【相談内容】
数年前に知人から大きい金額を借りていましたが、生活が苦しくなってしまい、払うことができず、申し訳ないという思いがありながらそのまま別のところへ引っ越してしまいました。その後、借りていた知人の代理人であるという弁護士から、借りたお金の返却を求める書面が届いてびっくりしています。
知人は、引っ越す前の住所は知っていますが、当然のように転居先については教えていなかったのになぜ現在の住所がわかったのでしょうか。
【弁護士からの回答】
ご依頼者様の代理人として、相手方に対し、弁護士として受任したことを連絡する書面(通常、「受任通知」といいます。)を送付するのですが、受任通知を送付した後、相手方の人から「どうして住所がわかったのですか」とお問合せいただくことが少なくありません。
そこで、今回は、弁護士などによる住民票の職務上請求についてご説明させていただきます。
1 住民票とは
まず、住民票についてご説明させていただきます。
住民票とは、市町村役場において住民がどこに住んでいるのかについて記録したもので、各市町村役場において住民基本台帳という市町村がまとめている帳簿(「公簿」といいます。)にまとめられています。世帯ごとにまとめられており、氏名、本籍、生年月日や前住所地や、住民となった日や住所を設定した日などが記載されています。
2 住民票を取得することができる人は?
上記のとおり、住民票には前住所、現在の住所など重要な個人情報が記載されているものであるため、原則として、本人及び同一世帯の人しか取り寄せることができず、第三者では自由に住民票を取得することができません。
もっとも、弁護士、司法書士等の一定の職業についている人(「特定事務受任者」といいます。)であれば、依頼者から受けている事件において必要な範囲で、第三者の住民票を取得することが可能であり、これを職務上請求といいます。
したがって、ご相談者様のように、お金を払わなければいけないのにも関わらず、転居して雲隠れをしようとしても、弁護士が職務上請求を行うことにより、転居先の住所が判明してしまうので、雲隠れしようとすることはお控えいただいたほうがよいでしょう。
逆に、お金を貸した人がどこかに行ってしまったという場合であっても、旧住所がわかっていれば弁護士において職務上請求を行うことにより、相手方の所在が判明するケースもあるため、泣き寝入りするしかいないのかとあきらめる前にぜひ一度弁護士にご相談ください。
なお、弁護士の職務上請求ですが、ご依頼者様の法律上問題に関し必要な範囲でのみ取得することができるものですので、単なる人探しの場合や、所在を知りたいという目的のみでは弁護士であっても職務上請求を行うことはできないので、ご承知おきください。
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