弁護士コラム

2019.04.22

従業員がSNSトラブル!対応と公式発表、再発防止はどうしたらいい?

「SNSでトラブルが起こってしまったら!企業側の対応は?」では、従業員がSNSでトラブルを起こした場合の調査方法や記事の削除についてご説明しました。
今回は、削除後に行うべき公式発表や従業員の対応、再発防止策についてご説明します。

前回の記事はこちら→「SNSでトラブルが起こってしまったら!企業側の対応は?」

1.すべてのSNSトラブルについて公式発表するべき?

問題となっている多くが、トラブルの原因になった投稿が拡散され炎上したケースです。
しかしながら投稿がすぐに発見、削除されるなど拡散に至らなかった場合は、あえて公式発表をしないという手段も考えられます。
むやみに全てのSNSトラブルに対して公表すれば、かえって企業イメージの低下や、起こるはずのなかった別のトラブルに発展する可能性もあります。
また、外部から寄せられる情報や内部チェックで発見された投稿の中には、誹謗中傷の場合でも根拠や具体性のないものもあり、拡散状況や投稿内容によって臨機応変に対応することが重要です。

2.公式発表のタイミングは状況を見て適切に

公式発表で多く用いられるのは、プレスリリースが知られていますが、企業によっては記者会見を行うところもあります。
事実関係を確認、当該の投稿記事も削除し従業員の処分を行った後に公式発表、という流れが一般的ではありますが、すべてが完了するには時間がかかり、その間に当該記事がさらに拡散されてしまうことも考えられます。

また、「拡散されているのに企業側は何も発表しない。全く対応していないのではないか」という疑いを持たれてしまう可能性もあります。
問題の投稿内容に対して、今現在わかっていること、どこまで対応が進んでいるのか、などを適宜、公式発表していくのが良いでしょう。

3.SNSトラブルを起こした従業員へはどんな対応をすれば良い?

(1)注意、指導と懲戒処分

前回の記事でもご説明しましたが、SNS利用について就業規則の懲戒規定に当たる行為が見られれば、従業員の処分を検討しなければなりません。

問題の投稿内容がすぐに削除され、拡散されなかった場合や、従業員間でのSNSトラブルで話し合いなどにより解決した場合は注意喚起や指導にとどめ、炎上拡散が止まらず、企業の売上低下や実損害が発生するような事態まで発展した場合は、懲戒処分(減給や出勤停止、懲戒解雇など)を検討する必要があります。

また、小規模なトラブルであっても、比較的地位の高い取締役や役員が起こしてしまったものについては注意にとどまらず、懲戒処分を実施するケースも考えられます。

ニュースなどに取り上げられ問題となった、飲食店勤務中に不適切な動画を投稿するなどのSNSトラブルについては、既に知られているとおり当該従業員の解雇や、食品や機器の廃棄など対応にかかった費用として、損害賠償請求が行われています。

(2)従業員同士でのSNSトラブル

「私的アカウント間でのSNSトラブルだから、勤務先には関係ない」という問題が発生したとしても、そのトラブルの内容によっては企業に影響を与えることになります。

例えば、Aさんは偶然facebookで同僚Bさんのアカウントを見つけ、Bさんが拒否したにもかかわらず執拗に友人申請を行うなどの行為で、Bさんが精神的苦痛を感じ仕事に支障をきたす等のケースも、最初は個人間のトラブルですが、最終的には従業員の休職の原因になるなど、企業の運営にかかわってくるケースです。

このような場合、当該従業員への注意や指導で改善を図りますが、上司と部下といった間で上記のやり取りがされた場合、セクハラやパワハラとなる可能性もありますので、様々な状況や要素を踏まえた上で処分を検討しましょう。

4.再度トラブルを起こさないために防止策の徹底を

トラブルが発生した場合は、公式発表とともに、社内にも通達や注意喚起を行いましょう。
従業員全員に内容を説明することで、「いつか自分もトラブルを起こしてしまうかもしれない」という認識を常に持ってもらうことになります。

具体的には、「いつどのSNSサービスで、当該従業員はどのような内容を投稿したのか」、「このトラブルについて、労務側はどのような対応と処分をしたのか」などを記載します。また、注意喚起としてSNSの特徴である、「良い悪いに関わらず、容易にネット上に情報が拡散できてしまう」ことや「拡散された後は削除が困難」であることも説明し、認識してもらいます。

普段あまりSNSを利用しない従業員などへ対しても、どのようなトラブルであったのかが分かるように、この注意喚起内でSNSの特徴などについても触れておきましょう。

しかしながら懲戒処分の具体的な内容の公表については、注意が必要です。
内容によっては名誉毀損とされることもありますので、個人名や具体的な説明を避け、特定できないよう表記するのが良いでしょう。

社内での研修等を再度実施したり、ガイドラインを策定していなかった場合は早急に策定するのも防止策として有効です。
繰り返しにはなりますが、業務で使用している機器(パソコンやスマートフォン)等の同意を得た上でのチェックや、守秘義務の誓約書を作成し署名してもらうなど、SNSトラブルについては適切な策をとっている企業であると常に認識してもらうことも、いつ起こるかわからないトラブルに対して先回りできる防止策です。

5.まとめ

今回はトラブルを起こしてしまった従業員に対しての処分や公式発表について説明してきましたが、今この時間でも、ますますネット世界は目まぐるしく変化しています。

昨日まで普通にできていたことが、今日からはできなくなった、というような事もネットでは多く見受けられます。
「問題が疑われる記事を投稿してしまったが、今は拡散していないし、いつでも消せる」と思っていても、突然明日からサービスが変わり、自分で削除ができなくなってしまうことも起こり得ます。

企業個人ともに、情報収集やコミュニケーションツールとしてのSNSは非常に便利なサービスではありますが、サービスの特徴やこれまでにご説明したトラブルを念頭に置いた上で適切に利用していきましょう。

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