弁護士コラム

2023.07.11

進むWeb手続き

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IT社会の発達に伴い、裁判所における手続きも着々とWebの手続きが進められています。

先日、離婚や遺産分割といった家事調停だけでなく、破産など裁判以外の手続きをオンラインで可能にする法律の改正が国会で可決されたとのニュースを目にしました。
すでに、昨年5月に成立した民事訴訟法の改正により、民事訴訟については訴訟の提起から、判決に至るまでWebで行うことができるようになっており、順次Webの手続きが福岡の裁判所でも進められています。

裁判所からはWeb対応可能ですかと聞かれることが多く、当事務所は対応可能な体制であるため、対応可能と回答しているのですが、相手方の代理人などが、高齢の方の場合には、対応不可などと言われ(双方の代理人が対応可能でなければ使うことができないのです。)、現時点で、Webでの書面提出の手続きは一度も行ったことがありません。
周りの弁護士からは、今までの郵送やFAXで書面を提出していたのがなんだったのかというくらい便利との評判ですので、早く使ってみたいなと思っています。

進むWeb手続き

今回の改正は、こうした民事裁判だけでなく、破産などの手続きもWebですることができるようになると決まりました。
破産の場合、従前は申立書や添付資料(収入資料、財産資料(通帳の写し)など大量の枚数を印刷し、裁判所へ郵送していたのですが、それが、今後、印刷せず、Webでできることを考えると、申立てに至る労力だけでなく、資源も節約できるため、具体的な運用が始まるのを今か今かと待っています(ニュースでは令和10年までに順次始まっていくとのことですので、気長に待とうと思います)。

このように、IT化が進むことは非常に利便性が向上し、喜ばしいことなのですが、ITを活用するのはあくまでも人間であるため、人為的なミスが発生する危険性があります。
また、先日、他人の情報がマイナンバーに紐づけされていたというニュースもあったように、国が運用するシステムだから安全だということは決してないため、セキュリティ面の安全性にも注視しておく必要があると考えています。

特に裁判所に提出する文書や資料は、クライアントだけでなく多数の人の極めて重要な個人情報が大量に記載されているため、より慎重な対応が必要です。
当事務所でもこうしたIT技術を利用する際に、ヒューマンエラーが生じないよう、ネットリテラシーを高め、適切にIT技術を利用できるよう更にこころがけたいと考えています。

 

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記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。

 

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2019.04.25

【相談事例37】「平成32年」と書かれた契約書は有効?~内容の確定性について~

【相談内容】

ニュースで、新元号が発表されたのを見て、気になったことがあります。
私は、5年前(平成26年)に、ある人にお金を貸しており、その際借用書も作成しているのですが、返済期間として「平成26年9月~平成32年8月まで」と記載されています。

新しい年号に変わったことにより、「平成32年」というものが存在しなくなってしまったのですが、契約が無効になったりすることはないのでしょうか。

【弁護士からの回答】

平成31年4月1日に、新元号が「令和」になることが発表されました。これにより、「平成」は平成31年4月30日で終わり、翌日の5月1日からは、新元号の令和元年5月1日ということになります。

元号が変わること(「改元」といいます。)に伴い、ご相談者様の事例のように従前の元号で表記していた契約の有効性に影響を及ぼすのか否かについて、契約の有効性の要件の説明と併せてご説明させていただきます。

1. 契約(法律行為)の有効性

契約(法律行為)が有効であるための要件のひとつに、法律行為の客観的有効要件というものがあります。

契約が成立する場合には、その契約の内容にしたがった権利、義務が発生することになり、義務に反した場合には損害賠償などのリスクを負うことになります。
したがって、契約(法律行為)内容に関し、内容が確定しない場合や、実現できない場合にまで、権利を取得させたり、義務を負わせたりするべきではないと考えられています。

したがって、契約が成立するためには、契約内容に関する客観的有効要件を満たしている必要があります。
客観的に有効要件には、

①内容の「確定性」
②内容の「実現可能性」
③内容の「適法性」
④内容の「社会的妥当性」

の4つの要件があります。
そして、改元にともなって、存在しなくなった従前の元号による契約書の有効性の問題は、上記要件のうち①内容の「確定性」の問題であるため、内容の確定性の要件についてご説明させていただきます(他の要件については次回以降ご説明させていただきます。)

