【相談内容】
先日、人を殺害している現場を撮影したかのような迷惑動画を投稿していた人が、軽犯罪法違反により書類送検されたというニュースを目にしました。
迷惑動画を投稿すると、刑事処分を受けるというのは本当だったのですね。
少し気になったのが軽犯罪法違反というのはどういった罪になるのですか?あまり聞きなれない犯罪なので教えてください。
【弁護士からの回答】
先日、ニュースで殺人現場を装ったフェイク動画がアップロードされ、実際に警察が出動するなどしたなど社会的に問題となった事件で、動画をアップロードした人が書類送検されたとニュースを目にしました。
安易な気持ちでの迷惑動画の投稿がなされないために、こうした迷惑動画を投稿するときちんと検挙されるということが周知された点ではとても有意義であると感じています。
今回の迷惑動画の投稿では、軽犯罪法違反という罪で書類送検されていますが、軽犯罪法という犯罪については、あまり耳にされたことがない方も多いと思いますので、今回は軽犯罪法についてご説明させていただきます。
1. 軽犯罪法とは
軽犯罪法とは、日常生活の中で発生しうる比較的軽微な罪を規定した法律であり、1条の1号から34号までに列挙された罪(21号が削除されているため、33個あります)に違反した場合、拘留または科料に処すると規定されている犯罪です。
拘留とは30日未満の日数拘置所に収容される刑罰であり、科料とは1,000円以上1万円未満の金銭の支払いが求められる刑事罰であり、比較的軽微な犯罪について規定された犯罪であることが分かると思います。
この軽犯罪法ですが、制定されたのが昭和23年と非常に古い罪であるため、規定されている罪の中身として「こんな行為も対象になるのか」と驚くような内容も含まれています。
今回は、上記相談事例に該当する犯罪行為のみご説明しますが、次回以降、通常耳にしない珍しい犯罪行為の種類についてご説明させていただきます。
2. 虚偽申告の罪(16号)
軽犯罪法では「虚構の犯罪又は災害の事実を公務員に申し出た者」を処罰する旨規定しています。
今回書類送検された事件では、公務員(警察官)に対して直接犯罪の申告を行ったわけではありません。
しかし、報道等をみると、殺人フェイク動画を投稿した人は、動画を投稿した際広く他の人に拡散するよう求めていたとのことであり、公務員を含めて広く多数の人に虚偽の犯罪を申告したと認定しているのだと思います。
3. フェイク動画を抑止するには・・・
上記のように、虚偽の犯罪事実を投稿した場合には、単なる軽犯罪法違反という非常に軽微な犯罪しか成立しない状況であり、その行為による社会的影響の大きさや迷惑の程度に比してあまりにも罪が軽すぎるのではないかと考えています。
刑法や軽犯罪法は制定されたのが非常に古く、インターネットを介した迷惑動画やフェイク動画等の投稿などの犯罪行為を想定した法律が制定されていないのが現状です。
迷惑動画やフェイク動画の投稿により被る社会的影響や被害は多大なものであることから、厳重な罰則を設けた法律を制定することにより、迷惑動画を防止する必要があると考えています。
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