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【離婚問題】外国人の夫(妻)と離婚することになったらどんな風に進めたらいいの?

 国際結婚はピークであった2006年の約4万4,701組から減ってはいますが,2015年時点の時点でも2万976組ものカップルが国際結婚をしています(平成27年 人口動態調査より)。一方で離婚した国際結婚の夫婦の数は,1万3,675組にのぼっています。国際結婚も日本人同士の夫婦における結婚の場合よりも複雑ですが,離婚の場合はもっと複雑です。しかも,離婚の場合は婚姻の場合よりも非常に大きな精神的負担となります。そこで,今回は,外国人との離婚でお悩みの方の負担を少しでも減らせるように国際離婚の場合の手続きや注意点についてお話しさせて頂きたいと思います。以下では,日本人との婚姻数の多い中国・台湾,韓国に焦点を当ててお話し致します。

1 離婚手続の進め方

 まず,知っておいてもらいたいのは,日本では,裁判所を介さず夫婦間で話し合って離婚届を役所に届ければよい協議離婚が認められていますが,諸外国において協議離婚が認められているのは中国,韓国などに限られるということです。
 夫婦の常居住地が日本にある場合ですと,日本法が適用されることになりますので,例えば協議離婚を選択することも可能であり,日本では効力を生じます。しかし,夫婦のうち外国人配偶者の本国でも有効な離婚として承認されるかは,それぞれの本国法によることになります。
そこで,日本で外国人の夫(妻)と離婚することになったら,日本の法律に基づく離婚手続きと,外国人パートナーの国籍国の法律に基づく離婚手続きと2つの手続きを進めていく必要があるため,相手方の国法に基づいた裁判上の手続きをよく理解する必要があります。各国の制度概要を中国・台湾,韓国の順に見て行きましょう。

(2)国別にみる手続き

ア 中国人・台湾人との離婚の場合
中国・台湾ではいずれの国においても協議離婚が認められています(中国婚姻法31条,中華民国民法1049条)。そのため,中国人・台湾人の方と国際離婚をする場合,協議離婚をすることは可能です。
もっとも,中国では調停離婚が認められていますが,台湾では日本の調停調書が認められない場合があるので注意が必要です。そのため,台湾人の方と離婚する場合,協議離婚が望めないときは,審判離婚、裁判離婚を選択すべきでしょう。

イ 韓国人との離婚の場合
韓国でも日本と同じように協議離婚が認められています。もっとも,韓国法の場合,協議離婚の意思確認は裁判官が行うこととされていますが,日本においては「方式」の問題とされ,日本での協議離婚の成立は離婚届を提出することで足りると考えられています。
また,日本だけではなく韓国でも離婚の効力を発生させるためには,原則どおり,韓国の家庭法院で裁判官による確認を受け,韓国の役場に離婚届を提出することとなります
ちなみに,韓国においては協議離婚の場合,裁判上の離婚の場合と異なり,慰謝料等の離婚に伴う損害賠償請求を認める規定が存在しないことから,損害賠償請求はできないと考えられています。しかし,日本においては,離婚慰謝料を認めない韓国民法を適用することは公序良俗に反するとして,韓国民法の適用を排除した裁判例があるなど,韓国人との協議離婚の場合でも慰謝料を認める傾向にあると考えられます。

2 国際離婚をする際に注意しておくべきこと

(1)離婚協議書の作成

日本人同士の協議離婚でも言えることですが,協議離婚をする際には,絶対に書面で離婚協議書を作成して下さい。離婚協議書の中では,離婚することだけではなく,親権をどうするか,財産分与,慰謝料など金銭の支払いの約束についても記載して下さい。そして,金銭の支払いに関しては,「金銭を支払わなかったときは強制執行をしても構いません。」のように強制執行を受け入れる旨を記載の上,公証役場で公正証書にしておくべきです。
こういった書面を作成しておけば,裁判手続きを経ることなく,直ちに相手方の給料を差し押さえるなどの強制執行が可能になります。
もっとも,相手方が日本国外に出てしまった場合,我が国の執行管轄は外国には及びませんので,日本法に基づく強制執行はできません。現地法の手続きを踏んで強制執行手続きを申し立てることになるでしょう。

(2)金銭の支払いを求める場合は可能な限り一括請求する!

 前にお話ししたことと関わってくるのですが,長期分割にすると,相手方が日本国外に出てしまった場合,日本法に基づく強制執行ができなくなってしまいます。そのため,金銭の支払いは可能な限り,一括で請求するようにしましょう。

(3)ビザ変更の手続

日本国内において離婚が成立した場合,外国人配偶者は「日本人の配偶者等」としてビザの更新が出来なくなってしまいます。もっとも,「日本人の配偶者等」としてビザを更新出来なくなってしまったとしても,更新までは日本を出て行かなくても大丈夫ですし,他のビザ,例えば「定住者」や就業ビザなどに変更することも可能です。

3 まとめ

今回は,国際離婚の手続きや注意点についてご説明させて頂きました。ピークに比べれば,国際婚姻の熱は冷めつつあるものの,社会の国際化が発達していくにつれ国際婚姻の波はまたやってくることになるでしょう。
国際離婚は,日本人同士の離婚とはかなり異なっているところが多く,付け焼刃で知識を入れたとしてもかなり難しいところがあるでしょう。まだ文献の多い中国や韓国,アメリカであれば自分で対応することも可能かと思いますが,ほとんどの諸外国との関係では経験豊富な弁護士でなければ対応することは難しいと思います。
 国際離婚でお悩みの際は,離婚事件の経験豊富な弁護士にご相談下さいませ。