勤務形態によって社会保険に加入できる人と、できない人がいるのはご存知でしょうか?
加入条件を満たされているにもかかわらず加入していない場合は、調査でさかのぼって社会保険加入を命じられて、社会保険料の追徴を受けてしまうケースもありますので、しっかり要件を知りたいところですね。
まず、加入する事業所の申請の手続きは終わっていますか?
事業所の加入条件と手続き方法もまとめているので、確認してみてください。
1.健康保険法とは
『健康保険』は、
被保険者や被扶養者等の業務中の病気やケガ以外の疾病・負傷・死亡又は出産について保険給付を行い、国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的としています。
※業務中の病気やケガの保険給付は労災保険です。
2.従業員・役員の加入条件
①加入基準の基礎知識
ア)就労の実態で判断:「正社員」「パートタイマー」といった呼称ではなく、労働時間、雇用形態を主とする就労の実態で判断します。
イ)国籍要件は無いため、外国人でも①の実態で判断します。
ウ)適用事業所に使用されても被保険者になれない人のことを適用除外といい、以下の表の※1に該当する場合は、船員保険・国民健康保険など他の医療保険に加入することになります。
②社会保険の適用が除外される人
※2 「ただし」で適用する人は、「法第3条第2項の規定による被保険者」となります
③加入基準
ア)1日または1週間の所定労働時間が、その事業所で同じ種類の業種に従事する一般従業員の所定労働時間のおおむね4分の3以上の人
イ)1か月の所定労働日数が、その事業所で同種の業務に従事する一般従業員の所定労働日数のおおむね4分の3以上の人
※1 所定労働時間とは、会社で定めた労働時間
例:9時~17時 休憩1時間 → 7時間
※ 試用期間中の加入
試用期間を設けていても、試用期間終了後ではなく入社日から加入します。
④年齢による社会保険適用の区分
被保険者になれる期間は、年齢と各制度によって異なります。
※介護保険:第2号と第1号と2種類に区分されています。
健康保険 | 介護保険 | 厚生年金 | |
---|---|---|---|
40歳未満 | 〇 | × | 〇 |
40歳以上65歳未満 | 〇 | 〇(第2号) | 〇 |
65歳以上70歳未満 | 〇 | 〇(第1号) | 〇 |
70歳以上75歳未満 | 〇 | 〇(第1号) | × |
75歳以上 | 後期高齢者医療制度 | 〇(第1号) | × |
3.手続き方法
区 分 | 内 容 |
---|---|
提出先 | 管轄の年金事務所 |
提出時期 | 社会保険の加入日より5日以内 ※未来の加入申請はできません。 4月1日加入なら、4月1日より申請ができます(3月中の申請不可) |
提出方法 | 郵送、電子申請、窓口持参 |
必須書類 | ◆健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届 ・氏名 ・生年月日 ・性別 ・マイナンバー(もしくは基礎年金番号) ・取得年月日 ・扶養者の有無 ・報酬月額 ①月給者:雇用契約書にて定めた給与額(1か月あたりの通勤手当などの金額も加算します) ②時給者や日給者:その事業所で前月に同じような業務に従事し、同じような報酬を受けた人の報酬の平均額 等 ③役員の加入:役員報酬額が0円の場合には加入することができません |
添付書類 | ・原則として必要なし ※外国籍の従業員を採用した場合は別途添付書類有り ※管轄によって違いますのでご注意ください ◆「資格取得年月日」が届出の受付日から60日以上さかのぼる場合 |
家族加入 | ・健康保険 被扶養者(異動)届 ・国民年金 第3号被保険者資格取得届 |
手続き期間 | 申請より10日~2週間程度 |
手続き完了後 | ①年金事務所より届く書類 ・資格取得確認及び標準報酬決定通知書(役員・従業員の手続き完了書類) ②2日ほどして協会けんぽより保険証が発送され事業所宛に届きます。 ③保険証は即日発行されません。即日必要な場合には「健康保険 被保険者資格証明書」の交付を年金事務所に申請すると、使用できます。 |
注意 | 国民健康保険と社会保険と同時期の加入はできません。 ※4月1日に社会保険に加入するならば、4月1日以降は以前加入していた国民健康保険証や以前の勤務先の社会保険の保険証は使用できません。使用した場合は、別途手続きがあります。 |
4.資格取得手続きを怠ったらどうなる?
冒頭でもお話ししました、「加入条件を満たされているにもかかわらず加入していない場合は、調査でさかのぼって社会保険加入を命じられて、社会保険料の追徴を受けてしまうケースがあります」について、具体的にどういうことか、ご説明しますね。
資格取得届の提出が必要な方について、届出が提出されていないことが後の年金事務所の調査で分かった場合、「資格取得届を提出」しなくてはならないとともに、「事実が発生したとき(資格取得日に該当する日)にさかのぼって保険料を支払う」ことになります。
過去分を全てまとめて精算するのは、会社にとっても本人にとっても、かなりの負担となることは間違いありませんので、注意したいところです。
5.まとめ
新しく従業員を雇い入れた、役員報酬額が決まり支給が始まる、などの場合、一定の基準を満たしている場合は社会保険に加入する必要があります。
正社員、パートの枠にとらわれずに、要件をしっかり確認することが必要です。
手続きが遅れますと健康保険証が届くのも遅くなりますので、早めの情報収集、早めの手続きを行いましょう。