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【離婚問題】養育費っていつまで払うの?

 養育費とは,「未成熟子」の養育にかかる費用であり,扶養義務を負っている両親がこれを分担することになります。もっとも,いつまで養育費を支払わなければならないかは,話し合いによって決めることが可能です。現在の主流に従えば,「子供が成年に達するまで」と決めることになりますが,例えば,両親の話し合いで「子供が18歳になるまで」であるとか「子供が30歳になるまで」のように20歳を基準としないことも可能です。
 しかし,話し合いがまとまらないこともあるでしょう。その場合は,いつまで養育費を支払わなければならないのでしょうか?今回は,養育費をいつまで支払わなければならないのかについてお話ししたいと思います。

1 養育費ってどうやって決めるの?

 養育費の対象となる子は,「未成熟子」すなわち「経済的に独立して自己の生活費を獲得すべきものとしていまだ社会的に期待されていない年齢にある者」とされています。そのため,社会に出て,収入を得ることで,自らの収入で生活できるようになれば,未成熟子と言うことは出来ません。このように,「未成熟子」と「未成年者」という概念は違いますので,必ずしも養育費は20歳まで支払わなければならない訳ではなく,未成熟子であるかは何歳までといった明確な基準で決まるわけではありません。「未成熟子」に該当するかは,父母の学歴,社会的地位,資力などの家庭環境などを考慮して個別具体的に決めることになるのです。

(1) 「大学を卒業する年の3月まで」等と決めることは出来ないの?

 現在の日本における大学進学率は50%を超えており,大学に進学することは決して珍しいことではありません。このような現状の下,子供が成人になる以前から「大学を卒業する年の3月まで」,「大学院を卒業する年の3月まで」等と決めることが出来ないのでしょうか?
 裁判所は,先程も申しましたように,父母の学歴,社会的地位,資力などの家庭環境などを考慮したうえで養育費の支払終期を判断しています。そのため,これらの事情を考慮したうえで,通常,大学卒業以上の高等教育を受ける家庭環境であると判断される場合,親に養育費等の負担をさせることが出来ると判断すると考えられます。
 裁判所においても子供の世話をしていない方の親が医師である場合や大学在学中の子供が大学を卒業することを望んでいる場合に「大学を卒業すべき年齢時まで」の養育費支払い義務を認める審判が出ています。現在では,これらの審判例よりも進んで両親が大学を卒業していたら,子供が大学を卒業するまでの養育費の支払いを認める傾向にあると言えるでしょう。
 もっとも,このように「大学を卒業する年の3月まで」の養育費の支払いが認められるとしても,「大学院を卒業する年の3月まで」と定めることは難しいと思います。大学進学については一般的になってきたと言えるとしても,いまだ大学院への進学は決して一般的なものとは言えないからです。
ただ,先程申しました事情に加えて,大学院進学に対する親の意向や考え方によっては認められる余地もありますので,一度話し合いをしてもいいかもしれません。

2 20歳までと合意したら20歳まで支払えばいいの?

既に養育費の支払終期を「子供が成年に達する月まで」と決めていたとしても,必ずしも支払終期がその時までと言う訳ではありません。事後的に事情が変更された場合,養育費の支払時期の延長を求めることが出来るからです。
では,どのような事情があれば支払終期を変更することが出来るのでしょうか?

(1) 20歳以上まで支払わなければならない場合

 養育費は,「経済的に独立して自己の生活費を獲得すべきものとしていまだ社会的に期待されていない」年齢にある者に対して支払われるものです。そのため,例えば,病気等によって20歳を超えても働くことが出来ないような場合,20歳を超えたからとして養育費を支払わなくてもいいのでしょうか?
 このような場合に20歳になったからと言って養育費を支払わなくていいというのは酷な気がします。そのため,年齢としては経済的に独立して自己の生活費を獲得すべきと言えるとしても,病気などによって20歳を超えても働くことが出来ない場合,法律上の「未成熟子」であるとして養育費の支払いを受けることが出来ると判断した審判例もございます。
 また,子供が大学在学中であって大学卒業の意思が強い場合などであれば,養育費の支払時期を大学卒業時までと延長することが可能な場合もあります。

(2) 20歳未満でも支払わなくていい場合

 逆に,養育費を20歳未満でも支払わなくて良くなる場合はあるでしょうか?
まず,中学校卒業後にすぐに働き始めた場合を考えてみましょう。
このような場合であれば,子供は既に独立した経済力を持ち,社会的に独立していると言うことが出来ますので,「未成熟子」に該当しません。このことは,高校を中退して働き始めた場合であっても同様です。つまり,未成年であっても働いている場合であれば,20歳未満であっても,養育費を支払わなくていい場合もあります。
 また,中学校卒業後,高校に進学せずに何もしていない場合であったり,高校に進学しても中退し何もしていない場合であったりしても,社会に出て働くことが期待されているのですから,「未成熟子」と評価できない場合もあります。
 以上のような場合であれば,養育費を支払わなくて良くなる場合もあり得ます。なお,義務教育の間は,子供が学校に通っていないとしても,「未成熟子」として養育費を支払わなければなりません。

2 まとめ

いかがでしたでしょうか?今回は養育費の支払終期に関することについてお話しさせて頂きました。両親が大学を卒業している場合でしたら,最終的に大学卒業時までの養育費を支払うことになるケースが多いかと思います。
もっとも,養育費を決定するにあたって,金額については皆さん注意するのですが,支払終期は先の話になるのであまり気にしない人が多いように感じます。しかし,養育費の支払終期が20歳か大学卒業時の22歳になるかで総額は百万円単位で変わってくることになりますので,養育費をいつまで支払わなければならないかは慎重に決定する必要があります。
適正な養育費の支払終期を判断するのは容易ではないと思います。そのため,離婚事件の経験豊富な弁護士に一度相談してみてください。