「近隣トラブル」というと、生活音や騒音、ペットの飼育マナー、ごみの出し方、駐車場のマナーなど多種多様なケースが想定されます。
今回は、分譲マンションにおけるトラブルについて見ていきましょう。
1 マンションの階上からの騒音被害
我慢のできる限度を超えた騒音で、私たちは食欲不振や不眠に悩まされるようになってしまいました。こういった場合、真上の部屋の入居者に対して、慰謝料や立ち退きの請求を行うことはできるのでしょうか。
マンション内の騒音に関する紛争は、子供が走り回る音の他に、楽器の音、深夜の大音量でのテレビの音等、様々な発生源が想定されますが、どのケースであっても、慰謝料等を請求するにあたっては、当該騒音が不法行為上違法と評価される必要があります。
そして、違法であるかを判断するに際しては、実際に発生している騒音が被害を受けている住民の受忍限度を超えるものであるのか、という点が重要となります。
分譲マンション内における階上の部屋の子供による飛び跳ねや走り回りによる騒音が階下の住民の受忍限度を超えており、不法行為を構成するとして、階下の居住者である原告2名それぞれからの、慰謝料及び騒音測定にかかった費用、治療費・薬代を含む全額の損害賠償請求を認めた。
上記裁判例では、まず、マンションの外壁や床の構造、防音緩衝材の遮音性、騒音が発生した時間帯、騒音レベル、音の種類等から、被告の子供が一定の時間帯及び頻度で室内において飛び跳ねるなどして騒音を発生させていた事実を認定しました。
そして、騒音が発生していた時間帯が、通常静粛が求められる時間帯(午後9時から翌日午前7時)、及び日中(午前7時から同日午後9時)の間でそれぞれ一般的に「うるさい」と感じる騒音レベルであったことを騒音測定結果から指摘し、このような騒音を階下の居室に到達させていたことは、原告らの受忍限度を超えるものとしました。
その上で、損害として、騒音により原告らが受けた精神的苦痛に対する慰謝料、騒音が原因で体調を崩したことによる通院の治療費・薬代の他に、専門家による客観的な騒音の測定が本件について立証のために必要不可欠であることから、騒音の測定にかかった費用も損害に含めて認めています。
2 マンションの共用部分に私物が置かれている
こういった場合、持ち主に対してどのような請求ができるのでしょうか。
玄関先の通路部分に自転車等の障害物が置かれていると、避難経路としてのみならず、隣接していない他のマンションの居住者(特に高齢者など)のスムーズな通行を妨げ、危険であるために、撤去の必要性が認められると考えられます。
また、今回の事例では「共用部分」に自転車が停められていますが、共用部分はマンションの共有者がそれぞれ使用できるとしても、その通常の用法(今回であれば「通路」としての用法)に従う必要があり、それ以外の用途で使用することはできません(区分所有法13条)。よって、住人が自分の玄関近くの共用部分を自転車置き場として使用することは認められません。
一方で、仮に自転車が停められている部分が、玄関先のポーチ等といった専用使用権が認められる場所であった場合はどうなるのでしょうか。
この場合であっても、マンションの入居者の「共同の利益」に反する行為は禁じられています。そして、自転車のようにある程度の重量がある上に、倒れると危険であること等を考慮すると、勝手な駐輪については一般的には認められず、共同の利益違反であると考えられます。したがって、管理組合や管理会社に相談した上で撤去を依頼するのが良いでしょう。
3 隣室のペットの鳴き声や臭気に悩まされています
マンションでは、ペットの飼育が規約によって禁止されている場合とそうでない場合とが想定されます。
規約で禁止されているケースの裁判例では、規約の他に、そのマンションがそもそもペットの飼育を前提とした構造なのか(排気口などの設置等)等を考慮した上で飼育を認めない判断をしたものもあります。規約で特に禁じられていなかった場合であっても、管理組合などに相談し、改善するよう呼びかける等の手段をとることが考えられます。
4 まとめ
これまでに上げた通り、マンションのトラブルは多種多様なものがあります。軽微なものであれば住民同士の話し合いで解決することもあるかもしれません。しかしながら、双方の「居住している場所」で発生するトラブルである以上、その後の関係性が悪化してしまう可能性や、誤ったアプローチによりトラブルが拡大してしまう可能性も十分に孕んでいます。
もしも自分がトラブルに巻き込まれてしまったら、自分だけで解決しようとせず、管理会社や管理組合、弁護士に相談してより良い解決方法を探すことをお勧めします。