2. 内容の「確定性」とは

上記のとおり、契約が成立すると、契約内容に沿った義務を負うことになります。

したがって、契約が有効であるためには、契約の内容、すなわち、どのような権利を有し、どのような義務を負っているのかについて(契約の重要な部分)は確定していることが必要であり、内容を確定することができない契約は無効になります。

3. 「平成32年」とする契約は有効か

それでは、ご相談者様の事例のように「平成32年」という期限が設定されている契約は、確定性の要件を満たしているといえるのでしょうか。

確定性については、当事者の合意した内容を合理的に解釈することにより、内容が特定することができる場合でも満たされると解されています。

そして、平成32年を期限とする場合、当事者の意思として「平成という元号が続いている場合のみ有効とする」というような合意をしているということは通常考えられず、平成32年=西暦2020年を期限とするという合意をしていることは解釈上明らかです。

したがって、「平成32年」という期限を設定していたとしても、当事者において西暦2020年が期限であるという契約の内容は確定しているといえるため、内容の確定性の要件を満たしているといえます。

4. 改元にあたっての注意事項

このように、改元が発生した場合に、旧元号のままの書面を作成したとしても、契約の有効性については問題ないのですが、旧元号のまま契約書等を作成することで、相手方との間でトラブルが発生する可能性は否定できません。

したがって現時点で契約書や請求書等の文章を作成する際に5月1日以降に期限などが到来する場合には、新元号により記載するか、西暦を併記するなどして、内容に誤解を与えないよう工夫が必要です。

次回以降にもご説明させていただきますが、契約の有効要件を満たしているかについては意外にも専門的な知識が必要になってきます。

したがって、契約書の作成に際しては、弁護士にご相談いただいたほうがよいでしょう。

 

掲載している事例についての注意事項は、こちらをお読みください。
「相談事例集の掲載にあたって」

2018.06.30

破産に関するよくあるご質問⑤

【ご相談者様からのご質問】

 借金がかさみどうしようか悩んでいましたが,これまでの先生のお話を聞いて破産をしようかと考えています。ですが,私は仕事上,月に1~2回は飲みに行かなくてはいけません。破産をしようとしているのに飲み会なんて許されませんよね。

 

【弁護士からの回答】

ご相談者様からのよくあるご質問に対する回答はひとまず今回で一区切りです。ご相談者様のように,破産する際の日常の振舞い方についてのご質問の多いので回答していきたいと思います。

 

Q13.破産の申し立てを行っている間は,飲み屋などにいってはいけませんよね?

A.結論からお伝えすると,お酒を飲みにいったりすること自体が制限されるわけではありません。お仕事の関係で避けられない飲み会もあるでしょう。しかし,破産をして債務を免責するのは,あくまでも破産者の経済的な再建を図るためであるため,裁判所において,免責を認めるか認めないかの判断において,債務が無い状態で,きちんとまっとうに生活することができるのかという点も見られています。具体的には,申立てを行うまでの間,毎月,家計表を作成してもらい,債務の返済がない状態で,自身の収入に見合った支出で生活をすることができることを裁判所に示す必要があります。したがって,収入に見合った範囲内であり,適切な金額(月に2~3万円程度ではないでしょうか。)であればお酒を飲みにいったとしても何ら問題はありません。もっとも,キャバクラや風俗などでお金を使ってしまうことは浪費行為に該当するため,少なくとも破産手続きが終了するまでは控えておいた方がよいでしょう。

 

Q14.破産した後にギャンブルをすると逮捕されてしまうのですか。

A.逮捕されることはありませんが,控えておいた方が良いでしょう。

まず,破産の申し立てを行っているときときや,破産手続中には,ギャンブルだけなく,浪費や風俗などにお金を使うことはくれぐれもお控えください。その程度がひどい場合にはせっかく破産を申し立てたにも関わらず,免責が認められなくなってしまう可能性があります。一方で,破産手続きが終了した後に,ギャンブルを行ったり,浪費等をしたとしても一度認められた免責決定が取り消されたり,何らかのペナルティーが科せられることはありません。

