【相談内容】
会社でミスをしてしまい、お客さんに損害を与えてしまいました。
会社からは、「お前のミスなんだからお前が全額負担しろ」と言われたため、私の方で、お客さんに対し、全額賠償しました。
私のミスなので私が支払わなければならないということはわかるのですが、会社が少しも負担しないというのは納得いきません。
【弁護士からの回答】
前回は、従業員のミスにより会社が損害を被った場合、会社は従業員に対して賠償請求は認められるものの、信義則により全額請求することはできないことをご説明させていただきました。
今回は、前回の事例とは異なり、従業員が、損害を与えた第三者に賠償した際、会社に対して負担を求めることができるのかという問題についてご説明させていただきます。
1 問題の所在(逆求償は認められるか)
前回、ご説明させていただきましたが、従業員が会社の事業に関し、第三者に損害を加えてしまった場合、被害者は会社に対し損害賠償を請求できるのですが(民法715条1項)、会社は、従業員に対して、被害者に支払った賠償金の支払うように求めることができます(民法715条3項。求償権といいます。)。
では、従業員が、被害者に対して損害賠償を行った場合、従業員は使用者(会社)に対して、求償することができるのでしょうか。
民法715条3項では、使用者から従業員への求償については規定しているものの、従業員から使用者への求償(逆求償といわれています。)については、何ら規定されていないことから、問題となります。
2 最高裁での判断
この、従業員からの逆求償が認められるか否かについて争われた事件があり、第1審では、従業員からの逆求償を認めたものの、第2審では、従業員が起こした賠償責任は、事業の際に行われたものであっても、不法行為を行った者である従業員が全額賠償する責任があるとして、逆求償を否定しました。
そして、この問題は、最高裁判所にて判断されることになり、令和2年2月28日の判決では、民法715条1項の使用者責任について、損害の公平な分担の見地から規定されたものであると判断し、使用者は、従業員との関係においても、損害の全部又は一部について負担すべき場合があると判断し、事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防又は損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度で逆求償を認められると判断しました。
3 最後に
このように、従業員に行為により損害が発生した場合に、従業員と会社のいずれが負担すべきであるかについては、非常に複雑な問題となっているため、是非一度弁護士にご相談ください。
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