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個人再生手続で決まった再生計画の履行が難しくなりました。どうすればいいでしょうか?

個人再生手続で決まった再生計画の履行が難しくなりました。どうすればいいでしょうか?

【Aさんの相談】
私は、1年前に弁護士さんに依頼し、小規模個人再生手続を利用して債務整理を行いました。現在も、そのときに決まった弁済期間3年の再生計画に基づいて債務の弁済を継続しています。しかし、3か月前に追突事故に遭い、怪我の影響で仕事を続けることができなくなり、先日退職となりました。現在、新しい仕事を探していますがまだ見つかっておらず、このままでは再生計画で決めた債務の弁済が難しくなりそうです。この場合、一度決まった再生計画の内容を変更してもらうことはできるのでしょうか。

 個人再生手続は、返済計画を原則として3年以内としており、長期の計画になることが多いため、再生計画遂行中に事情が変わり、返済困難な事態に陥ることも少なくありません。そのため、民事再生法は、再生計画の変更やハードシップ免責の制度を設け、一定の場合には債務の返済計画の変更や残債務免除を認めています。そこで、今回は、これらの制度について福岡の弁護士がご説明していきたいと思います。

1 再生計画の変更

 再生計画で決まった内容については、計画通り弁済していくことが原則です。しかし、再生計画の認可決定があった後、やむを得ない事由で再生計画を遂行することが著しく困難となった場合に限り、再生計画の内容を遂行可能なものに変更すること(再生計画の変更)が認められます(民再234条1項)。ここでいう「やむ得ない事由」とは、当初の再生計画の認可時にそのような事情が予想されていれば計画の内容が異なっていたのであろうと思われるような客観的事由であることを要します。
 なお、変更といっても、既に成立した再生計画の返済総額を変更することはできず、弁済期間の延長のみ可能です。(延長により毎回の弁済額が減ることになります。)延長期間は2年が上限となっており、それ以上の延長はできません。
 再生計画の変更を行うためには、債務者において変更の申立てをする必要があります。申立後は、再生計画の成立のための手続と同じ手続を踏むことになります(同条2項)。

2 ハードシップ免責

 ハードシップ免責とは、再生計画に基づいて誠実に債務返済を継続し、大半を返済し終えた状態で、債務者の帰責事由なく再生計画の履行が極めて困難になった場合に、裁判所が、債権者の意見を聞いた上で、債務残額の免責を認める制度です。適用要件は以下の3つです。
【 要件 】
①再生債務者の責めに帰することができない事由により、再生計画の遂行が極めて困難になったこと
※「極めて困難」とは、再生計画変更の要件である「著しく困難」よりも困難の度合いが高いものをいうため、再生計画の変更手続で足りる場合は、要件を満たしません。
②免責決定することが再生債権者の一般の利益に反するものでないこと
※破産手続に移行して配当を受ける方が債権者にとって利益がある場合には、免責決定することは再生債権者の一般の利益に反するため、この要件を欠きます。
③計画弁済を要する各再生債権について4分の3以上の額の弁済を終えていること
【 手続 】
ハードシップ免責を受けるためには、債務者がその旨の申し立てを行う必要があります。
申立てが行われると、裁判所は、債権者の意見を聞いた上で、免責又は申立て棄却の決定をします。免責の決定が確定すると、債務者は、残債務について責任を免れることになります。なお、

3 再生計画の変更もハードシップ免責も認められない場合は?

⑴ 再生計画の取消し

 再生計画の不履行は、再生計画の取消事由に該当します。そのため、債権者から再生計画取消を求める申立てがなされ、裁判所が申立てを認めた場合には、再生計画は取り消され、再生計画で変更された債務は原状に復することになります。(再生計画でカットされた元本等が復活します。)
なお、個人再生手続は、通常の民事再生手続よりも簡易な手続で再生計画を策定しているため、通常の民事再生手続と異なり、債権者は、再生計画に記載された債務に基づいて強制執行をすることはできません。

⑵ 破産手続への移行

  再生計画の取消しがなされ、その時点で破産開始原因が存在する場合は、裁判所は、職権で破産手続に手続を移行させることができるとされています。
  もっとも、実務上、裁判所が職権で破産手続に移行することは少なく、通常は、債務者の申立てにより破産手続に移行します。

4 本件の場合

 本件では、交通事故という不慮の事故により、仕事も辞めざるを得ず、返済が難しくなったということですので、やむを得ない事由で再生計画を遂行することが著しく困難になったといえ、再生計画の変更手続ができる可能性が高いでしょう。

5 まとめ

  以上の通り、再生計画認可後の事情の変更に応じて一定の場合には計画の変更や免責手続が認められます。いずれの場合も、債務者からの申立てが必要となりますので、各手続が利用可能かどうかについては、民事再生手続に詳しい専門家弁護士に相談され、手続きを依頼されることをお勧めします。