 しかし,ギャンブルにしろ浪費にしろ,破産をする前と同じ生活をしていれば,ほとんどの場合が,収入では生活することができなくなってしまうでしょう。そして一度破産している以上,ブラックリストに載っているため消費者金融からは借り入れができず,ヤミ金など違法な高利貸しなどから借り入れを行ってしまい,違法な取り立てなどで取り返しのつかないことになってしまう可能性も否定できません。法律上も破産をしてから7年が経過しないと原則として再び破産をすることはできません。もう二度と借金で困らない様に,破産が認められた場合には自分の収入に見合った生活を心がけ,新しい人生を有意義なものにされた方がよいと思います。

2018.06.29

破産に関するよくあるご質問④

【ご相談者様からのご質問】

 これまでの先生の回答を見ていると,「破産は悪いこと」というイメージは間違っていたとわかりました。でも,借金を基本的に返さなくて済むのに,今までと同じような生活を送れるということはないですよね。

【弁護士からの回答】

 今回は,破産をしたことで,申し立てた人に対し,どのような不利益があるか否かについてご説明させていただきます。

 Q8.一定期間,選挙権が剥奪されてしまうということを聞いたのですが・・・

 A .そのようなことはありません。公職選挙法などにも破産をしたことで選挙権を失う等という記載は一切ありません。また,立候補する権利(被選挙権といいます。)についても何ら制限はなされないため,破産手続中であっても,立候補すること自体は理論上可能です。とはいえ,選挙には多額の費用が必要になり,そういった選挙費用に支出するお金があるのであれば,債権者に分配すべきと判断されるのが通常ですので,現実的には,破産手続中に立候補することは困難でしょう。

 

Q9.運転免許が取り消しになったりするのでしょうか。

A.そのようなことも一切ありません。そもそも,破産することと,運転免許の資格の適格性に何ら関連性はないと思います。こういった都市伝説的な噂がでていることからも,破産に対する間違った悪いイメージが浸透してしまっているのだなと感じます。

 

Q10.相続権がなくなることはありませんか?

A.民法には相続人たる資格を失う事由として,相続欠格事由及び相続人の廃除に関する規定がありますが(民法891条,892条),同規定の中に,破産をしたことで,相続人たる地位(推定相続人といいます。)を失うことはありません。なお,破産手続の開始決定前に被相続人が亡くなり,相続が開始した場合には,相続により受領した財産については,換価して債権者へ分配されることになります。逆に,破産手続き開始決定後に相続が発生した場合には,相続により得た財産は破産者が自由に処分することができます(これについては,別の機会にご説明させていただきます。)。

 

Q11.破産をすると,郵便物が自分の手元に届かなくなると聞いたのですが本当ですか。

A.管財事件というものになると,破産の手続きが続いている期間は,郵便物が管財人の弁護士の事務所に送付されることになります。別の機会にご説明させていただきますが,破産の手続きには,換価する財産がなく,免責(債務を免除することです。)させても何ら問題が無いと判断される「同時廃止事件」と,換価する財産がある場合や,免責させてもよいか調査する必要がある場合の「管財事件」の2種類があります。そして,管財事件になった場合には,管財人の弁護士において,破産者の財産を調査する必要があるため,破産手続きの期間中に限り,破産者宛の郵便物が管財人の弁護士の事務所宛に転送されることになります。もっとも,破産の手続きが終了すれば,管財人の転送は終わり,普通に郵便を受け取ることができます。

 

Q12.破産をすると引っ越しができないと聞いたのですが。

A.引っ越しができないわけでありませんが,裁判所の許可が必要になります。上記でご説明した管財事件になると,何度か裁判所に破産者自身が行く必要があり,かつ,管財人の法律事務所へ足を運ぶ必要があります。したがって,破産手続中に関しては,裁判所において破産者の所在を把握しておく必要があるため,引越しにより住所が変わる場合には事前に裁判所の許可を得てから引っ越しなどをする必要があります。

