞬主人を疑ってしまいましたが,主人にも確認をとり,不貞の事実等全くなく,嘘の事実であることが分かりました。その書き込みにより非常に迷惑をしています。こういったケースはどのような対応を行えばいいのでしょうか?

 

【弁護士からの回答】

 インターネットが非常に普及するようになっている現代においては,上記のようなSNS上でのトラブルが非常に多いです。そこで,今回は,SNS上での名誉毀損への対策についてご説明させていただきます。

 

1 はじめに

 ご相談者様の事例では,ご主人が他の女性と不貞行為をしているという情報がSNS上で誰からも見ることができる状況になっています。このように一般的に社会的な信用(名誉)を損なうような内容が,不特定多数の人が見られるような状況に置いた場合には,刑法上の名誉毀損罪(刑法230条)が成立します。また,同時に個人のプライバシー権を違法に侵害しているため,民法上の不法行為にも該当するため,慰謝料等損害賠償請求もすることができます。ご相談者様の場合,ご主人が不貞をしているという事実は,虚偽の事実ですが,仮に,ご主人の不貞の事実が真実であったとしても,名誉毀損罪は成立しますし,損害賠償を支払わななければならないことには変わりありません(真実の場合には一定の要件を満たせば犯罪が成立せず,損害賠償の義務を負わない場合がありますが,それについては,次回ご説明させていただきます。)。

 

2 削除請求

 このような,名誉毀損的な書き込みがなされている場合,最初に行うべきことは,書き込みを削除することが考えられます(後述する刑事告訴や民事訴訟まで行うことを予定している場合には,書き込みの証拠を確保する必要があるため,書き込んでいるページをプリントアウト等しておくとよいでしょう。)。書き込みを削除する方法としては,SNSの場合,書き込みの削除フォーム等やメールにより運営者(管理者)に対して書き込みの削除を依頼することが考えられます。

 このような任意での削除方法がない場合や,管理者において任意での削除に協力してくれない場合には,削除請求に関する仮処分(民事保全手続になります。)や削除請求の訴訟を提起することになります。

 

3 刑事手続

 次に,違法な書き込みを行っている人を刑事処分にしてほしいと考える場合には,①被害届の提出若しくは②告訴状の提出が考えられます。①の被害届とは,犯罪の被害にあった事実を捜査機関に対し申告する書面になります。被害届を提出するためには,被害者の情報,被害の日時や被害内容,加害者に関する情報(加害者不明でも出すことは可能です。)等申告する必要があります。被害届に関しては,告訴状と比べると簡易な手続で届出を行うことが可能ですが,被害届でとどまる場合には,捜査機関において事件性が低いとして捜査をしてくれない場合もあります。

 ②の告訴状とは,犯罪の事実を告知する点では被害届と同じなのですが,告訴に関しては,加害者への処罰を求めることも含まれることに加え,仮に,告訴が受理された場合には,捜査機関において捜査を開始する義務及び,検察官において起訴するか否かの判断を告訴した人に対して伝える義務が生じることになります。

 被害届よりも告訴の方が具体的に被害を防止するためには効果的であることには間違いありませんが,告訴が受理されるためには,確実に有罪となる見込みがある場合でなければ受理されることはないため,告訴状にはしっかり証拠等を添付して提出する必要があります。したがって,告訴状を提出することを考えられている場合には,是非,一度弁護士にご相談ください。

 

4 損害賠償請求(民事訴訟)

 名誉を毀損する書き込みを行っている相手方に対し,損害賠償を請求したいと考えられる場合には,まず,書き込みをしている相手方を特定する必要があります。特定する方法としては,SNSの管理者側に存在している発信者(書き込みを行った人です。)のIPアドレスを特定する必要があります。具体的には,管理者に対し,上記情報を開示するよう交渉を行うか,交渉に応じない場合には,裁判所に対し,発信者情報開示請求の仮処分や訴訟を申し立てることになります。

 IPアドレスを入手することができると,発信者がインターネットを使用している際に経由しているプロバイダが判明したら,プロバイダに対し,発信者情報(氏名,住所)等を開示してもらうために,発信者情報開示訴訟を行うことになります。

 上記訴訟を経てようやく書き込みを行った人の情報が分かり,損害賠償請求交渉や訴訟を行うことができます。このように,発信者情報の開示に関しては時間と手間が非常にかかってしまうのが現状です。

 

5 さいごに

 違法な書き込みの被害に遭っている場合には,ますは,書き込みを早急に削除するために書き込みを消去することが非常に重要です(インターネットの上の情報は一度出てしまうと完全になくすことはほぼ不可能といって差し支えないと思います。)。インターネットの被害に遭われている方は是非一度弁護士にご相談ください。