親権とは
<ご相談者様からのご質問>
先日,妻から,離婚したいと言われ,自分もこれ以上妻とはやっていけないと考えていたため,離婚に応じることにしました。妻との間には,3歳の息子が1人いるのですが,妻は息子の親権については自分(妻)が欲しいと話しています。これまで仕事中心であったため,息子については妻が中心として育てることについては私も異論はありませんが,そもそも親権ということについてよくわかっていないので教えてください。
<弁護士からの回答>
離婚する際,夫婦の間に未成年の子がいる場合には,離婚の際に子の親権者を父か母のいずれかに指定しなければなりません。
そこで,今回は,親権の内容についてご説明させていただきます。
親権とは,成年に達しない子を監護,教育し,その財産を管理するため,その父母に与えられた身分上及び財産上の権利・義務のことをいい,未成年の子に対し親権を有している人を親権者といいます。
未成年の子どもは,未熟であり1人では生活したり,内容を理解して法律行為等を行うことが困難であるため,親権者が親権を行使し,本人の生活を支え,財産などを管理していくことになります。
親権の定義にもあるように,親権は「身上監護権」と「財産管理権」の2つに分けられます。
「身上監護権」とは,子の身分行為に関する同意権,代理権居住指定権(子どもをどこに住まわせるのかを決める権利),懲戒権(監護や教育に必要な範囲内で懲戒,しつけを行う権利),職業許可権(子が職業を営むにあたり,その許可を行う権利)などを言います。簡単にいうと,実際に子どもとともに生活し,子どもを監護養育してく権利のことをいいます。
また,「財産管理権」については文字通り子の財産を管理する権利です。子ども名義の預貯金を管理したり,子ども本人にかわって売買契約などの法律行為を行ったり,子が勝手に法律行為を行った場合には,親権者としてその法律行為を取り消すことができます。
夫婦(父母)が婚姻中の場合には,親権について,父母が共同して行うことになりますが(共同親権の原則,民法818条3項本文),日本では,離婚する際には,父または母のどちらか一方しか親権者となることができません(英国やフランス等諸外国では,離婚後も元夫婦が共同して親権を有するとしている国の方が一般的なようです。)。したがって,離婚により親権者とならなかった親には上記の「身上監護権」や「財産管理権」が認められなくなります。
したがって,離婚の際には,父と母のどちらが親権者となるかについて深刻な争いに発展するケースも少なくありません。
次回からは,離婚の際に親権者を決める際にはどのような判断要素が考慮されることになるのかについてご説明させていただきます。