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これって証拠になりますか??

弁護士の仕事と切っても切り離せないものが「証拠」です。 辞書的な意味の「証拠」とは、「ある命題の真偽や存否を判断する根拠となるもの」をいいますが、法律用語としての証拠とは、「証拠方法」「証拠資料」「証拠原因」という3つ場面で使われています。

証拠方法とは

「証拠方法」とは、事実を認識するための資料をもたらす有形物のことを差し、簡単にいうと、裁判官が事実を認定するための資料である人や物のことです。
⇒「証拠方法」という意味での証拠が、一般の人がイメージする証拠と同じであると思います。

証拠資料とは

「証拠資料」とは、上記証拠方法の具体的な内容のことを指します。 上記証拠方法が人の場合にはその人の具体的な証言内容が証拠資料となり、証拠方法が文章であればその記載内容が証拠資料となります。

証拠原因とは

「証拠原因」とは、証拠資料のうち裁判官が心証形成(判断材料のことをいいます。)に採用したものをいいます。

このように、裁判では、証拠方法から認定される証拠資料について、裁判官が証拠原因として採用した内容に基づいて、事実の有無が判断されます。
裁判において、証拠をもとに事実有無が判断される以上、弁護士としては交渉段階から常に証拠について検討を余儀なくされるため、証拠とは切っても切れない関係なのです。

よく、相談に来られる方の質問で一番多いと言っても過言ではない質問が「これは証拠になりますか」という質問です。
この質問を質問の内容通りに回答すると、多くの場合「証拠にはなりますが、証拠の強さは別問題です」という回答になります。

例えば、夫が不貞していると疑っていて、夫と他の女性の親密なやり取りのLINE画像がある場合、こちら側(妻方)として立証(証明)したい事実は、夫とその女性との間の不貞行為(性行為)の事実です。

そして、裁判所が事実認定をする場合には、基本的に当該証拠の証拠資料内容及びそこから合理的に推認される事実のみを認定します。
簡単にいうと、例えば、上記のLINEでのやり取りの具体的な内容(証拠資料)が「大好きだよ」「また、会いたいね」というやり取りのみの場合、裁判所としては両者が好意を持っていたこと(「大好きだよ」)や前に会っていたことがあること及びまた会いたいと思っていること(「また会いたいね」)、総じて、両者が親密であるという事実のみを認定します。
一般の方の感覚からすると、上記のようなやり取りをしている時点で、不貞をしていると強く疑うと思うのですが、裁判所の判断としてはこのLINEのやり取りでは、両者が親密であることは認定できるがそれを越えて不貞行為(性行為)を行ったという事実までは認定できないと判断すると思われます。

他方、LINEのやり取りの内容が「また、ホテルに行こうね」という内容である場合には、ホテルに行った事実が認定され、ホテルに行ったということは合理的に考えて性行為を行ったと認定されることになるでしょう。
また、「また、○○(性行為)しようね」というやり取りの場合、以前に性行為をしないとこのような発言はなされないとして性行為の事実を認定されることになるでしょう。

このように、証拠の有無と証拠の強さ(証明力といいます。)は別問題になります。
なので、安易に証拠があるから勝てるという風に判断されるものではないため、証拠を入手したと思われた場合には請求や問い詰める前に、弁護士に一度相談することをお勧めします。
また、弁護士に相談する際には、関係があると思われる資料はご自身で取捨選択するのではなく、全てお持ちいただいた方がいいと思います。
ご本人では証拠にならないと思ったものでも、弁護士からすると調査によって証拠となると思われるものも少なくありません。
例えば、不貞相手の名前や住所が分からず、車のナンバーのみ分かっている場合であっても、弁護士に依頼して弁護士会を通じ、陸運局に当該ナンバーの車両の所有者の名前や住所を調べることで、慰謝料の請求が可能になる場合もあります。

これが、証拠になるのか、どれくらい強いのだろうか(ようは、裁判で勝てるのかどうか)とご不安になられた場合には、是非一度ご相談ください。

 

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