弁護士コラム

2019.04.04

SNSトラブルを防ぐ、ルール作りとチェック体制

気をつけたい企業におけるSNSトラブル」という記事でも前述しましたが、個人アカウント、企業アカウントに関わらず適切にSNS利用するためには、企業側でトラブルに対処できるような就業規則やガイドラインを作成し、従業員に周知させ、社内でチェックすることが重要です。

今回はSNSトラブルにも適応できる就業規則、ガイドライン作成のポイントと社内教育、社内チェック体制についてご紹介します。

1.就業規則を作成するポイント

就業規則に記載されているものは、労働者(従業員)の労働条件であり、懲戒処分などの人事措置を示す根拠でもあります。万が一、従業員がSNS上で問題を起こし、それが企業に多大な不利益を与え、重大な問題となった場合、就業規則に則って懲戒処分を検討せねばなりません。

ただ、SNSに限定した内容を就業規則に細かく記載してしまうと、流れの早いSNSのサービスに対応できず、何度も内容の変更をしなければならなくなってしまいます。
前述のとおり、就業規則を変更するには大変な時間と手間がかかるため、就業規則を作成する際には、SNSでの禁止事項を踏まえた一般的な内容にしていくことが重要です。

例えば、服務規律を定めた項目で「勤務中は業務に専念すること」等を記載すれば、業務中に不適切な行為を撮影し、SNSにアップすることが規則違反であると示すことができます。

他にも、機密保持の項目で情報の厳重管理と私的漏えいの禁止を定めることにより、SNSからの情報漏えいを防ぎ、また電子機器管理の項目では、社内PCや貸与されたスマートフォン等へのソフトやアプリの無断インストール禁止などを設けることで、貸与機器でのSNSアプリ等の使用禁止などを示すことができます。

このように、一般的に守るべき規則として記載し、SNSで生じたトラブルに対しても規則に則れるようにしていきましょう。

2.各ガイドラインを作成しましょう

(1)私的利用についてもガイドラインが必要

おおまかなルールについては就業規則で取り決め、SNSを利用する上で気をつけるべき注意点はガイドラインに記載し、適宜改正しながら運用していきましょう。

重要なのは、アルバイトやパートといった全ての従業員に対して周知してもらうよう、わかりやすく、端的に説明することです。高校生や大学生など、若い世代の人にも理解できるような文章、そして内容も長すぎると読み流されてしまうため、要点を絞ってまとめていくとよいでしょう。

具体的な内容としては、「なぜこのようなガイドラインを設けるのか」「SNSとはどのようなWEBサービスのことを指すのか」「その特徴はどんなものか」等を記載し、SNSを知らない人にも、これから利用するかもしれない人にも分かるように作成していきます。

そして一番重要な「SNSを利用する上での注意点」については、社外秘の情報、顧客情報をSNSに投稿しない勤務時間中はSNSにアクセスしない、など勤務中に起こりうる行為に対して注意を促し、また飲食店では、「有名人が来店したとしてもSNSにアップしない」など業種やサービスに合わせた内容で作成していきましょう。

事例を挙げ、読む側に想像させることで自分自身の事とし、従業員として会社に与える影響が大きいということを認識してもらうという点がポイントです。

(2)公式アカウントを運営する上でのガイドライン

公式アカウントがある企業では、運用していく際の注意点、守るべき点を従業員向けのガイドラインと区別して、公式アカウント用に作成するのが望ましいです。

いつどのようなときに、どのような内容で投稿するのか、SNS上での顧客とのやり取りの方法、トラブルが起こった際の対処法、投稿はどの端末から行うのか(個人所有のものを利用していいのかどうか)などを取り決めていきましょう。

先述したように、SNSの特性上、全ての投稿内容を上長が確認し許可を与えるというのは現実的ではありません。
しかしながら、企業の業績や売上に関わる新商品や新サービスの告知等の際には、「投稿の最終確認作業を複数人で行うこととする」といった内容にしておけば、誤った情報の拡散予防にもなります。

SNSの公式アカウントには、企業の広報的な意味合いが強いもの、担当者の性格が出やすいものなど、様々なアカウントが存在します。それぞれのタイプに合わせた内容にし、例外のないようにガイドラインを作成していきましょう。

3.SNSへの取り組みを外部へアピールする

社内へのSNS対応に加えて、外部へ取り組みをアピールする上でしておきたいのがソーシャルメディアポリシーの作成です。WEBで「ソーシャルメディアポリシー」と検索すると、様々な企業のソーシャルメディアポリシーを見ることができます。

内容としては、「各SNSの公式アカウントがあること」「SNSに対する考え方」「社員への対応」についてなどです。これらを企業のWEBサイトに掲載することで、SNSへの取り組みをしている企業としてアピールでき、トラブルが起こった際にも、企業としての方針を記載しておけば対処している姿勢を示すことができます。

さらに、新商品の情報などは、企業が正式に運営しているサイトやアカウントからのみ行うことや、運営しているWEBサイトやSNS上での意見やクレームの連絡先を掲載することで、誤った情報が予期せず広まるのを防ぐことができます。

4. 社内教育と社内チェック体制の重要性

適切な私的利用、公式アカウント運営をするには、社内での研修や講習を行うのが望ましいでしょう。
新入社員に対しては、その企業に則した利用ができるよう、入社時点での研修等に盛り込むことでSNSが企業に対して与える影響の強さなど、認識を強く持ってもらう機会にもなります。もちろん、アルバイトやパート従業員に対しても入社時に研修を行い、全体で研修内容を把握することが大切です。

講師はSNSに通じた社員や外部講師でも良いですし、肖像権や著作権などに関係する問題も多いため弁護士に依頼するという手段もあります。

就業規則やガイドラインの説明、弁護士に依頼する場合は事例なども紹介し、「自分の身になって考える」というポイントで研修を進めていくと良いでしょう。

研修後は誓約書に署名し、企業の一員であるという意識を強く持ってもらうことも重要です。
社内でのSNSチェックについては、広報担当や管理部門が業務の一環として、いわゆる「エゴサーチ」(自社名、サービス名で検索し関係性を確認)もしくは「モニタリング」(社内PCが適切に使用されているか)を行い、問題が生じた場合には削除依頼や指導等の対応をとる方法、外部専門業者にチェックを依頼する方法、などが挙げられます。

また、公式アカウントで問題が発生した場合、調査対象として投稿した端末やメール等のチェックも行うと原因の究明につながります。

ただし、調査が行き過ぎてしまうとプライバシーの侵害となる可能性もありますので、どの段階までを調査し違反と判断するのかをガイドラインに明示するなど、従業員も配慮し行うことが重要です。

5.まとめ

今回はガイドラインの作成、社内チェック体制などについて説明しましたが、いかがだったでしょうか。企業の管理部門や総務の担当をされている方は、この先起きるかもしれないトラブルへの予防策として、対応が後手にならないよう、ガイドラインについては速やかに作成していきましょう。

次回は、トラブルが起こってしまった際の対処方法についてご説明します。

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