弁護士コラム

2019.06.10

起業する前に知っておくべきこと1~注意点~

「起業したい!」と思った場合、「今勤めている会社を辞めずに起業しても大丈夫?」「法人を設立すべき?それとも、個人でやっていくべき?」といった様々な疑問が浮かんでくるのではないかと思います。
そこで、今回の記事から数回にわたり、起業する方または起業するかどうか悩んでいる方に、実際に起業をする前に知っておいていただきたいことについてご説明します。

1. 会社勤めの人が起業するときの注意点

今、どこかの会社で働いている人にとっては、一口に「起業する」といっても、(1)会社を辞めて起業する(独立)、(2)会社は辞めずに起業する(副業)という2つの選択肢があります。以下では、選択肢ごとに注意点を見ていくことにします。

(1)会社を辞めて起業する(独立)

今勤めている会社を辞めて起業する場合、いくつか気を付けなければならないことがあります。

住民税や国民健康保険料は前年度の収入に基づいて決まる
⇒会社を辞めてから収入が減ってしまうということは十分に考えられます。しかし、納付する住民税、国民健康保険料は、前年度の収入、つまり会社勤めで収入が多かった頃の金額に基づいて決定されます。収入が減ってしまう可能性を考えて、余裕を持って貯金しておきましょう。

起業したばかりだとクレジットカードが作りにくい
⇒クレジットカードの作成を申し込んだとき、クレジットカード会社は「この人はちゃんと貸したお金を返してくれるかな?」という点を見て判断します。会社勤めの頃は、安定した収入がありますが、起業してすぐだと何の実績もなく信用度は低いため、審査に必ずしも通るとは限りません。
しかし、事業がうまくいかず資金繰りをしなければならないという状況になることもあり得ます。それを見越して、会社を辞める前にクレジットカードを作っておきましょう。

家の購入や引っ越しが難しくなる
⇒クレジットカードの作成申し込みと同様に、家を購入するときや引っ越しをするときにも、不動産会社はその人が信用できるかどうかを見ています。会社勤めの場合は、源泉徴収票を見せれば大丈夫なところが多いですが、起業した場合は源泉徴収票と会社の決算書が必要となることが多いです。

それらに記載されている金額で信用度が変わってくるので、会社勤めであればある程度の信用は得られます。しかし、「起業したもののあまり事業がうまくいっていない…」という場合、どうしても信用度が低くなるため、家の購入や引っ越しは当分難しいかもしれません。クレジットカードの作成と同様、家の購入や引っ越しを考えている場合も、会社を辞める前に済ませておきましょう。

(2)会社は辞めずに起業する(副業)

(1)に対して、今の会社で働きながら起業するということも考えられます。例えば、今働いている会社の休日に活動するといった場合です。この場合も、注意すべき点があります。

副業が禁止されていないか確認
⇒会社によっては、業務への影響や、利益相反等を理由に副業を禁止していることがあります。会社を辞めずに起業したいという場合は、まず、会社において副業が禁止されていないかどうか、就業規則などの規程を見て確認しましょう。

会社に副業がばれてしまう可能性がある
⇒もしかすると、「副業は禁止されていないけれど、なんとなく会社にばれるのは嫌だ」という方もいらっしゃるかもしれません。しかし、確定申告のやり方によっては、会社に副業がばれてしまう可能性があります。
(確定申告とは、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた全ての所得と、その所得にかかる所得税を計算し、精算する手続きのことです。)

基本的に、従業員の住民税は、給与から天引きをして、会社から市町村に納付します。この天引きは、毎年5月頃までに会社に送られてくる特別徴収税額決定通知書をもとに行われます。そのため、会社から支給されている給与と副業で得た収入を合算して確定申告をしてしまうと、それに基づいた住民税額が会社に通知されてしまいます。この通知書を見て、会社が支給した給与よりも総所得額が多いことが発覚して、会社にばれてしまうというわけです。

このような事態を防ぐために、確定申告の際に、副業の収入について「普通徴収(給与から天引きするのではなく、自分で納付する)」を選択すれば、納付書によって別途自分で納付することになるので、会社にばれにくくなります。

ただし、会社との思わぬトラブルを避けるためには、副業を禁止する定めの有無にかかわらず、事前に会社に相談することをおすすめします。

2. 個人事業と法人の違い

1を踏まえて、早速起業しようと考えた方に質問です。個人事業と法人の違いをご存知ですか?「個人事業と法人って何が違うの?どっちにすればいいの?」とお思いの方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
個人事業とは、会社を作らず個人で行う事業のことをいいます。俗に言う自営業のことです。これに対し、法人は想像しやすいかと思いますが、会社のように、法律上別の人格が認められたもののことをいいます。

では、個人事業で始めるか、法人を設立して始めるか、どちらが良いのでしょうか。

一概には言えませんが、個人事業と法人にはこのような違いがあります。どちらにも良い点、悪い点があるので、「絶対にこっちにすべき!」と言い切ることは難しいです。両者を比較して、自分にはどちらが合っているか考えてみましょう。

3. まとめ

今回は、会社勤めの人が起業するにあたり気を付けるべきことと、個人事業と法人の違いについてご説明しました。
「何事も早いに越したことはない!」と考え、急いで起業の準備を始めたい方もいらっしゃるかもしれませんが、起業には金銭面など多くのリスクがあります。「ちゃんと考えてから動けばよかった…」と後悔しないように、この記事を参考にしていただければ幸いです。

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