2018.06.28

破産に関するよくあるご質問③

【ご相談者様からのご質問】

 家族にはきちんと相談してから破産した方がよいということですね。考えてみます。ちなみに,私は,年金で生活しているのですが,その年金は大丈夫でしょうか。

 

【弁護士からの回答】

 前回は,破産をした際に親族等にどのような影響が及ぶのかについてご説明させていただきました。今回は,主に年金に関するご質問に回答してきたいと思います。

 

Q6.破産をすると厚生年金や国民年金がもらえなくなると聞いたことがあるのですが・・・

A.そのようなことは一切ありません。

 まず,公的年金(厚生年金,国民年金)を受給することができる権利は,法律上差押えをすることが禁じられている権利になります(国民年金法24条,厚生年金法41条)。また,法律上,年金の受給資格の喪失事由として,破産や個人再生を行ったことという規定は一切ありません。したがって,破産をしたとしても,年金については,それまできちんと年金を収めていれば。受給することが可能です。もっとも,公的年金の入金された預貯金口座が債権者に知られている場合には,債権者から差押えをされてしまう可能性があることや,その預貯金口座の残高がある程度(20万円程度)ある場合には,債権者に換価される可能性がありますので注意が必要です(この点については別の機会にご説明させていただきます。)。

 

Q7.公的年金は何ら問題なく受給できるのですね。では,企業年金や個人年金についてはどうなのでしょうか。

A.まず,企業が,確定給付企業年金・確定拠出年金・厚生年金基金等の制度を採用している場合には,いずれも差押禁止財産となっているため,公的に年金と同様の扱いになります。これに対し,企業において,企業年金制度を採用しておらず,退職金の制度を採用している場合には,退職金の金額によっては,一定の金額を債権者の換価のために支払わなければならなくなる可能性もあります(退職金については,別の機会にご説明させていただきます。)

 また,企業年金ではなく,個人年金(保険会社などに個人的に支払っているものです。)については,解約した際に戻ってくる金額(解約返戻金といいます。)が一定の金額以上の場合には,個人年金を解約する必要が生じてくる場合もあります。

 いずれにせよ,破産の申し立てをする際には,ご依頼者様の契約されている保険に関する事項についてはきちんと確認する必要があるので,ご不安なことがあれば,弁護士にご相談ください。

2018.06.27

破産手続に関するよくあるご質問②

【ご相談者様からのご質問】

 破産をしたとしても周りの人には分からないものなのですね。ですが,まだ破産に関して不安なことはたくさんあるので色々教えてください。

 

【弁護士からの回答】

今回も破産に関するご質問に答えていきます。破産に関しては,基本的に破産というイメージが先行してしまいて抵抗があるのではないかと思います。破産に抵抗があるかたでも,きちんと説明して,破産に対するイメージを払拭してもらい,破産によう経済的な再建のお手伝いをさせていただく場合もございます。破産しようか悩まれている方がいらっしゃればご気軽にご相談ください。

 

Q4.私が破産することが両親にバレたくないのですが,バレずに破産をすることができますか?

A. 不可能ではありませんが,非常に難しいです。まず,破産をしようと考えている方のご両親が連帯保証人になっている場合には,家族には確実にばれてしまいます。また,破産の申立ての際には同居している親族や配偶者の不動産の有無にかんする資料(無資産証明書など)を提出する必要があるので,そういった資料を提出する際に,うまく理由をごまかして資料をもらえれば問題ないですが,なかなかうまくはいかないと思います。

 このように,親族や配偶者にバレずに破産をしたいというご相談は非常に多いのですが,進めていくどこかでばれてしまう可能性は非常に高いです(申し訳ありませんが絶対にバレずにできますとお約束することはできません。)。私としては,きちんとご両親や配偶者の方にも破産をして経済的な再建を行うと説明すれば理解してくださると思うので(実際に,弁護士の口からご両親や配偶者にご説明し,ご納得いただいたケースも多数存在します。)。きちんと事情を説明してから破産をした方がいいと思います。

 

Q5.私が破産をしてしまったことで,両親や,兄弟が借り入れをする際に不利になったりすることはありませんか?

