弁護士法人Nexill&Partners(那珂川オフィスサイト)

相続財産に含まれない財産①

<ご相談者様からのご質問>

 先日,元夫が亡くなったと聞きました。離婚調停の際,私が子どもの親権者となり,元夫から毎月2万円の養育費を支払ってもらうように約束してもらいましたが,全然支払ってもらえませんでした。元夫は私と離婚後再婚していましたが,再婚相手には養育費を支払う義務は相続されないのでしょうか。

<弁護士からの回答>

 以前にもお話させていただきましたが,被相続人の一身専属の権利義務については相続されず,相続財産には含まれないことになります。そこで,本日は,相続財産に含まれない一身専属の権利義務について説明させていただきます。また,養育費に関しては複雑な問題があるため併せて養育費に関する問題についてご説明させていただきます。

 一身専属の権利義務とは,その権利や義務の性質や内容から,他の人に与えたり課したりすることに馴染まない,本人にのみ与えられまたは課せられるべき権利義務のことをいいます。
 具体的には,帰属上の一身専属権として,代理権,使用貸借権,労働者である地位等があり,行使上の一身専属権として離婚請求権等があります。

ご相談様のご質問内容では,養育費を支払う義務が相続財産となるかという点が問題となっておりますが,養育費の支払義務に自体は,帰属上の一身専属の義務として,相続の対象とはなりません。したがって,ご相談者様の元夫の再婚相手は,元夫の相続人ですが,養育費を支払う義務までは相続しませんので,今後の養育費に関しては,請求することができません。

 もっとも,ご相談者様の事例では,元夫が養育費について,毎月2万円の支払い義務があるにも関わらずこれを支払っておらず,元夫が死亡するまでの未払いの養育費が存在します。この未払いなっている養育費については,上記の養育費を支払う義務とは異なり,単なる,金銭債務となっているため,一身専属の権利義務には該当しません。したがって,ご相談者様の事例の場合でも過去の未払分の養育費については,相続財産として元夫の再婚相手にも相続されます。

 ここで注意が必要な点が2点あります。まず,上記の未払分の養育費(金銭債務)は,養育費の対象であるお子さん自身も相続します。この場合相続により債権者と債務者が同一人物になるため債務は消滅します(法律上,混同による消滅といいます。)。

したがって,再婚相手に請求できる金額は,再婚相手の法定相続分に相当する金額となります。
 また,過去の未払分の養育費は,毎月支払われる「定期給付債権」であるため,民法169条により,各支払日から5年間で消滅時効になってしまいます。したがって,したがって,何もしていないと未払分の養育費として請求できる金額が毎月毎月減少してしまうことになりますので,いち早く弁護士にご相談いただくのがよいでしょう。