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トイレ休憩、タバコ休憩は「休憩時間」?

コロナでのテレワークの普及や、働き方改革の一環でのフレックスタイム制の導入など、働く時間や場所が多様になっています。 しかし、そういった中でも、定時に会社に出社し、お昼頃の休憩時間に休憩を取り、定時や少し残業をして帰るというような、今まで通りの働き方をされている方も少なくありません。 そういった中で、お昼の休憩時間(タイムカードなどを打刻して休憩する時間)とは別に、トイレに行っている時間や、喫煙される方がタバコを吸いに行っている時間など、厳密にいうと働いていない時間があると思います。 そういったトイレ休憩やタバコ休憩の時間を給与が発生しない休憩時間とすることはできないかという相談がごくまれにあります。 そこで、今回は、トイレ休憩、タバコ休憩についてどういった取り扱いがなされているのかについて説明させていただきます。

1.休憩時間とは

使用者と労働者の関係について規律する労働基準法の34条1項では、

「使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分、8時間を超える場合においては少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない」と規定しています。そして、この「休憩時間」とは、「労働が労働から完全に離れることを保障される時間」

とされており、休憩時間に該当する場合には、その時間について、労働者に賃金を支払う必要はありません。 簡単にいうと、労働時間の途中にある労働時間でない時間を指します。そして、「労働時間」とは、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」をいいます。したがって、トイレ休憩やタバコ休憩が「休憩時間」に該当するかについては、その時間が使用者の指揮命令下に置かれている状態といえるかという点から判断することになります。

2.トイレ休憩について

トイレ休憩については、そもそも生理現象としての排泄を行うためのものであり、短時間であることから、完全に使用者の指揮命令下(労働)から解放されていることが保証されているとはいえないため、「休憩時間」には当たらないことになります。したがって、トイレ休憩の時間を休憩時間として賃金を支払わない取り扱いをすることは労働基準法違反となり認められません。

3.タバコ休憩について

近年、健康志向から喫煙者は減少していますが、喫煙者の方にとって勤務時間中一切タバコを吸わないというのはなかなか耐えられないのが実情ではないでしょうか。タバコ休憩の時間が休憩時間に該当するか否かが争われた裁判例では、「職場内で喫煙していたとしても、何かあればただちに対応しなければならないのであるから、労働から完全に解放されている状態とはいえない」として、休憩時間には該当しないとの判断がなされております。となると、厳密にいうとタバコ休憩の時間も労働時間として給与が発生していることになり、タバコを吸わない人との間の不公平感があるようにも思えますが、仕事中に飲んでよいとされるコーヒーを作っている時間などは休憩時間とならないことは争いはないと思うので、それとの対比を考えると逆にタバコ休憩のみ認めないというのは逆に問題になってしまうかなと思います。

4.トイレにこもっている場合や、何度もタバコ休憩に行く場合は?

上記でご説明したとおり、トイレ休憩やタバコ休憩が労働基準法上の「休憩時間」にあたらないとしても、例えば、病気でもないのにトイレに何十分も閉じこもっていたり(携帯を持ち込んでトイレでゲームをしているような人もいるようです)、短時間に何度もタバコ休憩を行うということは許されるわけではありません。 そのような行為を従業員が行っている場合には、職務専念義務違反として懲戒処分の対象となったり、賞与の減額事由となります。もっとも、使用者側の場合、単に「あの人はしょっちゅうトイレに行っている」というような主観的な内容だけで処分などをすることは、後々紛争に巻き込まれるリスクがあるため、タバコ休憩の時間や、理由なく離席している状況等を記録しておくことが望ましいでしょう。

5.さいごに

こうした細々した休憩について会社側が逐一管理するということは、働きづらい環境になってしまうリスクもあり、なかなか現実的ではないとは思います。 一方で、働いている人も、無配慮にタバコ休憩をしてしまうと、他の従業員から反感を買ってしまうかもしれません。使用者も労働者も、みんなで働きやすい環境にするよう心掛けてもらいたいなと思いました。

 

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