芸能人や有名人が逮捕されてしばらくすると,裁判が始まる前に保釈されたというニュースを目にすることがあります。保釈とはどういった制度なのでしょうか。
どうして逮捕されてすぐに保釈をしないのでしょうか。
【弁護士からの回答】
犯罪を行い,逮捕されるといった事態が起きない限り,一般の方が保釈について知りうる機会は,上記のような芸能人などのニュースの場面でしかないのではないかと思います。そこで,今回から数回にかけて保釈についてご説明させていただきます。今回は,保釈の定義や要件をご説明させていただきます。
1 保釈とは
保釈とは,刑事訴訟法により認められている制度で,被告人が一定の金銭の納付等を条件にして,勾留を停止し,身体拘束の状態から解放するものです。
通常,犯罪を行い,逮捕され,起訴(刑事裁判にかけられることです。)されると(刑事手続きの正確な流れについては,別の機会にご説明させていただきます。),裁判が行われている期間については,留置場や拘置所いなければならず,身体が高速された状態になっています(この状態を勾留(起訴後勾留)といいます。)。起訴されてから裁判が始まるまでの期間については,事件の性質によっても異なりますが,最低でも3週間程度要するとされており(重大な事件の場合には数か月要する場合もあります。),その期間身体拘束が継続することによる不利益を回避するために,一定の要件を満たし,かつ金銭の納付をした者に対し,身体拘束から解放することを認めています。
2 保釈はいつからできるのか
上記のように,保釈は,被告人,すなわち起訴された人のための制度であるため,まだ,逮捕されて起訴されていない人(被疑者といいます。)には保釈は認められていません。よく,逮捕された人やそのご親族から「すぐに保釈してください」と頼まれることがあるのですが,その際には,「残念ですが,起訴されるまでは保釈がそもそも認められていないのですよ」と説明することを繰り返しています。
3 保釈の要件は?
保釈には,権利保釈,裁量保釈,義務的保釈という3つの種類があり,権利保釈は,刑事訴訟法に定めた事由(重大犯罪の場合,常習犯罪の場合,罪証隠滅の恐れがある場合)に1つも該当しない場合に必ず認められるものです。裁量保釈は,権利保釈が認められない場合であっても,裁判所が適当と認めるとき(失職の恐れがある場合,家庭の事情,逃亡や証拠隠滅の恐れの有無,捜査の進捗,示談の有無などを総合的に判断します。)に認められるものです。義務的保釈とは,あまりなされるものではありませんが,勾留による身体拘束が不当に長期間に渡っている場合に認められるものです。
今回は,保釈の要件についてご説明させていただきました。次回は,保釈金などについてご説明させていただきます。