法律事務所へご相談にいらっしゃる外国の方には、離婚だけでなく配偶者ビザがどうなるのかについてもお悩みである方が多く見られます。
実際、日本に住む外国人の方にとってビザがなくなってしまうと生活の基盤を失う可能性があるのですから、配偶者ビザがどうなってしまうのかは重大な関心事だと思います。
そこで、今回は、離婚と配偶者ビザの関係についてお話しさせていただきます。
1 日本人の配偶者の在留資格
日本人と婚姻して日本に住んでいる外国人には、入管法2条の2、別表2に定められた「日本人の配偶者等」の在留資格が認められます。これが一般に配偶者ビザと呼ばれるものです。
この記事をご覧になっている方は、すでに配偶者ビザをお持ちだと思いますが、そうではない方のために念のためにお話ししておくと、「外国人配偶者と婚姻して、婚姻届さえ提出すれば入国管理局に申請する必要はない」と考えておられる方がいらっしゃいますが、これは誤りです。
配偶者ビザを獲得するためには、必ず入国管理局に申請をする必要がありますので、忘れずに申請するようにしましょう。
なお、配偶者ビザは偽装結婚の可能性があることから、必ず取得できる訳ではないことに注意して下さい。
以下の話は、配偶者ビザを取得していることを前提としてお話しさせていただきます。
2 離婚係争中(離婚に至っていない場合)の在留資格
(1) 在留資格取消の可能性
平成16年に入管法が改正され、配偶者の身分を有する者としての活動を継続して6か月以上行わないで在留している場合、配偶者ビザを取り消すことが出来るようになりました。
配偶者ビザが取り消されるかは、婚姻の実体を有していないかを同居の有無、別居の場合の連絡の有無及びその程度、生活費の分担の有無、別の異性との同居の有無などを総合的に考慮して判断されることになります。
もっとも、在留資格は正当な理由がある場合には取り消されません。
そして、離婚調停又は離婚訴訟中の場合は正当な理由があるとされています。
そのため、離婚係争中であれば正当な理由が認められますので、配偶者ビザが取り消されることはありません。
(2) 在留資格の更新
離婚係争中に在留期間が終了する場合、配偶者ビザの更新が不許可になる場合があります。
これは、配偶者ビザをもって日本に在留するためには、単に日本人配偶者との間に法律上有効な婚姻関係にあるだけでは足りず、当該外国人が日本において行おうとする活動が日本人の配偶者の身分を有する者としての活動に該当することを要するとされているからです。
とはいえ、同居・協力・扶助等の活動が事実上行われなくなっている場合であっても、その婚姻関係が実体を失って形骸化しているとまでは認められない場合について入管の不許可処分を取り消した裁判例や、日本人配偶者から提起された婚姻無効確認訴訟に応訴していたことが日本人の配偶者の身分を有する者としての活動に該当する可能性があるとした最高裁判決があるなど、更新が不許可になったとしても延長が認められたケースも存在します。
更新が認められなかった場合は在留資格の変更をすることになりますが、それよりもまず弁護士に相談して入管との交渉を依頼すべきでしょう。
3 離婚が成立した場合
(1) 在留資格の取消
配偶者ビザで日本に在留している外国人は、日本人配偶者と離婚した場合、14日以内に入管に対して届出をしなければなりません。
もっとも、この届出をしたからといって、すぐに日本から出て行かなければならない訳ではなく、在留期間のうちは日本に在留することが可能です。
(2) 在留資格の変更
日本人の配偶者と離婚し、配偶者ビザが取り消された場合や取り消されなかったとしても在留期間が終了する場合、以後は配偶者ビザの更新は出来ませんので、日本に住み続けるためには在留資格の変更が必要です。
可能性としては、①「定住者」ビザへ変更する方法、②就労ビザへ変更する方法などがあり得ます。
例えば、日本での在留期間が相当長期間の場合であれば、永住者あるいは「定住者」への変更が認められる可能性があります。
また、元夫との間に未成年・未婚の子供がいて、離婚後その子を引き取って育てる場合、その親子関係、当該外国人が当該実子の親権者であること、現に当該実子を養育、監護していることが確認できれば、「定住者」(1年)への在留資格の変更が認められます。
このように、一定の要件を満たせば離婚した後であっても、日本に在留し続けることが可能です。
4 まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は、離婚と配偶者ビザについてお話しさせていただきました。
外国人の方の離婚では、離婚そのものだけではなく、それに付随する在留資格のような行政分野も問題になってきます。
そして、離婚もそうですが、在留資格が争われたときに貴方の代理人として活動できるのは、渉外離婚の経験が豊富な弁護士だけです。
もっとも、弁護士であっても、渉外離婚事件の経験が少ないと満足のいく解決を得られない可能性もあります。
そのため、外国人の方で離婚・ビザでお悩みの方は離婚事件について経験豊富な弁護士にご相談すると解決の糸口が見えてくるかもしれません。