弁護士法人Nexill&Partners(那珂川オフィスサイト)

【相談事例62】婚活アプリでのトラブル②

【相談内容】

婚約に至っていなくても慰謝料請求できる場合があるのですね。
認められる可能性があるのであれば、是非、元交際相手に対して慰謝料請求を行いたいと考えています。

ですが、彼に慰謝料請求を行った場合、彼の奥さんにも知られてしまった場合、彼の奥さんから逆に慰謝料請求をされるのではないかと不安なのですが大丈夫でしょうか。

【弁護士からの回答】

前回は、既婚者であるにもかかわらず独身と嘘をつかれて交際継続していた場合には貞操権侵害を理由として慰謝料請求が認められる場合があることについて説明しました。

男性は、既婚者である以上、配偶者である奥さんがいるにもかかわらず他の女性と肉体間関係を行っているため、不貞行為に該当するようにも思えます。
 
交際相手の配偶者からの慰謝料請求が認められるかについてご説明させていただきます。

1 不貞行為を原因とする慰謝料請求の要件

不貞行為を原因とする慰謝料請求が認められるためには、①故意、または過失により②他人の権利又は法律上保護される利益を侵害し、③ ②の行為に損害が発生することが必要になります。

2 本件について

仮に、ご相談者様の元交際相手の夫婦間が円満であることを前提とすると、交際相手とご相談者様のとの間の交際関係(性的関係)を行ったことにより、元交際相手と配偶者との間の円満な夫婦関係が害されるという損害が発生しているため、上記②と③の要件については認められる可能性が高いです。

もっとも、ご相談者様は、交際相手に独身であると嘘をつかれて、交際相手方独身であると信じて交際を行っていたのであるため、①の要件のうち、 故意(既婚者であると知りながら交際関係に至った場合)の要件は満たさないことは明らかです。

では、過失があるか、すなわち、独身であると信じたことについて過失が認められるか(通常の人であれば既婚者であると認識すべきであるにも関わらず認識していなかった)と認められるかという点が問題になります。

この点については、交際中の具体的なやり取りなどを正確に把握しなければ判断できませんが、婚活アプリに登録しているという時点で、独身者が前提であること、自身の家族にも会っていることからすれば、独身者であると信じてもやむを得ないと認められると思いますので、過失についても認められない可能性が高いと思います。

3 最後に

このように、独身であるとだまされていた場合には、慰謝料請求が認められない可能性は高いですが、配偶者が感情的になり、認められなくても請求してくる可能性は否定できません。

貞操権侵害を理由とする慰謝料請求の場合には、認められるか否かという問題だけでなく複雑な問題が絡んでいるため、請求を考えられている方は是非一度弁護士にご相談ください。

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