ご相談事例
再婚後、元夫より私と今の夫に慰謝料請求の訴状が届きました
- 相談者…1年前に協議離婚が成立、元夫より慰謝料請求
- 相手方…元夫
- 今の夫…相談者の元夫より慰謝料請求
元夫とは6年前に結婚したのですが、元夫からのDVやモラハラがあったため、元夫に離婚したいと告げ別居しました。
はじめは離婚に反対していた元夫ですが、別居から半年たったころ、元夫も離婚すると言ったため、離婚の条件(子どもの面会や養育費など)について協議を数か月かけて行い、1年前に協議離婚が成立しました。
別居してから精神的に不安なときがあり、友人の男性に相談しており、友人も親身に対応してくれたため、次第に恋愛感情が芽生えてきました。
そして、元夫が離婚すると言ってから、籍を外すまでの期間に男女の関係になりました。離婚後、その男性と結婚したのですが、先日、元夫から、私と今の夫に対し、不貞行為を理由とした慰謝料請求の訴状が届きました。
籍を外す前に関係を持ってしまったこと、とても軽率だったと反省しています。やはり、籍が抜けていない以上、慰謝料を払わなくてはならないのでょうか。
弁護士の対応
まず、依頼者の方に届いた訴状や証拠を確認しました。すると、どうやら元夫は、離婚する前に興信所を雇っていたようであり、元夫と離婚する前に、2人でホテルに入る様子が写されていました。こうなると、離婚が成立する前に他の男性と関係を持っているため、慰謝料を払わなければならないように思えるかもしれません。
ここで、不貞行為による損害賠償の仕組みについて説明します。ここでいう損害とは、精神的苦痛、すなわち、慰謝料のことをいいます。不貞行為を原因とする損害賠償請求(慰謝料請求)の場合、不貞行為により、円満な夫婦関係が破綻するに至ったため、精神的苦痛を被ったため慰謝料を請求することができることになります。
したがって、性行為の前に夫婦関係が破綻している場合には、すでに別の原因で夫婦関係が破綻した後に関係を持っているため、性行為が原因で夫婦関係が破綻するに至ったわけではないとなるので(法律用語では、「因果関係(原因と結果の関係)がない」ということになります。)、結果として慰謝料請求は認められないということになります。
そこで、訴訟では、当職が代理人として、肉体関係があったことは間違いないが、それは、夫婦関係が破綻した後のものであり、因果関係がないため慰謝料を支払う義務がないと主張を行いました。そして、離婚協議中であったことの証拠として当事者が離婚の条件面について協議を行っているLINEのやり取りなどを提出しました。
結果として、判決では、原告(元夫)からの慰謝料請求は一切認められず、完全な勝訴判決を得ることができました。
今回の事例では、慰謝料請求が認められないという結論になりましたが、やはり、離婚が成立していない間に男女の関係になってしまうという時点で、原則としては慰謝料を支払わなくてはならなくなるため、男女の関係になるのは後々のトラブルを防ぐためにも、きちんと離婚が成立してからの方がよいでしょう(感情的な人だと、離婚が成立した後に関係をもっていた場合であっても、「離婚前から関係があったはずだ」と言って慰謝料の請求をしてくる人も少なくありません。)。
また、離婚で相談に来られる方の中には、他の方と交際している事実などをなかなか言い出せないという方もいらっしゃいます。後々相手方に知られてしまうと不利なってしまうケースも少なくないため、ぜひ弁護士には言いづらいことであっても、すべてお話しいただけると良いかなと思います。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。