弁護士コラム

2024.01.19

弁護士が解説!売掛金について

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最高のピッチング

皆さんは、野球が好きですか?
私は、サッカーも野球も好きですが、どちらかというとサッカーの方が好きだったのですが、今年のWBCの感動的な試合を見て、野球も捨てたものじゃないなと再評価していました。

野球では、バッターよりも投手に注目することが多く、日本だけでなくメジャーリーグの有名なピッチャーの動画などをよく見ています。

よく、野球好きの人と話すときに、「最高のピッチング」とは何かということが話題になったりします。その際に出てくるのが「81」と「27」という数字です。「81」という数字は、全てのバッターを3球三振で仕留めた場合3球×3アウト×9回=81球で試合を終わらせることが出来るというものです。ピッチャーだけの力で試合を終わらせることが出来るという意味では理想なのかもしれません。

これに対し、「27」という数字は、全てのバッターを、ゴロやフライなどでアウトにした場合には、1球×3アウト×9回=27球で試合を終わらせることができます。私個人的には、1球で仕留める技術がかっこいいため、こちらの方が理想のピッチングというような気がしています。

ピッチャー

この、理想的ピッチングの「27球」というものですが、もっと少なくすることはできないのかと友人と話していたことがありました。最近メジャーリーグで大谷選手が申告敬遠を何度もされているのを見て、「申告敬遠の場合球数はどうなるのか」と思い、調べてみることにしました。

日本のプロ野球のルールなどをまとめたものとして、「公認野球規則」というものがあります(アメリカのプロ野球のルールを翻訳したものに、日本独自の注釈などが盛り込まれているそうです。)。この「公認野球規則」によると、申告敬遠(規則では「故意四球」というようです)の場合、投手の投球数には加算されないとされています。 そうすると、最も少ない球数で試合を終わらせるためには、申告敬遠を2回してノーアウト1塁、2塁の状態で、次のバッターに対し1球でトリプルプレーをとることで、1球×9回=9球で試合を終わらせることが、理屈上可能になります。

9球で試合を終わらせることは絶対にありえないでしょう。また、そもそも27球で試合を終わらせるというのも夢物語であると思います(ちなみに、日本のプロ野球で9回完投の最小投球数は、71球だそうです)。ですが、今まで歴史を塗り替えてきた大谷選手やこれから出てくる選手がそいった理想をかなえてくれるのではと思うだけでとってもロマンがあっていいなと思ったりします(前置きが長くなってしまいましたが、以下法律のお話をさせていただきます。)。

ホストクラブの売掛金について

さて、本題に入りたいと思います。
最近ニュースで、歌舞伎町のホストクラブで将来的に店での売掛けをなくすことを目指すというニュースがありました。会社や、事業をされている方には、この「売掛け」という言葉になじみはあるかもしれませんが、一般の方ですと、あまり聞いたことがない言葉かもしれません。

「売掛金」とは、会計上の用語で、「これから支払われる予定のある代金」を意味する勘定科目のことをいいます。簡単に言うと、ものを買って代金の支払いを後払いすることを売掛といいます。 この「売掛」という言葉のもととなっている「掛売」という言葉は、江戸時代の会計帳簿には記載されており、この頃の商取引は基本的に代金をその場で支払わず後で受け取る「掛売」で行われていたようです。「掛」という言葉はなにかの途中であることを意味するものであり、代金が支払われていない状態は、売買という取引が完了していない(途中である)ことから「売掛金」という言葉が使われるようになったそうです。

先程のニュースでは、ホストクラブにおいてこの売掛を辞めることを目指しているとのことですが、誤解がないようご説明すると、売掛という支払い方法が悪いというわけではありません。商取引は迅速性が求められ、かつ、扱う金額も高額になるため、コンビニの支払いのように都度都度現金でその場で払うことが求められると、迅速な商取引が阻害されてしまいます。

ホストクラブで問題になっているのは、ホストクラブでは、お客の女性が支払う能力がないことを知りながら、何百万円もする高額なお酒を、売掛金として入れさせ、支払いを強要し、多額の借金をさせたり、風俗業界で強制的に働かせたりの悪質な行為をしている点が問題となっています。

シャンパンタワー

このようなホストクラブにおいて売掛が禁止された場合には、お客の女性も、自分の支払い能力に見合った利用(要は、自分の持っているお金の範囲でのみの利用)をすることになるので、利用する女性の方から被害者を防ぐことができるのではないかと言われています(個人的には、そうなると、消費者金融で借り入れを強制したり、違法な闇金などからお金を借りさせたりして、支払わせるというような手法が横行してしまうような気もしています。)。

他方、こうしたホストクラブではない通常の商取引においても売掛金に関するトラブルは頻繁に生じています。具体的には、買い主から売掛金が支払われない状態で、新たに取引を行い、売掛金の額が高額になったが、買い主からいっこうに代金が支払らわれないというトラブルです。

このような場合、売主側は、買い主に代金の支払いを請求し、任意での支払いに応じない場合には、裁判で支払うよう求める必要があります。もっとも、売掛金を支払えない会社がめぼしい財産を持っている可能性はあまり高くないため、回収ができないということも少なくありません。 売主側としても、支払われるべき代金が支払われていない状態で更に取引をする場合には、代金を一部でも支払わない場合にはその後の取引には応じないなどの対応を行う必要があると思います。とはいえ、数カ月後に代金支払いの目処が立つので先に商品を納品してほしいなどといった要請もあるかもしれません。その際には、相手が代金を支払われないリスクがある前提で対策をする必要があります。

具体的には、連帯保証人をつけてもらう。物的担保(不動産に抵当権を設定するなど)を求める。後々強制執行をする対象(預金口座、取引先等)の情報を教えてもらうなどが考えられます。 当事務所にご相談いただく経営者の方の多くは、ずっと取引を続けていたがいっこうに支払ってくれないというタイミングでご来所されるのですが、その時点では、売掛金を回収できない可能性のほうが高いため、可能であれば、上記のように一部未払が発生している時点などで、ご相談いただくことで、連帯保証契約や強制執行ができる情報を聞くようアドバイスするなど、適切なサポートができると思います。

また、当事務所の「フレックス顧問®契約」にて顧問契約をしていただいている方の場合には、個別の売掛金回収についても、毎月の顧問料以外に別途弁護士費用を頂戴しませんので、弁護費用を考慮して依頼を躊躇することがなくなります。売掛金だけでなく、日頃から相談したいことがあるなどという場合にはぜひ、顧問契約をご検討ください。

 

執筆弁護士紹介 後藤祐太郎

 

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