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給与計算業務②~給与計算の流れ~

前回の記事では、給与計算を行うにあたって必要な知識についてお話しました。今回は、それを踏まえて、実際の給与計算業務の流れについてご説明します。

前回の記事はこちら
給与計算業務① ~給与とは~
https://www.nakagawa-lawoffice.jp/blog/business/3370/

1. 給与計算の流れ

(1)支給項目の計算

初めに、支給項目の計算を行います。
まず、基準内賃金(基本給のほか、役職手当、通勤手当など毎月決まった金額で固定的に支払われる手当)と基準外賃金(時間外労働をさせた場合に支払う手当など毎月変動的に支払われる賃金)を合計します。また、前回の記事でも述べた通り、給与は労働の対償として支払われるものなので、欠勤や遅刻、早退のように、従業員の労務の提供がない場合は、給与を支払う必要はありません。ですので、基準内賃金と基準外賃金の合計額から、欠勤や遅刻、早退をした場合の欠勤控除、遅早控除の額を差し引き、総支給額を算出します。

支給額が毎回変動する給与は、支給する度に計算する必要があります。変動がある項目として代表的なのが残業手当です。タイムカード等で記録している残業時間のうち、法定時間内労働、法定時間外労働、法定休日労働、深夜労働について、それぞれ分けて集計する必要があります。

(2)保険料の計算

(a)社会保険料

社会保険料とは、健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料(40歳以上65歳未満の従業員のみ)のことです。
各従業員の社会保険料を確認するために、まず、保険料額表を準備します。健康保険料率と介護保険料率は毎年3月、厚生年金保険料率は毎年9月に改正されるので、最新のものを準備するようにしてください。

保険料額表を準備したら、報酬月額を算出します。この報酬月額とは、基本給のほか、通勤手当、家族手当、住宅手当、残業手当など労働の対償として会社が支払う報酬のことを指します。臨時に支払われるものや、3か月を超える期間ごとに支払われる賞与などは含まないので注意しましょう。

算出した報酬月額を保険料額表にあてはめることで、標準報酬月額が決定します。この標準報酬月額に保険料率を掛けることで、保険料が決定します。
標準報酬月額を決定するのは、従業員の入社時、毎年7月に標準報酬月額の見直しを行う定時決定時、大幅な昇給・降給があった場合の随時改定時です。

<控除する社会保険料の求め方>

※この表は例ですので、実際に計算する際は必ず前述した保険料額表を準備・参照してください。

例えば、報酬月額が22万5千円である場合、標準報酬月額は22万円になるので、標準報酬月額が220,000の行を参照します。社会保険料は、会社と従業員で折半するので、従業員の給与から控除するのは全額ではなく、折半額です。
健康保険料については、40歳未満の従業員であれば、「介護保険第2号被保険者に該当しない場合」の折半額(今回の場合、11,264円)、40歳以上の従業員であれば「介護保険第2号被保険者に該当する場合」の折半額(今回の場合、13,167円)を控除します。
厚生年金保険料については、一般の被保険者の折半額(今回の場合、20,130円)を控除します。

(b)雇用保険料

雇用保険料は、総支給額に雇用保険料率を掛けて計算するため、総支給額が変わる度に計算しなければなりません。雇用保険料率は、会社の事業の種類によって異なるので、厚生労働省のホームページで確認しましょう。

<控除する雇用保険料の求め方>

※この表は例ですので、実際に計算する際は必ず厚生労働省のホームページを参照してください。
雇用保険料も、従業員が負担する分と会社が負担する分に分かれるので、従業員の給与から控除するのは①労働者負担にあたる額のみです。

例えば、一般の事業に該当する会社の従業員で、総支給額が20万円である場合、20万円に①労働者負担率0.3%を掛けた600円を控除します。

(3)所得税・住民税の計算

所得税は、源泉徴収税額表を用いて計算します。この源泉徴収税額表には、月額表と日額表があります。
給与を月、半月、10日、月の整数倍の期間ごとに支払う従業員に対しては月額表を使います。「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している従業員については甲欄、その他の従業員については乙欄を使います。
これに対して、日や週ごとに支払う従業員、日割で支払う従業員、日雇賃金を支払う従業員に対しては日額表を使います。日や週ごと、日割で支払う従業員で、「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している人については甲欄、その他の従業員については乙欄を使います。日雇賃金を支払う従業員については丙欄を使います。
また、扶養控除等申告書を提出している場合、配偶者、子、親といった扶養親族等の人数を確認しましょう。

<控除する所得税の求め方>

※この表は例ですので、実際に計算する際は必ず国税庁のホームページを参照してください。

例えば、月ごとに給与を支払っており、その月の社会保険料等控除後の給与等の金額が29万円、扶養控除等申告書を提出している従業員で、扶養親族等が2人の場合、4,800円を給与から控除します。

住民税は、毎月5月頃までに会社に送られてくる特別徴収税額決定通知書をもとに控除します。

(4)給与明細の作成

最後に、給与明細を作成します。たとえ給与を振込みで支給していたとしても、必ず給与明細を作成して、役員を含む従業員に渡す必要があります。

2. まとめ

前回の記事と今回の記事にわたって、給与計算に関する基本的な知識・流れについてご説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。給与計算は、支払日までに、思っている以上に多くの手順を踏む必要がある難しい業務です。慣れないうちは特に大変ですが、1つ1つの項目を丁寧に理解して業務を進めていきましょう。