弁護士コラム

2017.08.23

【婚姻問題】入籍しないとダメ?婚姻以外の男女の在り方

○入籍しないとダメ?婚姻以外の男女の在り方

現代日本には,婚姻だけでなく,様々な男女の関係があり得ます。婚約,内縁,事実婚…。言葉だけは聞いたことがあっても,その内容まではご存じでない方が多いのではありませんか? 今回は,そんな様々な男女関係についてお話していきたいと思います。

1 婚姻ってなあに?

 「婚姻」という言葉は,日常的にはなじみが薄いかもしれません。婚姻とは,日常用語で言うところの「結婚」と同じだと思っていただいて構いません(厳密にいうと,婚姻の方が結婚よりも広い概念になります。)。
 では,婚姻とはどのような要件を満たせば成立するのでしょうか?
我が国では,①夫婦共同生活を営む意思(以下,「婚姻意思」といいます。)を持っているだけでなく,②役所に対して婚姻届を提出することによって,法律上の婚姻をする意思を確認するという届出婚主義が採用されています。
そのため,婚姻が成立するためには,婚姻意思だけでなく,婚姻届の提出が必要になります。なお,婚姻には,ほかにも婚姻障害の不存在(再婚禁止期間内でないことや婚姻できる年齢であることなどがこれにあたります。詳しくは○○でお話ししたいと思います。)も必要となります。
このように,法律で定められた方式を踏むことが必要とされていることから,我が国では法律婚主義が採用されているといえます。これに対して,後述する婚約,内縁,事実婚といったものは法律に規定されていません。したがって,法律上,明文で認められているのは,婚姻のみということになります。それでは,その他の男女関係に何らの法的保護も認められないのでしょうか?

2 婚約ってなあに?

 婚約という言葉は,日常会話でも耳にしますよね。婚約とは,将来婚姻をしようという当事者間の約束をいいます。つまり,日常的に使う婚約という言葉通りの意味であると思っていただいて大丈夫です。
 もっとも,婚約が成立しているかの判断は,プロポーズの有無だけでなく,婚約指輪の授受・婚姻式場の下見・両親への挨拶・結納式の実施等,様々な事情を総合して決定するので判断が難しいかもしれません。
 婚約は,婚姻の前段階にあることから,婚約の不当破棄について損害賠償請求をすることも可能です。また,婚約については他にも結納関係なども問題になることもありますが,それについては別の記事で詳しく述べたいと思います。

3 内縁ってなあに?

 「内縁の妻」といった言葉を聞いたことはありませんか?長年同棲しているカップルに対して用いられたりしますよね。

(1) 内縁とは?

 内縁とは,婚姻する意思をもって生活を営み,社会的には夫婦と同視して良いにもかかわらず,婚姻届を提出していないため,法的には夫婦と認められない場合を指します。
ここで,内縁関係にあるといえるかは,夫婦共同生活の実態とその継続性,性的関係の継続性,妊娠しているか否か,家族や第三者への紹介,見合い・結納,挙式など慣習上の婚姻儀礼の有無などから判断することになります。そのため,具体的な事案をみてみないとわかりませんが,ただ長年同棲しているだけというのでは内縁の妻ということは難しいかもしれません(なお,内縁関係というものは,争われる場面によって求められる度合いが異なりますので,必ず専門家に相談をしましょう。)

(2) 法的保護

 もし仮に内縁が成立するとしたらどんな法的保護が認められるのでしょうか?
 内縁は,婚姻届を提出していないので法律上の婚姻ということはできませんが,お互いの意思に着目すれば,婚姻と差はないのですから,婚姻に準ずる関係ということができます。そのため,婚姻関係とすべて同じとまではいえませんが,様々な法的保護を受けることができます。
 具体的には,内縁関係を不当に破棄されたことに対する慰謝料請求権,内縁関係の終了に伴う財産分与,内縁関係にある者が死亡した際の居住権の保護といったものがあります。

4 事実婚ってなあに?

 最近,男女の関係で増加しているのがいわゆる事実婚というものです。
 事実婚とは,法律的には,内縁と同義といえるのですが,婚姻に対する考え方に違いがあると言われています。事実婚は,内縁と異なり,意識的に結婚に伴う義務(たとえば夫婦同姓など)を避けるため,意識的に婚姻届を提出していない関係を意味します。
 基本的に事実婚に対する保護は,内縁関係とほぼ同じですが,子供の性や戸籍,遺族年金など,制度的な問題点に直面することがあり得ます。

5 まとめ

以上のとおり,婚姻届を提出していない状況では,その男女関係がどのような法的保護を受けられるか,判断が極めて難しいものです。これは専門家に相談をしても判断が分かれるでしょう。そのため,正確な見通しを立てるには,多数の解決事例に基づいたノウハウが必要不可欠ですので,必ず経験豊富な専門家に相談するよう心掛けてください。

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