法定相続分について③
<ご相談者様からのご質問>
先日父が亡くなりました。家族は母と子が私含めて3人いましたが,私の弟2人(A,B)は,父が死ぬ前に亡くなっており,Aには子どもが2人(C,D)Bには子どもが1人(E)おります。Bは,子どもが生まれてすぐに奥さんと一緒に交通事故で亡くなっており身寄りが他にいなかったため,私の父が養子縁組をして育てていました。この場合,父の財産については誰がどれだけ相続することになるのでしょうか。
<弁護士からの回答>
ご相談者様の事例では,代襲相続が発生していることに加え,代襲相続人の1人が被相続人と養子縁組を行っていることが相続分の判断を複雑にしています。そこで今回は,代襲相続人の相続分と相続人の資格が重複した場合の取り扱いについてご説明させていただきます。
まず,被相続人(ご相談者様の父)の配偶者は当然相続人となります。また,子であるご相談者様も相続人になることに争いの余地はありません。さらに,ご相談者様の弟2人(A,B)は被相続人が死亡する前に亡くなっているため,A,Bのそれぞれの子ども(C,D,E)は代襲相続人に該当します。そして,代襲相続人の相続分は「その直系尊属が受けるべきであったものと同じとする。」(民法901条1項本文)と規定されており,かつ,代襲相続人が複数の場合には,その著経緯存続が受けるべきであった相続分を法定相続分に従って分配します(民法901条1項但書,900条)。
また,Bの子どもEは,被相続人と養子縁組を行っており,Eは代襲相続人であるとともに,子でもあるということになり,相続人の資格が重複していることなりなりますが,相続人の資格が重複している場合であっても,各資格に基づく相続分を合算して取得することができます。
以上をもとに,本件の各人の相続分についてみると,配偶者(ご相談者様のお母さま)は2分の1の相続分を有することになります。そして,子は,養子縁組をしたEを含めると4人となるので,まず,子の相続分としては,2分の1×4分の1で8分の1となります。したがって,ご相談者様は8分の1の相続分を有します。そして,Aの子ども(C,D)は代襲相続人として,Aの相続分(8分の1)を法定相続分にしたがい,それぞれ取得することになるため,C,Dの相続分はそれぞれ8分1×2分の1の16分の1となります。
最後に,Eは養子縁組による子としての相続分8分の1に加え,Bの代襲相続人としての相続分を合算した4分の1(8分の2)が相続分ということになります。
ご相談者さまの事例だけでなく,被相続人のお子さんの人数が多い場合や,被相続人の方が大往生され高齢でお亡くなりになられた場合,養子縁組や相続放棄等が絡んでくると,相続人が誰であるか,誰がどれだけの相続分を有しているかの判断が非常に複雑になってきます。当事務所では,遺産分割協議の代理人としてお手伝いさせていただく前提として,戸籍収集サポート(戸籍を収取し,相続関係図を作成)や,相続サポート(戸籍収集サポートに加え,財産関係の調査,遺産分割協議書の作成)等も取り扱っておりますので,是非お気軽にお問合せください。