弁護士法人Nexill&Partners(那珂川オフィスサイト)

特別受益について~要件①~

【ご相談者様からのご質問】

 先日,父が亡くなりました。相続人は私と兄の2名です。兄は結婚しており,私は独身なのですが,父は,生前,兄の子供を非常にかわいがっており,兄の子供に対しては,私立の中学,高校,大学の費用のみならず,大学での1人暮らしするための家賃,生活費,お小遣い等全て父が支払ってきました。兄自身がなにかもらっていたわけではないのですが,父の援助は特別受益にはあたらないのでしょうか。

 

【弁護士からの回答】

 今回から,複数回にかけて,特別受益についてご説明させていただきます。

 今回は,どのような人が特別受益者に該当するかについてご説明させていただきます。

 

 

1 条文上の要件

 民法903条1項では,「共同相続人」と記載されていることから,共同相続人が特別受益者の対象になることは間違いありません。したがって,血縁者は当然ですが,養子縁組をした場合の養子,養親についても,特別受益者に該当することになります(この点,養子縁組の場合,養子縁組後の贈与などが特別受益に該当することは当然ですが,裁判例上,養子縁組前に取得した財産についても特別受益になると判断した裁判例がありますが,縁組前については,確定的な判断がなされているものではありません。)

 

2 相続人の配偶者や子に対する贈与について

 では,被相続人が,相続人に対してではなく,相続人の配偶者に贈与した場合や,ご相談者様の事例のように,被相続人が相続人の子(孫)に贈与していた場合には,共同相続人の特別受益と評価することができるのでしょうか。

 この点については,最高裁判所の判例があるわけではないため,確定的な結論があるわけではなりません。しかし,特別受益の制度の趣旨は,共同相続人間の公平を図る点にあることから,裁判例上,実質的に被相続人から相続人に対する贈与されたものと評価することができる場合には,配偶者や子に対する贈与であっても被相続人に対する特別受益であると判断されています。

 具体的には,贈与の経緯,贈与額,贈与の性質,贈与により得られる相続人の利益等を考慮して判断することになります。裁判例においても,ご相談者様の事例のように,孫の学費及び生活費については,本来であれば,扶養義務を負っている相続人(父)が負担すべき費用であり,当該贈与により相続人は学費や生活費を負担する必要がないという利益を得ていることから,特別受益に該当すると判断されています。 

 このように,相続人以外に対する贈与等についても特別受益に該当する可能性があるため,是非一度弁護士にご相談ください。