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【離婚問題】遺産分割後に新たな相続人が出てきた!どうすれば良い?

遺産分割後に新たな相続人が出てきた!どうすれば良い?

<相談内容>
父が亡くなり,相続人は私と妹です。私たち二人での遺産分割協議も無事終わり,相続登記も完了しました。ところが,その後,父の子と称する人が現れ,父の子であることを認知する旨の判決が出ました。その人は「私も相続人なので遺産分割協議に参加させて下さい。」と言ってきました。既に終えた遺産分割協議をやり直さなければならないのでしょうか。

 遺産分割は,相続人全員で行わなければなりません。しかし,遺産分割を終えた後に新たな相続人が現れるというケースがあります。今回は,そのような場合,遺産分割はどう扱われるかという点についてご説明していきます。

1 原則

 遺産分割協議は,共同相続人全員の合意に基づき行わなければなりません。もし一部の相続人を除外して遺産分割をしてしまった場合には,無効となります。そのため,遺産分割協議にあたっては,被相続人の戸籍を出生から死亡まで収集し,調査をして,相続人を正確に把握することが不可欠です。戸籍を調べて初めて「実は父は再婚で,前妻との間に子がいた」という事実を知るケースはよく見られます。この場合,前妻との間の子も含め遺産分割協議をしなければ無効となってしまうため,注意が必要です。相続人の一部の者の所在が不明な場合には,不在者財産管理人を選任し,遺産分割手続を進めることになります。

2 遺産分割後に新たな相続人が判明するケース

⑴ 死後認知

 冒頭の相談事例のように,被相続人の死後に認知がなされる場合があります。
認知は出生のときに遡ってその効力が生じるため,遺産分割後に認知された者も相続開始のときに相続人であったということになります。しかし,この認知の遡及効は,第三者が既に取得した権利を害することができないとされています。そのため,遺産分割後に認知され相続人となった者は,遺産分割の無効を主張することはできません。そこで,このような相続人の権利を保護するために,遺産分割が終了した後に認知された者については,価額請求の方法による救済が規定(民法910条)されています。
上記の事例では,相談者と妹は,死後認知された人に対し,遺産のうち法定相続分(被相続人の子が3人なので,3分の1)に対応する価額を支払うことになるでしょう。遺産分割協議をやり直す必要はありません。
なお,これは死後認知の場合です。生前に認知されていた者に気付かず遺産分割協議をしてしまった場合には,無効となってしまうため気を付けてください。

⑵ 母子関係存在確認の裁判が確定した場合

Aさんの母が亡くなり,相続人はAさんと弟です。遺産分割協議の結果,Aさんが母のマンションを取得し,その後第三者に売却しました。しかし母には他の夫婦の子として出生届がなされた子Bさんがおり,訴訟で母子関係の存在が確認されました。Aさんと弟が行った遺産分割協議の効力はどうなるでしょうか。
 遺産分割後に母子関係存在確認訴訟によって母子関係が認められた場合は,死後認知の価額請求の規定は類推適用されません。なぜなら,父子関係は認知によって形成されますが,母子関係は母の認知等は不要で,分娩の事実により当然に発生するところに違いがあるからです。

 そのため,遺産分割後に母子関係が認められた者がいる場合,遺産分割は無効となり,新たに判明した相続人も含め遺産分割手続を行わなければなりません。
 今回の事例でも,Aさんと弟が行った遺産分割協議は無効となり,Bさんも含め3人で遺産分割を行う必要があります。これは,遺産が第三者にわたっている場合でも変わりありません。Bさんは,Aさんがマンションを売却した第三者に対し,自己の相続持分を主張するか,マンションの売買契約を認めた上で,Aさんに対し不当利得返還請求をすることになると考えられます。また,マンションを譲り受けた第三者は,Bさんから相続持分を主張された結果,Aさんとの売買契約を解除し,Aさんに損害賠償請求をする可能性もあります。

3 まとめ

 今回は,遺産分割後に新たな相続人が出現した場合についてご説明しました。
 遺産分割をするにあたって,まず不可欠なのが,被相続人の戸籍を調べることです。現状で把握している相続人以外に相続分を有する人がいないか,きちんと確認することが重要です。ご自身で調べることに不安がある場合には,弁護士に相続人調査を依頼することも可能です。

 また,遺産分割時に判明している相続人全員で協議を行った場合でも,今回ご説明したように後から相続人が出現する可能性もあります。遺産分割が終了し,遺産を第三者に売買してしまったケースなどでは権利関係が複雑になります。新たな相続人が出現した場合には,なるべく早急に弁護士に相談しましょう。遺産分割協議をやり直すことになっても,交渉次第では揉めないで済むこともあります。ご自身で手続を進めることなく,交渉のプロである弁護士に依頼することをお勧めします。