前回の記事(労働時間と休日・休暇の基礎知識①)では、働き方の見直しに必要な知識として、労働時間、休日・休暇の違い、そして有給休暇の取得義務についてお話ししました。
今回は、その続きとして、振替休日・代休の違いと、時間外労働・休日労働をさせる場合に行わなければならない手続きについてご説明します。
1. 振替休日・代休の違い
労働時間と休日・休暇の基礎知識① 2(1)休日と休暇の違いにおいて、元から労働義務のない日を休日、労働義務が免除された日を休暇と呼ぶというお話をしました。
この「休日と休暇」のように、同じような意味に見えて、全く違う内容の制度があります。それは、「振替休日と代休」です。どちらも休日に労働するという点では同じです。では、一体何が違うのでしょうか?
まず、振替休日とは、あらかじめ休日と労働日を入れ替える場合に、その代わりとして振り替えられた休日のことを指します。つまり、労働させた日は休日労働とはならないので、1週の労働時間が40時間を超えていなければ、割増賃金を支払う必要はありません。また、4週4日の休日は必ず確保しておく必要があります。したがって、これらのことを踏まえると、割増賃金を発生させないように振替休日を運用するためには、同じ週内で振り替えを行わなくてはなりません。なお、振替日は事前に指定しなくてはなりませんので、前日までに通知します。
これに対し、代休とは、代わりに休む日を事前に決めずに、労働させた後に休日労働の代償として与えられた休日のことを指します。この場合は、労働した日はあくまで休日のままなので、休日に労働をしたという事実は消えていません。ですので、労働を命じた休日が法定休日であれば、時間外・休日労働に関する協定届を提出する必要があり、また、休日労働に対する割増賃金を支払わなければなりません(2.時間外労働・休日労働のために必要な手続きで詳しくご説明します)。
つまり、振替休日と代休の違いは、事前に休日を決めているか否かというところにあります。
振替休日、代休のいずれの制度を利用する場合でも、就業規則等に規定を設けましょう。
2. 時間外労働・休日労働のために必要な手続き
労働時間と休日・休暇の基礎知識①において、原則として1日8時間、1週40時間(法定労働時間)を超えて労働させてはならないこと、また、従業員に毎週少なくとも1日、あるいは、4週を通じて4日以上の休日(法定休日)を与えなければならないことをお話ししました。
この法定労働時間を超えて労働をさせた場合は時間外労働となり、法定休日に労働をさせた場合は休日労働となり、以下の手続きを行う必要があります。
(1)就業規則等での定め
就業規則に、時間外労働や休日労働をさせることができる旨の定めを置く必要があります。
もし、就業規則を作成していない場合は、雇用契約書に記載しましょう。
(2)時間外労働・休日労働に関する協定(36協定)
事前に従業員を代表する者と時間外労働・休日労働に関する協定(36協定)を締結し、時間外労働・休日労働に関する協定届を所轄の労働基準監督署に届け出なければなりません。
なぜ36協定と呼ぶのかというと、労働基準法36条にこの協定に関する規定があるためです。36協定は、事業所単位で締結・届出をする必要があることに注意しましょう。
36協定は、労働基準監督署に届け出ることではじめて有効となるので、協定を締結したけれど届け出ずに時間外労働・休日労働をさせたり、届け出る前に時間外労働・休日労働をさせたりすることは違法です。
36協定の有効期間は原則1年間なので、毎年、次の有効期間が始まる前に提出しなければならないということを頭に入れておきましょう。
(3)割増賃金の支払い
時間外労働の場合は25%以上、休日労働の場合は35%以上の割増賃金を支払わなければなりません。
これらの他にも、深夜(原則として午後10時~午前5時)に労働をさせた場合は、25%以上の割増賃金を支払う必要があります。
時間外労働や休日労働をしていて午後10時を過ぎてしまった場合は、時間外労働・休日労働の割増率に深夜労働の割増率を合算して支払わなくてはなりません。
ここで、「休日労働をしていて、法定労働時間を超えた場合はどうなるの?」と疑問に思った方がいらっしゃるかもしれません。
これまでの説明からすると、休日労働に対する割増率(35%以上)に時間外労働に対する割増率(25%以上)を加算することも考えられます。
しかし、この場合は割増率の合算は行いません。なぜなら、法定休日にはそもそも法定労働時間という概念が存在しないからです。
割増賃金は、以下の式で算定します。
ただし、この算定を行う際、
家族手当・扶養手当・子女教育手当(※)、通勤手当(※)、別居手当・単身赴任手当、
住宅手当(※)、臨時に支払われた賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
は賃金から除外します。
※家族数、交通費・距離、家賃に比例して支給するものに限り、一律に支給する場合は月給に含みます。
3. まとめ
労働時間が増えれば増えるほど、心身に不調をきたします。必要な手続きを行っていたとしても、時間外労働・休日労働は必要最小限にとどめなければなりません。
今、時間外労働・休日労働が当たり前になっているのであれば、業務の進め方や業務量などを見直し、従業員の健康を確保することに努めましょう。