弁護士コラム

2024.07.24

これは違法ではないのですか!?~刑事法と民事法~

弁護士がわかりやすく解説!これは違法ではないのですか?民事法と刑事法

執筆後藤弁護士

当事務所では、企業様だけではなく、個人の皆様も含め、様々な方が相談に来ていただいております。
ご相談に来られる方のなかで、「相手方が〇〇なのは違法なのではないですか?」と仰られる方が多いと感じます。
ご相談に来られる方に対しては、ご説明させていただいているのですが、今回は、この「違法」という言葉について、場面などを分けてご説明させていただきます。

まず、辞書的な意味の「違法」とは、文字通り、「法、法律に背くこと」を言います。
したがって、「違法」という言葉をきちんと説明するためには、この「法律」の中身を検討する必要があります。

1.刑事法上の違法

法律の中には、違反すると、刑事罰を課されることが規定されている法律があり、これを「刑罰法規」といいます。
刑法などが一般的ですが、それ以外にも労働基準法の一部なども刑罰が課せられる刑罰法規が含まれています。
このように、刑罰法規に反する行為をした場合には、刑事法上違法な行為ということになります。

2.民事法上の違法

上記の刑事法上の違法な行為とは別に、民事法上違法な行為として定められている行為があります。
民法709条では、

「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」

と規定されており、不法行為に基づく損害賠償請求について定めています。
このような不法行為に基づく損害賠償請求権が発生するためには、相手の行為が違法な行為である必要があり、この場合の違法行為とは民事法上の違法な行為ということになります。

3.2つの違い

この刑事法上の違法な行為と民事法上の違法な行為とは同じように見えますが、違う場合があります。
例えば、人を殴ってケガをさせた場合、その行為は傷害罪(刑法204条)に該当する行為として刑事法上違法な行為に該当し、かつ、不法行為に基づく損害賠償が発生する行為であり民事法上も違法な行為に該当します。

これとは異なり、例えば、既婚者の人と、不貞行為を行ってしまった場合、不法行為(不貞行為)に該当するので、民事法上の違法となることは当然です。
しかし、不貞行為は、現在の法律では犯罪ではないため(戦前の日本の法律では、「姦通罪)」として犯罪行為でした)、刑事法上の違法な行為には該当しません。

4.民事法上の義務違反行為

さらに、民事法上の義務違反行為というものが存在します。
例えば、お金を借りているのに返さない、請負代金を支払う義務があるのに支払わない、物を買って、代金を受け取ったのに商品を引き渡さないというように民事法で認められる契約法上の義務に反する行為がそれに該当します。
この民事法上の義務違反行為についても例えば、給料を一切払わないという場合には、労働基準法の刑罰法規にも反する行為であるため、刑事法上も違法ですが、貸したお金を返さないという行為は、刑事法上違法な行為ではありません(そもそもお金を返す意思がないのに借りたという場合には、詐欺罪として犯罪行為に該当する場合もあります。)。

上記の「〇〇は違法ではないのですか!?」という場合、この民事法上の義務違反行為をしている相手が犯罪に該当するのではないかという質問であることは多いです。
したがって、この場合の回答としては「契約上の義務には反しているのですが、犯罪ではないのですよ」と異様な回答になると思います。

5.最後に

刑事法上の違法な行為について定める刑罰法規については、その目的が刑罰を定めることで、犯罪行為をなくし、社会の秩序を維持することにあります。
他方、民事法上の違法な行為や、民事法上の義務などを規定する民事法(民法、商法等)は、その目的が、私人間の紛争や取引ルールを定めることで、紛争を解決するということなどがあります。 このように、それぞれの法律の目的が異なるため、違法の概念が異なってくることになります。

このように、刑事法上の違法な行為、民事法上の違法な行為、民事法上の義務違反行為と異なるものが同じような違法、違反というような言葉でひとくくりにされているため、分かりづらくなっているのではないかと思います。
説明する私が、こうした理屈を理解していないと、ご相談に来られる方にもきちんと理解してもらうことはできないと思いますので、日々研鑽を怠らないようにしたいと思います。

 

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