A.問題になることはありません。破産をした場合,ご本人は信用情報に破産したことが記録されることになりますが(いわゆる「ブラックリスト」にのることをいいます。),それはあくまで破産をした個人のみであり,ご親族が借入を行う場合にはご親族自身がブラックリストにのっていなければ借り入れを行うことは何ら問題なく可能です。もっとも,破産をした人がご親族の保証人になろうとする場合には保証人になれない可能性がありますが,一度破産をしてしまっている以上,他人の債務を肩代りする可能性のある保証人にはならないほうが良いのではないかと思います。

2018.06.26

破産に関するよくあるご質問①

【ご相談者様からのご質問】

  先生のブログを拝見すると,要件を満たしているのであれば破産の手続きを選択した方がよいとのことでした。ただ,破産となると近所の人に破産したことがバレてしまわないかとか,破産後の生活でいろいろと制限があるのではないかと不安になってしまいます。

 

【弁護士からの回答】

借金問題に関するご相談において,ご相談者様のお話をひととおりお聞きして,「破産した方がよいでしょう」とアドバイスした際に,「破産はちょっと・・・」と抵抗を示される方が少なからずいらっしゃいます。

破産に抵抗を示される理由として,破産に対するイメージの悪さや間違った情報により,破産することができないとして返済が困難であるにもかかわらず任意整理など選択してしまうと,後々返すことができなくなってしまい,経済的再建が図れなくなってしまいます。そこで,今回から複数回にかけて,破産に関してよくなされるご質問について1つずつ回答していくことで,破産に対するイメージを変えていければと考えています。

 

Q1.破産をすることになったら,債権者が家に押しかけてこないか心配です。

A.以前にもお伝えした通り,弁護士が受任通知を送付すると,貸金業者は直接の取り立てや連絡が禁止されます。したがって,破産する旨通知したとしても通常の消費者金融の場合には自宅に押しかけてくることはありません。もっとも,個人的にお金を借りていた知人の人の場合には,返済を求め自宅に来る可能性は否定できませんので,個人の借り入れの方がいらっしゃる場合には,事前に弁護士にご相談ください(相手が感情的にならないよう,事前に電話などで説明することなどもできます。)

 

Q2.戸籍や住所に破産者としての記載が載ってしまうのですか?

A.そのようなことはありません。破産をしたとしても戸籍や住民票に破産したことがあるとの記載がなされることは一切ありません。もっとも,会社を倒産する場合には,会社の登記に破産したことにより閉鎖された旨の記録が残ることになります。

 

Q3.日経新聞などに破産したことが載ってしまうと聞いたのですが・・・

A.これも事実に反します。破産した事実が通常の新聞に載ることはありません。もっとも,裁判所に対し,破産の申し立てを行い,破産手続開始決定が出た後と,免責決定(債務の返済を免除する決定です。)が出た後の2回だけ,官報という,国の広報誌には名前が載ることになります。

  もっとも,官報を通読されているというかたはほとんどいらっしゃらないと思いますし,官報に掲載されるのは,破産や民事再生などを行った非常に多くの方と一律に記載されるものであるため,官報に名前が記載されることによる弊害は事実上ほとんどないと言ってよいでしょう。

2018.03.29

各債務整理手続の特徴について~②破産と民事再生~

各債務整理手続の特徴について~②破産と民事再生~

<ご相談者様からのご質問>

   借金の額が非常に多くなってしまい,任意整理での解決は難しいのではないかと考えております。破産と民事再生はどちらの方がよいのでしょうか。

 <弁護士からの回答>

 法的整理を行うべきであると判断した場合には,原則として破産を選択することになりますが,破産手続きは,債務をゼロにする(免責)という効果が認められるものであるため,要件が定められており,要件に充足しないと破産が認められません。弁護士の立場からすると,破産の要件を充足しているのであれば破産を選択すべきであると考えます。
今回は,破産と民事再生の特徴についてご説明させていただきます。

