会社で何か高額な買い物をしたときなど、領収書に切手によく似た「収入印紙」というものが貼ってあるのを見たことがありませんか?
普段の生活では、この「収入印紙」を中々目にすることがないかもしれませんが、契約書に貼り付けることもありますので、この記事を読んで、いざという時に役立ててください。
1.収入印紙とは
そもそも、収入印紙とは何なのでしょうか?言葉だけなら聞いたことがある、初めて聞いた、使ったことがあるなど、人によって様々だと思います。
収入印紙とは、印紙税等の租税を収めるために使用される証票のことをいいます。国税のひとつに印紙税というものがありますが、課される金額は、取引の金額や、書類によって異なります。印紙税を収める流れとしては、郵便局や市役所、コンビニ、法務局などで収入印紙を購入し、それを書類に貼り付けて、消印をすることによって税金を納めたことになります。
では、収入印紙を貼らなければならない書類にはどのようなものがあるのでしょうか?
まず、代表的なものとして領収書があります。5万円以上の金額が記載されている場合には、その金額に応じた収入印紙を貼り付けなければなりません。なお、この5万円は本体価格を指します。
例えば、領収書に「5万1,840円」と記載があったとしても、本体価格4万8,000円、消費税3,140円の場合には課税対象ではないため、収入印紙は不要となります。ただし、この場合は領収金額のうち、いくらが本体価格なのか、いくらが消費税なのかを明記する必要があります。
2つ目は契約書です。請負、不動産、消費貸借、信託などに関する契約書は、契約書の種類ごとに、契約書に記載された金額に応じて支払うべき印紙税が異なってきます。ですので、収入印紙を貼付する場合には注意が必要です。
3つ目は、約束手形、為替手形です。これも、領収書や契約書と同じく、金額に応じて収入印紙を貼り付けて、印紙税を収めます。
2.英文の契約書だった場合はどうする?
最近では、海外の会社と契約を結んだり、海外に進出したりする会社も増えて来ましたよね。1.で、契約書にはその種類及び契約書記載の金額に応じて収入印紙を貼らなければならないとお話しましたが、日本と海外で結んだ英文の契約書の場合も、収入印紙は必要なのでしょうか?
これについては、「契約書が作成された場所によって変わってくる」が答えになります。日本の法律で、印紙税が適用されるのは日本国内のみと定められているため、仮に契約書が作成された場所が海外だとすると、収入印紙を貼る必要はないのです。
それでは、印紙税を貼るべき契約書(以下「課税文書」といいます)の成立時期はいつなのでしょうか?ここで、印紙税法の課税文書の作成とは、単なる課税文書の調製行為をいうのではなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これをその文書の目的に従って行使することをいいます。
そのため、課税文書の成立時期としては、相手方に交付する目的で作成する課税文書(例えば、株券、手形、受取書など)は、その交付の時になりますし、契約書のように当事者の意思の合致を証明する目的で作成する課税文書は、その意思の合致を証明する時になります。
例えば、日本のA社、カナダのB社が契約を結ぼうとしているとします。まず、A社が日本で契約書を2通作成、署名押印し、それをカナダのB社に送りました。カナダのB社は、日本のA社から送られてきた契約書に署名押印し、1通を日本のA社に返送しました。こうして契約書が作成された場合、返送されてきた契約書、つまりA社が日本で保管しておかなければならない契約書に収入印紙の貼り付けは必要なのでしょうか?
この場合、A社が署名押印した段階では、契約当事者の意思の合致を証明することにはなりません。契約当事者の残りのB社が署名等するときに課税文書が作成されたことになり、その作成場所は日本国外ですから、結局、この契約書には印紙税法の適用はないことになります。したがって、収入印紙を貼る必要はありません。
逆に、カナダのB社が契約書を2通作成、署名押印し、それを日本のA社に送ります。日本のA社はB社から送られて来た契約書2通に署名押印し、1通をカナダのB社に返送し、B社はその1通を自社で保管します。
この場合、契約当事者の意思の合致を証明する時は、A社が契約書に署名等したときであり、この時に課税文書が作成されたことになるため、収入印紙の貼り付けが必要となるのです。また、収入印紙の貼り付けは、日本のA社で保管する1通だけでなく、カナダのB社で保管する契約書分についても必要となります。
3.収入印紙を貼り忘れてしまったとき
例えば、領収書に本体価格5万円以上の金額が記載されているときには、収入印紙を貼り付けることが必要だとお話しましたが、もしこの収入印紙の貼り付けを忘れていた場合、どうなってしまうのでしょうか?
仮に、収入印紙の貼り付けが必要な領収書や契約書に、印紙を貼り付けることを忘れてしまったとしても、領収書や契約書そのものが無効になることはありません。例えば、契約書の場合ですと、契約は双方の合意があれば有効なものとなり、契約書はその合意を形に残したものにすぎません。ですので、「収入印紙を貼り忘れたから契約が無効になるのではないか」、という心配をする必要はないのです。
しかし、契約書の効力に問題がないからと言って、貼り忘れた印紙税を収めなくて良いという訳ではありません。収入印紙を貼り忘れていた、貼らなければならないことを知らなかったなどの場合でも、過怠税という税金が課されることになります。過怠税とは、印紙税法第20条に基づき、印紙税を納付しなかった場合に課されるもののことです。
過怠税として納めなければならない金額は、本来納付すべき金額の3倍となります。ただし、文書の作成者が管轄の税務署長に対し、収入印紙を貼り忘れていた旨の申し出を自主的に行った場合には納付する金額は本来の金額の3倍ではなく、1.1倍で済む場合があります。
さらに、収入印紙を貼り付け忘れた場合だけでなく、消印をしていなかった場合にも過怠税がかかってきます。金額は、消印をしていなかった収入印紙の金額と同額のものとなりますので、消印の押し忘れにも気を付けてください。
4.まとめ
今回は、収入印紙の基本についてお話しました。
普段の生活の中で、収入印紙を使う機会は中々ないかもしれませんが、いざ使う機会が訪れたとき、貼り忘れてしまった、貼ったのに消印をわすれてしまったなど、本来収めるべき金額以上の金額を収めなくて良いように、この記事を読んで、いつか訪れるかもしれない、収入印紙を使う機会に役立ててください。