弁護士コラム

2017.08.05

【離婚問題】財産分与ってどんな財産を分けるの?

離婚をする際に財産を分けるみたいだけど,財産分与の対象となる財産ってどこからどこまでを言うの?婚姻前にコツコツ貯めた私名義の貯金は?婚姻してから購入した二人の家は?夫が将来もらう退職金は?財産を分けるにあたっては,どのようなものが分けるべき財産であるかを確定することが重要になってきます。財産分与の対象になる財産をちゃんと把握していなければ,後になって後悔してしまうこともあります。そこで,今回は,離婚する際にどんな財産を分けることになるのか,お話しさせて頂きたいと思います。

1 財産分与の対象財産ってどんなもの?

 財産分与の対象になるのは,「婚姻期間中にその協力によって得た財産」です(民法768条3項)。もっとも,婚姻関係が継続していたとしても,別居後は夫婦が協力して得た財産とは言えないから,財産分与の対象となる財産は,原則として「別居時」を基準に確定されます。そのため,離婚前であっても,別居後に取得された財産については,財産分与の対象にはならないと考えられています。
そこで,夫婦が婚姻してから別居するまでの間に協力して築いた全ての財産が財産分与の対象になると考えられています。
 例えば,婚姻前に自分で貯めていた貯金は,通常,財産分与の対象にならず,婚姻後に購入した不動産や自動車などは財産分与の対象になります。不動産や自動車の名義は夫婦いずれか一方の名義になっている場合が多いと思いますが,実質的に夫婦で築いた共有財産と判断できれば,名義を問わず財産分与の対象になります。なお,夫婦が保有する財産のうち,婚姻中に取得された財産は,共有財産であることが推定されます。
 また,婚姻前に自分で貯めていた貯金であっても,婚姻後に夫婦が協力したことによって価値が維持されている場合や,価値が増加したしたことに夫婦の貢献が認められる場合には,貢献度の割合に応じて財産分与の対象とされる場合もあります。

2 財産ごとに具体的に見てみよう!

 では,実際にどのような財産が財産分与の対象になり,又は財産分与の対象にならないのでしょうか?

(1) 財産分与の対象になる財産

 財産分与の対象になるのは,先程も申しましたように,夫婦が婚姻してから別居するまでの間に協力して築いた全ての財産ですので,この期間に夫婦が協力して築き上げた財産のうち,以下のようなものが財産分与の対象になります。

ア 現金,預貯金
現金やへそくり,銀行に預けている預金は,財産分与の対象となります。

イ 不動産・車両
次に土地や建物といった不動産や自動車についても財産分与の対象となります。なお,先程も申しましたように,不動産・自動車の名義が離婚相手の名義になっていたとしても,財産分与の対象となります。

ウ 有価証券
 株券や社債などの有価証券も,財産分与の対象になります。

エ 家具・家電
ベッドやタンス,テレビ,冷蔵庫などの家具・家電についても,財産分与の対象となります。

オ 年金
厚生年金,共済年金などの年金についても財産分与の対象となります。年金を分ける際には,年金分割制度というものがございますので,この制度を利用する必要があります。この制度の概略につきましては,年金事務所に問い合わせることをお勧め致します。

カ 退職金
退職金が既に支給されている場合であれば,財産分与の対象になると考えられています。実際にこれを認めた裁判例もございます。
問題になるのは,離婚時にいまだ退職金が支給されていない場合です。退職金は在職中の労働の対価という性格に鑑み,将来支払われるべきであろう退職金についても,勤務期間に占める婚姻期間の比率を乗じた額を財産分与として認めるべきという考え方が有力ではありますが,定説がある訳ではなく,個別具体的に判断されているのが実情です。
将来支給される予定の退職金がある場合には弁護士に相談することをお勧め致します。

(2) 借金は財産分与の際にどう取り扱うの?

借金であっても,場合によっては財産分与の対象になることがあります。では,例えば,夫がパチンコのために借金をしていた場合,その借金は,財産分与の対象になるのでしょうか。
夫婦の共同生活を営むために生じた借金であれば,財産分与の対象となりますが,専ら自分のために借り入れた個人的な借金は,財産分与において考慮されないと考えられています。パチンコのために借入をした借金は,通常,専ら自分のためになされたものでしょうから財産分与においては考慮する必要はないでしょう。
もっとも,実際は,夫婦のプラスの資産からマイナスの資産を差し引いてプラスの資産がマイナスの資産を上回る場合に,その合計のプラスの財産からマイナスの財産を差し引いた残額を分与するという処理がされるのが一般的です。
 なお,住宅ローンが残っている不動産についてもそれだけで当該不動産が財産分与の対象にならない訳ではありませんので,お悩みの際は弁護士に相談するようにしましょう。

(3) 財産分与の対象とならないもの

一方で,財産分与の対象とならない代表的なものは以下の通りです。

・婚姻前に個人的に貯めていたお金
・婚姻時の嫁入り道具
・婚姻前,婚姻後を問わず相続した自分の親の財産
・洋服や靴など個人的な持ち物
・ギャンブルのためにした借金

3 まとめ

 いかがでしたでしょうか?今回は財産分与の対象にどんな財産がなるのかについてお話しさせて頂きました。財産分与の対象にどのような財産が含まれるかについては,住宅ローンが残っている場合や将来の退職金についてなど専門知識が無ければ到底対応できない複雑な問題がございます。また,当事者のみで取り決めをすると財産分与の対象財産に漏れがあったり,その計算方法を間違ってしまったりということもあります。また,住宅ローンが残っている場合,財産分与に伴ってローンの借り換えが必要な場合もありますので,金融機関の紹介ができる弁護士の方がスムーズでしょう。
 そのため,これはどうするのだろう?と思うような財産がある場合や財産分与の対象となる財産が多い場合,離婚事件について経験豊富な弁護士に依頼することをお勧めします。

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