1 破産手続について

 破産手続の一番のメリットとしては,破産によりこれまで支払ってきた債務の支払い義務を免れる(免責)点にあります。これにより債務を払うことなく新しい生活を進むことができますので,経済的な再建を図るためには,破産の要件を充足しているのであれば,破産により債務の免責の効果を得ることで借金問題を解決することが一番であると弁護士としては考えています。

 このように,破産手続は,免責という効果を与えるものであることから,破産手続を行うためには様々な制約があります。例えば,一定の財産を所有している場合にはその財産を差し出して債権者へ支払う(「配当」といいます。)必要があります。
したがって,不動産等を所有している場合には原則として財産を手放す必要があります。また,破産にいたった理由(借入を行った理由)がギャンブルや浪費など法律で定められた原因に該当する場合には,免責が認められない場合もあります。さらに,破産手続中は資格制限が認められており,保険の外交員,警備員等一定の資格の職業にはつけなくなってしまいます。
 したがって,ご相談者様より事情をお伺いする際には,上記のような破産を進めるのに障害たりうる事情がないかという点についてお聞きした上で,障害になりうる事情が存在した場合には,個人再生等をの手続きを検討していくことになります。

2 個人再生について

   個人再生のメリットとしては,破産における上記のデメリットをカバーしつつ,債務額を大きくカットできる点にあります,具体的には,要件を満たしている場合には住宅ローンを支払い続けながらそれ以外の債務をカットすることもできますし,借金の原因が,ギャンブルや浪費など非免責事由に該当する行為であったとしても問題なく債務を減額することができます。
  他方,個人再生については,あくまでも債務を支払っていくことを前提としていますので,一定の収入が継続して得られる状況でない場合には個人再生の要件を満たさないため,認められません。

   上記のとおり,借金問題について,任意整理にて解決することができない場合には,原則としては破産手続により債務をなくすことが一番の再建につながると考えています。
したがって,破産手続きか個人再生手続きのいずれを選択すべきかという点については,原則的には,破産での解決が可能であるかを模索し,破産での解決に支障が生ずるような事情が存在する場合には,個人再生による解決を検討すべきであると考えています。

   いずれにせよ,任意整理により解決が困難な状況の場合,債権者から督促状や下手をしたら裁判所から訴状等がいつ届いてもおかしくはない状況であるため,早めに弁護士にご相談ください。

2018.03.28

各債務整理手続の特徴について~①任意整理~

各債務整理手続の特徴について~①任意整理~

<ご依頼者様からのご質問>

  債務整理に色々な方法があるのは分かったのですが,自分にとってどの方法が良いのかが全く分かりません。まずは,各債務整理手続きのメリットやデメリット,どういった場合に適した債務整理の方法があるのかについて教えてください。

<弁護士からの回答>

 借金問題で悩まれている方からのご相談を受け,状況を把握した段階で,弁護士は,自分が考える最適な整理の方法をご提案させていただくのですが,実際にどの方法により,債務整理を行うかについては,ご依頼者様自身で決めていただく必要がございます。そこで,今回から数回にかけて,各債務整理手続きの特徴(メリット・デメリット)をご説明し,どのような方にその債務整理の方法が適しているのかについてご説明させていただきます。今回は,任意整理(特定調停)の特徴についてご説明させていただきます。

  任意整理のメリットとしては,裁判所を利用せず,個々の債権者と直接弁護士が交渉するものであることから,財産の換価等の作業も行われないため,破産手続等の法的整理と比較すると短期間で解決できることや,家族に借金をしていることを知られたくないという場合には,家族に知らせることなく債務を整理することが可能です。
また,全ての債権者を対象とすることなく,特定の債権者に対する債務のみ整理するということも可能な点があげられます。具体的には,自動車のローンにおいて,自動車に所有権留保等が設定されている場合には,その債権者に対し受任通知を送ってしまうと,自動車が引き上げられてしまうため,自動車ローンについては,弁護士が入ることなく,従前通り支払い続け,それ以外の債務を整理するということが可能です。

