弁護士法人Nexill&Partners(那珂川オフィスサイト)

飲食店の無断キャンセルについて①

飲食店を経営しているのですが,1月前に飲み放題込みのコースを50名で予約してもらっていたのですが(大学のサークルでの飲み会とのことでした),当日,1人も来なくて,代表の方に何度も連絡してもつながりません。50名での予約でしたので,その日は貸し切りにしており(予約の電話もあったのですが,お断りしました。),人数分のコースの材料も仕入れており廃棄しなければならない食材も出てしまいました。

事前にキャンセルの連絡をくれるならまだしも,何も連絡なく,あまりにもひどいと思うのですが,無断キャンセルした人に対して損害賠償の請求はできるでしょうか。

【弁護士からの回答】

 ご相談者様の事例のように,飲食店の無断キャンセルについては,予約した客側にとっては,軽い気持ちでしていることであっても,飲食店側にとっては,大きな損害を被るものであり,一時期,ニュースなどで取り上げられる問題にもなりました。そこで,今回から2回にかけて,飲食店の無断キャンセルに関する問題についてご説明させていただきます。

 

1 飲食の予約した時点での法的関係は?

 まず,お客との間で予約が完了した際には,どのような状態になるのでしょうか。これに関しては,法律で定められているわけではないのですが,一般に,予約が完了した時点で,客側からお予約した日時における飲食物の提供というサービスの提供の申し込みと店側の飲食物を提供する旨の承諾が認められるため,予約の完了の時点で,予約した日時におけるサービス提供契約が成立していると考えられています。「まだ,予約の段階だから契約は成立していないのではないですか。」という考えもあるとは思いますが,売買予約等の場合には,実際に売買を締結するか否かについては,未定であるのに対し,飲食店での予約については,その日にサービスの提供を受けることについては決定しているため,予約の時点で契約が成立していると考えるのが一般的です(個人的にはこの「予約」という言葉が使われることによって,安易な無断キャンセルが横行してしまうのではないかと考えています。)。

 

2 無断キャンセルの法的効果

 上記のように,飲食店での予約の完了の時点で,サービス提供契約が成立している以上,飲食店側はサービスを提供(場所及び飲食物の提供等)する義務(債務)を負い,客には,代金を支払う義務が発生することになります。したがって,客側が,店に何ら連絡を行うことなく,無断キャンセルをした場合には,客側の事情(帰責事由)により,代金を支払っていないことになるので,客側は,店に対し,店が被った損害を賠償する義務を負うことになります。

 また,仮に,客側がキャンセルの連絡を入れた場合でも,上記のように,いったん契約が成立している以上,客側の一方的な意思により契約を終了することはできません。客側のキャンセルの申し出に対し,店側がキャンセルを承諾し,客に賠償請求しないと約束した場合に限り,客は何のペナルティを課せられることなく,キャンセルができることになります(これを契約の合意解約といいます。)

 このように,飲食店の予約については,安易な気持ちでキャンセルしてしまうと客側にも損害賠償責任が課せられるリスクもあるため,予約についても慎重に行う必要があります。

 次回では,店から客に対する損害賠償請求や,無断キャンセルのトラブルを未然に防ぐための対策等についてご説明させていただきます。