子連れ離婚に限らず、離婚にはお金の問題が絡んできます。
離婚成立前の「婚姻費用」や成立後の「慰謝料」、「財産分与」という言葉を何となく耳にしたことがある人も多いかと思います。
今回はこの3つについて詳しく見ていきましょう。
1. 慰謝料
離婚とお金と聞くと、多くの方が「慰謝料」を思い浮かべるのではないでしょうか。
では、そもそも「慰謝料」とはどういうときにもらえるお金なのでしょう?
慰謝料とは、精神的被害に対する損害賠償のことで、その被害の度合いを金銭に換算し、賠償するものです。
離婚をすると慰謝料が必ずもらえると勘違いされていることもありますが、慰謝料が発生するのは、賠償をしてもらうだけの被害があったときだけですので、必ずしもすべての離婚案件で慰謝料が認められるわけではありません。
例えば、離婚原因が「性格や価値観の不一致」などに該当する場合は、ある程度お互い合意の上での離婚になりますので、損害賠償をもらうに値する原因にはならず、慰謝料請求は難しいと考えられます。
慰謝料請求というのは、法律論で言うところだと、不法行為に基づく損害賠償請求ですので、違法性がある場合にしか認められません。そのため、「性格や価値観の不一致」などではなかなか認められないのが一般的です。
では、具体的にどのような場合であれば慰謝料請求を行えるのでしょうか?
離婚の際の慰謝料が認められるものとしては、以下の4つが代表的です。
② 悪意の遺棄があった場合
③ DVを受けた場合
④ モラルハラスメントを受けた場合
不貞行為や悪意の遺棄、DVは「認められる離婚理由と離婚方法・離婚後の手続きってどうなっているの?法定離婚事由」で述べている法的離婚事由にも該当しています。
モラルハラスメントは、相手に対して暴言を吐いたり、無視や過度な束縛を行ったりするなど、道徳を外れた行為で相手を精神的に追い詰めることをいい、精神的被害の程度によって慰謝料額が算定されます。
また、離婚が成立した後に元配偶者の不貞が発覚した場合など、離婚後であっても慰謝料請求を行うことは可能です。
ただし、離婚後の慰謝料請求には時効が存在しますので、該当する事由があったとしても慰謝料請求ができないケースもあります。
慰謝料の発生原因から3年が経過すると時効が完成し慰謝料を請求する権利が消滅してしまいますので、注意しておきましょう。
2. 婚姻費用
婚姻費用とは、夫婦の間で支払われる生活費のことで、夫婦双方の収入と未成年の子どもの人数などから算定されます。
「なんで離婚前提で別居してるのに、相手の生活費を払わないといけないの?」と思われる方も多いと思いますが、民法上、夫婦には収入の多い方がもう一方に生活費としてお金を渡すという扶養義務があり、この義務は婚姻関係が継続している限り果たさなければなりません。
民法第七百六十条 夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。
ですので、まだ離婚が成立する前であれば、たとえ別居中であっても、配偶者の生活費を分担しなければならないのです。
婚姻費用を受け取っていない場合は配偶者に対し請求ができますが、一つ注意をしておきたいのはその支払いの期間についてです。
婚姻費用の支払い義務は、請求をした日以降の分のみとなっているため、それ以前の婚姻費用については法的には支払わなくてもよいとされています。
ですので、過去にもらえるはずだった婚姻費用については、相手が任意で払ってくれなければ受け取ることは難しいといえます。
これは、裁判所での調停や審判でも同じことで、申し立てを行った時点より前の支払いが命じられることはほとんどありません。
慰謝料や次に説明する財産分与のようにさかのぼって請求することができないので、別居を始める前に取り決めて書面に残しておくとよいでしょう。
また、請求をしていたことを履歴として残しておいた方が良いでしょうから、婚姻費用を支払って欲しい旨の内容証明郵便などを早めに発送して記録化しておきましょう。
<婚姻費用と養育費>
配偶者と子どもの生活費である婚姻費用の支払い義務が生じるのは離婚前までです。
離婚が成立した段階で、婚姻費用は支払う必要がなくなりますが、新たに支払い義務が発生するものがあります。それが「養育費」です。
養育費は子どもの権利として認められており、離れて暮らす親にはこれを支払う義務があります。(なお、養育費はあくまで「子どものための」生活費ですので、元配偶者の生活費は含まれません。)
たとえ離婚で子どもと離れたとしても、親としての扶養義務は消えることはありません。
子どもの生活のためにも、離婚時は必ず養育費についても取り決めをし、万が一支払いが滞った場合に強制執行がかけられるよう、公正証書にしておくことが望ましいです。
3. 財産分与
財産分与とは、婚姻中に夫婦が協力して築いた財産を、離婚の際に2人で分け合うことを言います。
民法第七百六十八条 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
財産分与は慰謝料とは異なり、離婚原因を作った側でも請求をすることができます。
また、離婚成立後でも請求は可能ですが、離婚後2年が経過した段階で時効にかかってしまうので、その点は注意が必要です。
では、具体的にどこまでが財産分与の対象となるのでしょうか?
夫婦が所有している財産は、大きく分けて以下の2種類があります。
① 共有財産・・・結婚後に二人で得た財産
② 特有財産・・・結婚前から互いが所有していた財産
このうち財産分与の対象となるのは共有財産で、以下のようなものが例として挙げられます。
・預貯金
・自動車
・不動産
・家財道具
・生命保険・年金
・住宅ローン
「結婚後に2人の共同生活の中で」得たものは、基本的に共有財産に分類されます。
ですので、「貯金の大半は夫の稼ぎである」「住宅の名義も夫」という場合でも、これは妻の協力があっての財産であるため、共有財産として財産分与の対象になります。
ただし、住宅ローンなど夫婦が共同で作ったマイナスの財産についても共有財産として分与の対象になりますので、そこは注意が必要です。
反対に、結婚前からお互いに所有していた預貯金や親から受け継いだ財産など、一方が独自で形成した財産については夫婦が共同して築いたとはいえないので財産分与の対象にはなりません。
また、婚姻中に一方が個人的に抱えた借金に関しても同様です。
財産の分け方については、平等に1対1の割合で分与するのが一般的ですが、夫婦のどちらかのみが著しく財産を築いていた場合は、その貢献度を考慮した割合での分与になるケースもあります。
万が一、夫婦間で協議をしても話がまとまらなかった場合は、家庭裁判所を通して何をどこまで分与するかを決めることになりますが、調停や訴訟となるとご自身のみでの対応が難しくなってくる場面も多くみられます。
当事者間のみでの対応が厳しそうな場合は、早い段階で一度弁護士にご相談に行かれることをお勧めします。
4.まとめ
離婚とお金の問題は切っても切り離せません。
とりあえず離婚をしたいという点だけを優先させ、養育費や財産分与については取り決めをしていなかったことが原因で、後々揉めてしまうケースもあります。
難しい問題だからと先延ばしにせず、しっかり話し合ってから離婚を進めることが大切です。