前回の記事で、株式会社の設立手順の1つとして、「登記申請書を作成し、法務局に提出すること」を挙げました。
今までに登記申請手続きをされたことがない場合、登記とはどのようなものなのかよく分からない、という方も多いのではないかと思います。
そこで、今回の記事では、株式会社設立に必要な登記についての基礎知識をご紹介いたします。
前回の記事はこちらから「起業する前に知っておくべきこと4~会社の設立~」
1.株式会社設立に必要な登記とは
登記とは、ある事項について登記簿に記載し、その内容を公示するための制度のことです。登記には、商業・法人登記、不動産登記など様々な種類がありますが、株式会社を設立する際に必要なのは、商業・法人登記の株式会社設立登記です。
2.登記事項証明書(登記簿謄本)
①登記事項証明書とは
会社を設立すると、「登記事項証明書」が必要な場面が出てきます。この登記事項証明書とは一体何のことを指すのでしょうか?
登記事項証明書とは、登記事務をコンピューターにより行っている登記所で発行される、登記記録に記録されて事項の全部又は一部を記載した証明書のことです。
②登記事項証明書の種類
登記事項証明書には、全部事項証明書、一部事項証明書などの種類があります。基本的に、「登記事項証明書が要る」と言われたときは、これまでの登記の記録が全て記載されている全部事項証明書のことを指します。全部事項証明書には、3つの種類があります。
(1)現在事項証明書:現在効力がある登記事項の証明書
(2)履歴事項証明書:現在事項証明書の内容に加えて、履歴事項証明書交付請求日の3年前の日の属する年の1月1日(基準日)から請求日までの間に抹消をする記号を記録された登記事項、及び基準日から請求日までの間に登記された事項で現に効力を有しない事項の証明書
(3)閉鎖事項証明書:会社の解散などを理由に閉鎖した登記事項の証明書
通常、登記事項証明書が必要な場合は、履歴事項証明書を取得しておけば安心です。
③登記事項証明書の内容
登記事項証明書には、以下のような項目についての記載がなされます。
会社法人等番号 | 法務局が商業・法人登記の識別のため、登記記録1件毎に記録している12桁の番号のこと。 似た言葉として法人番号があるが、法人番号は行政の効率化のため、マイナンバー法に基づき国税庁が指定する13桁の番号のことであり、会社法人等番号とは異なる。 |
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商号 | 会社の名称のこと。 |
本店 | 本店の所在地が記載される。 本店とは、登記上の会社の本拠地のこと。あくまで登記上の所在地なので、いわゆる本社の所在地と一致している必要はない。 |
公告をする方法 | 決算後や会社の合併をしたときなどの情報を公に知らせる方法を記載する。(例えば、官報等) |
会社成立の年月日 | 最初に登記をした日付が記載される。 |
目的 | 会社が行う事業内容のこと。複数の事業内容を記載することができ、現在行っている事業に限らず、今後行う予定の事業も記載して良い。 <注意点> ・広く一般的に使われている言葉を使用し、また、明確性が必要である。 ・許認可が必要な事業を行う際、目的の文言が特定の要件を満たしていなければならない場合がある ⇒その事業の管轄の役所のホームページを確認し、特に記載がなければ電話等で確認する。 ・株式会社は利益を得ることを目的としているため、営利性のある事業でなければならない。 ・法や公序良俗に反しない事業でなければならない。 |
発行可能株式総数 | 会社が発行することができる株式数の上限のこと。 |
資本金の額 | 現在の会社の資本金の額が記載される。 |
株式の譲渡制限に関する規定 | 株式に譲渡制限をつけた場合、その旨が記載される。株式会社の場合、所有する株式に応じた議決権が付与されるが、株式の自由な譲渡を認めると、会社にとって好ましくない人に株式が渡り、不都合が生じる可能性があるため、一般的に譲渡制限はつけることが多い。 |
役員に関する事項 | 取締役および監査役(監査役を設置する場合)の氏名、登記原因(就任、退任など)、その年月日が記載される。また、代表取締役については、住所も記載される。 |
登記記録に関する事項 | 会社の設立や合併など登記記録の編成に関することが記載される。 |
④登記事項証明書の取得方法
登記事項証明書を取得するためには、大きく分けて(1)オンラインによる交付請求、(2)窓口での交付請求、(3)郵送での交付請求の3つの方法があります。
(1)オンラインによる交付請求
自宅や会社のパソコンを利用して、インターネットでオンライン請求ができます。
請求した証明書は、自宅や会社に郵送してもらうこともできますし、最寄りの登記所・法務局証明サービスセンターで受け取ることも可能です。手数料は、インターネットバンキングやPay-easyを用いて納付します。
オンラインによる交付請求は、窓口での交付請求に比べて、手数料が安かったり、受付時間が長かったりというメリットがあります。
オンラインによる交付請求 | 窓口での交付請求 | |
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手数料 | ・郵送受取:500円 ・登記所等受取※:480円 |
600円 |
受付時間 | 平日午前8:30~午後9:00 | 平日午前8:30~午後5:15 |
※登記所または法務局証明サービスセンターでの受取り
(2)窓口での交付請求
登記所または法務局証明サービスセンターの窓口に行って請求・取得ができます。
(3)郵送での交付請求
登記所に申請書、収入印紙、切手を貼付した返信用封筒を送付することで請求・取得ができます。
⑤登記内容に変更が生じた場合
役員の就任・退任など登記事項に変更があった場合には、変更登記手続きを行う必要があります。
変更登記手続きをすると、登記事項証明書には、変更前の事項と変更後の事項がいずれも記載されます。また、変更前の内容には下線が引かれます。
3.まとめ
今回の記事でご説明した内容は、株式会社設立をお考えの方にはぜひ知っておいていただきたいと思います。
また、もし、登記事項証明書を取得する必要はなく、登記の内容を確認されたいだけであれば、ホームページ上で商業・法人登記情報(335円)を閲覧できる「登記情報提供サービス」の利用をおすすめいたします。
※この記事に記載されている情報は、令和2年3月1日時点のものです。