法定相続分について②
<ご相談者様からのご質問>
先日,兄がなくなりました。兄は,結婚もしておらず,子どももおりません。両親も祖父母も亡くなっていますが,母は父と再婚する前に別の男性と結婚しており,その人との間にも子どもがいます。私と兄は,母が父と再婚した後に生まれたのですが,この場合,兄の財産はどのように分ければいいのでしょうか。腹違いの兄弟とはこれまで一度も関わったことがないので,話し合いをどうやって進めて行けばいいか不安です。
<弁護士からの回答>
相続手続きの際には,被相続人がお亡くなりになられていたときの状況次第で,これまで全く関わりのなかった親族と話し合いを行わなければならないことが少なくありません。前回は,配偶者との他の法定相続人との間の相続分についてご説明させていただきましたが,今回は,配偶者以外の相続人が複数にいる場合についてご説明させていただきます。
配偶者以外の相続人(子,直系尊属,又は兄弟姉妹)が複数人存在する場合についての相続分については,民法900条4号に「各自の相続分は,相等しいものとする。」と規定されています(900条4号本文)。つまり,配偶者以外の相続人が複数人存在する場合には,相続分についてその人数で等分することになります。例えば,相続人が配偶者と子ども3人の場合には,民法900条1号により配偶者が2分の1,子が残りの2分の1となり,子が3人いるため,2分の1を3等分,すなわち,子1人あたりの相続分は2分の1×3分の1で6分の1となります。
ご相談者様のお兄様を被相続人とする相続に関する相続人は,配偶者も子どもおらず,直系尊属もすでにいないことから,兄弟姉妹が相続人ということになります。
そして,兄弟姉妹はご相談者さまとお兄様の他に,父親が異なる兄弟姉妹(異父兄弟)の3人であるため,相続分はそれぞれ3分の1ずつになるように思えます。
しかし,民法900条4号但書では,「父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は,父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。」と規定されており,半血の兄弟姉妹(異父兄弟,異母兄弟)は全血の兄弟姉妹の相続分の2分の1が相続分であるとされています。したがって,ご相談者様の事例の場合には,ご相談者様とお兄様が5分の2ずつ,腹違いの兄弟は5分の1の相続分を有することになります。
ご相談者様の事例に関わらず,相続手続きの際にこれまで関わってこなかった親族の方と相続に関する話し合いを行うことは感情的な対立を生ずる危険もあり容易ではありません。
今回の事例のように,腹違いの兄弟の場合の相続分の区別については,一般の方ではご存じない方もいらっしゃると思いますので,当事者同士での話し合いではトラブルが生じてしまう可能性を否定できませんので,早めに弁護士にご相談いただくのがよいと思います。