前回ご紹介したような、ガイドラインの策定や社員研修という予防策を行っていても、どうしても起こってしまうのがSNSトラブルです。
そこで、今回は起こってしまったSNSトラブル(炎上、誤った情報の拡散、従業員の不適切な投稿)への対処についてご紹介します。
前回の記事はこちら
「SNSトラブルを防ぐ、ルール作りとチェック体制」
1.トラブルが発生したら迅速な対応を
日頃よりチェック体制を整えていた場合は、自社の評判や商品についての投稿がされていることの確認に併せて、自社の従業員が不適切な投稿をしていないか、情報漏えいをしていないかもチェックすることができます。
トラブルが発覚する他のケースとしては、①SNSを閲覧していた第三者からの通報、②他従業員からの報告という2つが挙げられますが、どちらも投稿されていたSNSサービスの名称、日時、詳細な投稿内容をヒアリングし、情報の精査を行うことがポイントです。
トラブルが発生したら、誤った情報の拡散を防ぐために、なるべく早く対応しましょう。
後回しにしたり対応が遅くなると、企業全体のイメージダウンにつながり、信用を失うなど影響が大きくなってしまいます。また、炎上の規模によりますが、削除のみ行い何も公表しないなどという対処方法も適切ではありません。
後述しますが、迅速に事実関係を確認し、経緯や対処方法、今後の防止策等を詳細に発表することで、世間に対する企業イメージの回復も早めていくことができるのです。
2.まずは社内での調査で関係者・投稿者を特定
速やかに、SNS内で問題となっている箇所の内容を具体的に確認し、URL等を特定させておきます。また、現時点でどの程度まで情報が拡散され広まっているのかも確認しましょう。
そして、投稿者をできる限り特定していきます。例えば新商品の情報漏えいの場合、プロジェクトチームの確認や、SNSに投稿されている他の内容などで従業員を特定していくことになります。
その際に、業務で使用していたパソコンや携帯電話、ロッカーや机等を調査することも考えられますが、この場合は、プライバシーの観点から本人の同意を得た上で調査するなど、配慮も必要となるでしょう。
また、関係すると思われる従業員、投稿したとされる従業員本人へのヒアリングも行うべきですが、こちらも強制的ではなく同意を得て実施するのが望ましいとされます。
いつどこで、なぜこのような投稿を行ったのか、など状況を具体的に説明してもらい、場合によっては録音や議事録を取るなど記録として残し、さらにヒアリングに参加した従業員の署名や捺印等も行うことが重要です。
3.社内での特定ができない場合は発信者情報開示請求を
社内での調査で投稿した従業員が特定できない場合、プロバイダ責任制限法第4条1項(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)に基づき、SNS管理者やプロバイダへ発信者情報開示請求を行い、発信者のIPアドレスやタイムスタンプ(その投稿がネット上に記録された日時を証明しているもの)を開示してもらうこととなります。
ここでいう「プロバイダ」にはWEBサイトやWEBサービスの管理者も含まれており、SNS管理者もこれに該当します。
SNS管理者へは、該当する投稿内容のIPアドレスを開示するよう請求し、その内容からプロバイダを特定します。そして該当するプロバイダへ、投稿した本人の氏名や住所等を開示するよう請求するという流れになります。
開示請求に管理者やプロバイダが対応しない場合は、裁判での訴訟等に移ることになります。
4.投稿記事の削除要請はどうやって行うの?
投稿者が特定できたら速やかに行いたいのが、当該記事の削除です。
投稿者本人で削除ができる場合は、管理画面や編集画面からの削除を要請します。
投稿者本人が特定できなかった場合や投稿者本人からの削除ができない場合は、SNS管理者に削除要請を行いますが、下記①②のような方法が挙げられます。
他にも裁判所へ削除の訴訟等を行う方法がありますが、下記方法と比較して時間と費用を要するため、最終の手段であると心得ておきましょう。
①管理者が定めた取り決めに則って削除申請を行う方法
SNSサービスのヘルプページやポリシーを表記したページ等に、削除の申請の仕方が記載されていれば、そこから削除申請を行います。
削除依頼をする理由を適切に入力すれば、速やかに対応する場合もあるので、管理部門・労務部門の研修時などに、あらかじめ該当するWEBページを確認しておくのも良いでしょう。
②記事削除の取り決め等が明示されていない場合は、プロバイダ責任制限法に基づいて、SNS管理者へ削除要請をする方法
プロバイダ責任制限法には先述の通り、情報削除の規定を定めています。
申請方法は、ただ単に投稿者の氏名や日時、投稿記事の内容を記載して削除を申請するのではなく、その投稿により被った損害、権利侵害の理由等も併せて記載し、内容証明で送付します。
5.まとめ
今回は、トラブル発覚後すぐに対応するべき点について重点的にご説明しました。繰り返しになりますが、誤った情報の拡散を防ぐためにも、迅速に対応することが重要です。
次回は、SNSトラブルが拡散され削除した後の公式発表や当該従業員への対応などをご説明します。