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ハンコの持つ効力と役割

前回、「ハンコ」の種類と特徴についてお話しましたが、今回は「ハンコ」の持つ効力と役割についてお話したいと思います。

前回の記事を読むにはこちらから→「ハンコの種類と特徴

1. ハンコの持つ効力

個人が使うハンコには主に実印、銀行印、認印、シャチハタがあり、会社が使うハンコには主に代表社印、社印、割印があると前回お話しましたが、これらの効力はどのようになっているのでしょうか?

そもそもハンコには、ハンコの持ち主が契約書などの書類の内容を理解して、持ち主本人の意思でハンコを押したと思わせる力があります。これに加えて、それぞれ違った大きさの力を持っているのです。

例えば、借主の欄に自分の名前が書かれた、5000万円の借用書が3枚あったとして、それぞれに実印、銀行印、認印が押してあるとします。この場合、どの借用書が1番効力を持っているのでしょうか?
もちろん、実印が押された借用書です。実印は、他のハンコとは違い、印鑑登録を行うにも本人確認が必要であり、法律上、社会上の権利や義務の発生を伴う重要なハンコのため1番効力があるといえます。

一方、認印は大量生産され、100円ショップなどでも簡単に手に入れることができるもののため、本人ではない誰かが,自分で認印を準備して勝手に押したという可能性も考えられます。ですので、1番効力を持っているとは言えないのです。

2. ハンコの持つ役割

では次に、ハンコの持つ役割についてです。ハンコは、契約をするときに押すだけで
なく、様々な使い方をすることができます。以下に、使い方の例を挙げていきます。

(1)契印

2枚以上にわたる文書があるときに、その文書の境目のページに押した印影のことを言います。

意味:文書が勝手に追加されたり、差し替えられたりしていないもので、そのつながりが真正であることを証明します。法的な力はなく、契印があってもなくても文書としての効果に違いはありません。

(2)訂正印

文書に記載した文字や言葉を書き直したり、書き加えたり、削除したりしたいときに訂正部分に押すハンコになります。契約書などの書類の注釈のところに、「間違えた場合は該当部分に二重線を引いたうえで、訂正印を押してください。」という旨の記載が書かれているのを見たことがある方も多いと思います。

意味:訂正印を押すことで、その訂正が勝手に行われたものでないという証明になります。そのため、訂正印は、文書の最後に押したハンコと同じものを使う必要があります。最後の方で間違えてしまうと、修正液や修正テープを使いたくなりますが、訂正印を押して修正を行わなければなりません。

(3)捨印

文書の余白部分に押された印影のことを言います。この印影も、文書の最後に押されたものと同じものである必要があります。

意味:捨印があることで、文書の交付を受けた人に対し、捨印を押した人の了解を得なくても、ある程度まで文書の内容を訂正して良いという権限を与えるということを意味します。
ですが、捨印が押してあるからと言って、契約書の重要な部分まで訂正することはできませんので、注意してください。

(4)消印

収入印紙や切手、はがきなどの文書に使用済みのしるしとして押された印影のことを言います。
押す場所について、特に決まりはありませんが、角に押すことが多いようです。また、ハンコについてもその文書の最後に押されたものと同じものを使うことが多いようですが、違うハンコを使ったとしても効力に変わりはありません。

意味:はがきや切手が再利用されることを防ぎます。

3. ハンコをきれいに押すことができなかったときはどうする?

1と2で、ハンコの持つ効力と役割についてお話しましたが、実際にハンコを押す場面になったとき、斜めになってしまったり、印影が薄くなってしまったりした経験はありませんか?

せっかく大きな契約をとったのに、契約書に押したハンコが滲んでいたり、薄くついてしまったりしていたら、契約書が無意味なものになってしまうのではないかと不安になりますよね。ですが安心してください。押したハンコが薄くても、上下逆さまになっていても、契約が無効になることはありません。なぜなら、契約書は契約の存在を証明する重要な客観的証拠ではありますが、契約自体は当事者双方の合意により有効に成立するからです。

では、なぜわざわざハンコを押すのか。それは、合意があったことを形に残すものである契約書の価値を高めるためです。ですので、印影さえあればハンコがきれいに押されているかなんて関係ないのです。

4. まとめ

今回は、ハンコの持つ効力、役割、そしてハンコをきれいに押すことができなかった場合はどうなるのかについてお話しました。
ハンコは、大事な書類の最後に押すだけでなく、様々な使い方、意味があること、また、きれいにまっすぐ押さないといけないと思いがちですが、意外とそんなことはないということも分かっていただけたかと思います。
この記事を読んだ後、ハンコを押す機会があれば、ぜひ今回知ったことを生かしてみて下さい。