  他方,デメリットとしては,法的整理と異なり,債権者の意思に反して債務をゼロにしたり,債務の額を減額することができず,あくまでも債権者との交渉により債権者が合意してくれた内容でしか債務を整理することはできません。過払い金等が発生している場合を除き,債務の総額を減額することはほんとんど難しく,通常,支払回数を従前の状態より長期にし,将来発生する利息をカットすることにより債務整理することがほんとです。そして,毎月の支払回数については,通常,3年間(36回払い)もしくは5年間(60回払い)程度の延長が可能となります。

  このような任意整理の特徴からすると,自動車や住宅等財産を有しており,そのような財産を手放したくない人,家族に借金が発覚することを避けたい人,毎月の返済が厳しいが,毎月の返済額が少なくなって利息がなくなれば返していくことができる人については任意整理による解決方法が適していると言えるでしょう。

  他方で,借金の総額が多く,支払い期間を延ばしたとしても返済していくことが困難な場合(目安として,借金総額を36回(3年間)で割った金額を毎月支払っていくことができない場合)には,任意整理による解決は困難である可能性が髙いため,破産などの法的整理することを検討した方が良いでしょう。

2018.03.27

債務整理のデメリットについて

債務整理のデメリットについて

<ご相談者様からのご相談>

  消費者金融数社から少しずつお金を借りており,毎月の返済についてはきついときもありますが,一度も滞納することなく支払っています。弁護士さんに任意整理を依頼すると毎月の支払額が減ると聞いたことがあります。毎月の支払いは問題なくできているのですが,支払額が減ると助かるので,任意整理を依頼しようかと思っています。

 <弁護士からの回答>

  前回ご説明した4つの債務整理については,基本的に借金で悩まれている方の問題を解決するために有効な手段であることは間違いありません。
しかし,債務整理のいずれの方法を選択したとしても,利用した時点で信用情報機関に事故情報が登録されてしまいます。
今回は,各債務整理手続それぞれのメリットデメリットをご説明する前に,債務整理共通のデメリットである信用情報の登録について弁護士がご説明させていただきます。

 お金を借りたいと思う人が新規に貸金業者に対して借り入れの申し込みをした際,貸金業者は,この人にお金を貸しても問題ないかを調べるために,信用情報機関(貸金業者の違い等により,3つの情報機関があります。)に対し,借り入れを申し込んできた人の信用情報を確認することになります。

  信用情報とは,入金予定日から支払いが遅れたことがあるか等に加え,自己破産,民事再生の申立てを行ったことがあるか,債務整理の申立てを行ったことがあるかなどの情報(いわゆる「事故情報」といいます。)も掲載されることになります。よく,「破産をするとブラックリストに載ってしまう」等ということを聞いたことがあるかもしれませんが,実際にブラックリストというものがあるわけではなく,上記の信用情報機関に,事故情報が登録されてしまうことを俗にブラックリストに載ってしまうといいます。

  事故情報が登録されてしまうと,ヤミ金等の違法が業者を除き通常の貸金業者の場合には,審査が通らずお金を貸してもらえなくなってしまいます。それだけでなく,事故情報が登録されてしまうと,住宅ローン,自動車ローンが組めなくなるだけではなく,新たにクレジットカードが作れなくなったり,携帯電話を新規に購入するときに発生する機種代金の分割払い(割賦払いといいます。)もできなくなってしまいます(ブラックリストについては,一生記録が残るわけではなく,各債務整理手続によって期間は異なりますが,債務整理が終了してから5年~10年間で消滅はします。)。

  前回,ご説明した4つの債務整理の方法については,法的整理のみならず,任意整理であっても,手続きを開始したことが,債権者に伝わった時点で,事故情報として登録されてしまいます。
  したがって,今後,住宅ローンを組む予定があったり,クレジット―カードを作りたいと考えられている場合には,弁護士に依頼して債務整理を行うことができなくないため,なんとかして,今まで通り,毎月きちんとお支払いしていく必要があります。

  もっとも,債務を返済していくために,新たに別のところから借入をしなければならない状況に陥っている場合には,多重債務の状態になっているため,遅かれ早かれ債務整理をしなければならない状況ですので,ブラックリストに載ってしまうことはやむを得ないといえるでしょう。早期に解決するためにも,いち早く弁護士にご相談ください。

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