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【相談事例31】~迷惑動画④動画の拡散や実名を晒すのは違法?~

【相談内容】

先日、僕が通っている大学の同級生が身内のSNSで迷惑動画をアップしていました。

迷惑動画を投撮影することは悪いことですよね?動画を拡散するだけでなく、彼の名前や出身大学などを投稿して懲らしめたいと考えています。

【弁護士からの回答】

自らの正義感や面白半分などという理由により、迷惑行為を撮影した動画を拡散したり、ネット上で迷惑動画などの問題行動を行った当事者の個人情報を探し当て、その情報を拡散することが頻繁になされています。
ニュースなどでは、迷惑動画を撮影した人などを問題視するものが多く、動画を拡散したり、個人情報を晒したりする人の問題については取り上げられていることがなかったため、今回、そのような行為の法的リスクについてご説明させていただきます。

1 肖像権、プライバシー権侵害

判例上認められている個人の生活上の自由(権利)として、承諾なしにその容貌、姿態を撮影されないことが認められており、これを、肖像権やプライバシー権といいます。

したがって、迷惑動画を拡散することは、承諾なしにその容貌などを不特定多数の人に拡散してしまう行為であるため、肖像権やプライバシー権を侵害する行為として損害賠償の対象になりうる行為です。

迷惑動画を撮影するという行為自体は違法なのですが、違法な行為をした人は肖像権が失われるという考え方はなされておりません。
したがって、迷惑動画を撮影した人を拡散する行為も違法な行為に該当しうることになります。(逮捕された容疑者などを無断で撮影し、報道する行為についても肖像権との関係では一応問題となりうるといえるでしょう。)。

2 個人情報の拡散について

迷惑動画の拡散に加えて、動画に映っている人の氏名、住所、出身大学等個人情報についても拡散した場合にはどのような問題があるのでしょうか。

自分自身で行っているので、自業自得という側面は否定できないものの、特定の人物が店の信用を損なうような行為を行っているということは、一般的にその人の名誉を毀損する内容であることが一般的であるため、個人情報を含めて動画を拡散した場合には、かかる行為が民事上違法な行為であることに加え、名誉毀損罪として刑事責任を問われてしまう可能性も否定できません。

以前にご説明したことがありますが、名誉毀損行為を行ったとしても公益的な目的である場合には、違法性が認められない場合もありますが、いわゆるジャーナリズムとは異なり、一般の人がSNSで拡散する行為は、面白半分である場合やリツイート数や「いいね」の数を稼ぐためであることが多いと思われますので、違法性が否定される場合は少ないでしょう。

3 まとめ

スマートフォン及びSNSの普及により、今では誰でも簡単に情報発信をすることができる時代であり、迷惑動画に限らず、ほんの軽い気持ちで投稿したことで他人に多大なる損害を与えてしまう場合や、自分自身を傷つけてしまうことが容易に想定されます。

技術の進歩は素晴らしことですが、それに伴って、技術を用いる人のリテラシーの向上も進歩に比例して必要不可欠になっていると思います。
もし、自分の行うとしている行為が、法的に問題があるのではないかと不安を抱いた場合には、行動を起こす前に弁護士にご相談いただくことをおすすめします。

 

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