弁護士コラム

2019.05.07

【離婚問題】離婚時に行うべき手続きについて

配偶者の方と離婚することになったとき、何を決めなければならず、どんな手続きをしなければならないかは、夫婦ごとに様々です。子供がいるかどうか、財産があるかどうか、揉めているかどうか等によってしなければならないことは大きく異なります。
以下では、その判断の前提として、一般的に必要となる手続きや決めなければならないことについて説明致します。

①離婚をするために必要なこと

まず、離婚を行う上で絶対的に必要となる手続きは離婚届の提出であり、逆に、お互いが納得して離婚届をきちんと作成し提出しさえすれば、離婚は成立します。

しかしながら、一方が離婚に同意しない、離婚条件に折り合いがつかない、となると離婚届を提出する前に協議や調停、場合によっては裁判をしなければなりません。また仮に離婚届を提出したとしても、その後一方が財産分与や慰謝料などを求めてくれば、同様に手続きをしなければいけなくなります。

②離婚の条件

ところで、そもそも離婚をするにあたって協議が必要となり得る事項についてですが、一般的には以下の通りとなります。
 ア 親権
 イ 養育費
 ウ 面会交流
 エ 財産分与
 オ 慰謝料
 カ 年金分割

このうち、親権は離婚届に記載しなければならないため離婚時点に決めておく必要がありますが、その他については後日取り決めることが可能です(ただし、慰謝料は3年、財産分与と年金分割は2年で時効により請求権が消滅してしまいます。)。
今回、これらの事項に関する具体的な説明は割愛致しますが、それぞれについて決めなければいけないケースは以下の通りです。

ア 親権

⇒お子さんがおられる場合です。ただし、お子さんが未成年の場合に限ります。お子さんが複数おられる場合、親権者を別々にすることも可能です。

イ 養育費

⇒お子さんがおられる場合です。「●円でなければならない」「●歳まででなければならない」という決まりはありません。仮に裁判所の審判に付される場合、原則として夫婦それぞれの収入を基準に金額を算出し、お子さんの就学状況や夫婦の学歴等によって終期を決定します。

金額に関しては、家庭裁判所が養育費相場について算定表を公開していますので、これを基準として決定するケースが多いです(http://www.courts.go.jp/tokyo-f/vcms_lf/santeihyo.pdf)。また、近年は大学進学率の向上に伴い、両親が大卒の家庭では、養育費も子供が大学を卒業する年の3月までと決められる家庭が多い現状にあります。

ウ 面会交流

⇒お子さんがおられる場合。こちらも決め方に決まりはありませんが、「原則として面会交流は実施されるべきである」というのが裁判所の考え方です。裁判所の審判に付される場合、具体的な頻度や時間、場所等については、夫婦やお子さんの意見、これまでの面会状況を踏まえて内容が決定されます。

一般論としては、十分に面会を実施しながらも、子供や監護親の負担も考慮して、月1日程度の面会交流を実施するケースが多いです。

エ 財産分与

⇒離婚時に財産がある場合。預貯金、自宅不動産(所有の場合)、積立型の生命保険、退職金等が一般的です。こちらも具体的な分け方、割合について決まりはありませんが、法律上「婚姻時から別居時(あるいは離婚時のいずれか早い方)までの間に形成された夫婦の財産」を対象とすることになっています。

あくまで夫婦が協力して築き上げた財産を分け合うための制度ですので、婚姻関係が続いていて、同居しながら共に生活している期間に築き上げた財産が対象となります。その中でも退職金の財産分与が問題となるケースが多く見受けられますが、退職金は必ず財産分与の対象となる訳ではありません。

退職金とは、退職時の会社の状況に応じて金額が変動する可能性もありますし、支給されない可能性すら存在します。したがって、退職金が財産分与の対象となるためには、一定程度確実に退職金が支給されるであろうケースに限られますので、ご注意ください。

オ 慰謝料

⇒離婚の原因が一方の違法な行為にある場合。こちらも「いくらでなければならない」という決まりはありません。「離婚しなければいけなくなったこと」を内容とする、いわゆる離婚慰謝料の他、「離婚とは関係なく、婚姻中に一方当事者が違法行為を行ったこと」を根拠とする慰謝料が考えられます。
前者の場合は離婚成立から、後者の場合は違法行為による損害が発生したとき(通常は、違法行為時)から3年の間に請求する必要があります。

なお、離婚の原因がいずれにあるかと、法的に慰謝料が発生するかは別問題ですので注意が必要です。法律論として慰謝料が発生するためには、一方が他方に対して不法行為を行ったと評価できないといけませんので、それなりのハードルがあります。慰謝料が発生すべきケースかどうかは、必ず専門家に相談しましょう。

カ 年金分割

⇒一方が厚生年金または共済年金に加入している場合。ただし、いわゆる「3号分割」の要件を満たせば、合意の必要はなく、分割を求める配偶者が単独で手続きできます。

この年金分割は、厚生年金部分(老齢基礎年金は含まない)のみの分割であるため、単純にもらえる年金額が夫婦で半分になるというものではありません。年金分割をするとどの程度の年金がもらえるのかは、年金事務所でシミュレーションしてくれますので、相談してみましょう。

③トラブルを防止するために

①でご説明した通り、離婚は離婚届を提出するだけで成立しますので、離婚やその条件に争いが無ければ、法律上は離婚届の作成・提出以外に手続きを行う必要はありません。しかしながら、どのようなご夫婦であっても、②記載のいずれかの条件に関し、離婚後争いが生じる恐れは存在します。

したがって、仮に円満に離婚をしようとしておられる夫婦であっても、離婚協議書を作成し、離婚後にトラブルが生じないよう予防しておく必要があるといえます。「揉めないから作らない」のではなく、「円満に離婚するために作る」のです。

離婚協議書の形式に関して法律上の決まりはありませんが、仮に相手方配偶者から何らかの金銭給付(養育費、財産分与等)を受けられる場合には、給付がなされなかった場合に備えて公正証書の形式で作成されるのがベストです。

これは、公正証書で作成していなかった場合、別途裁判をしなければ相手方の財産を差し押さえることができないためです。公正証書で作成し、執行認諾文言というものを付していれば、万が一支払いがなされないときは即座に給与の差押え等を行うことができますので、ぜひご活用ください。

また、作成される際には、内容を明確に、他の解釈を許さない文言で記載し、後日漏れが発覚した場合に備えて「その他一切の債権債務が無いことを確認する」旨のいわゆる清算条項を設ける必要があるでしょう。

④まとめ

以上、離婚手続きと離婚条件の概要と、トラブル防止策についてご説明致しました。
これらを十分踏まえて手続きを行って頂ければ問題ありませんが、冒頭に述べた通り、具体的に行うべき手続、取り決めなければならない内容は個々のケースによって異なり、協議書の記載方法等についてもそれに応じて慎重に検討する必要があります。

これらを専門的に学んでいない方が対応するのは相当に困難でしょうから、やはり専門家に相談しながら、幸せな未来に向けて十分な準備を行うよう心掛けてみられてください。

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