弁護士コラム

2019.04.08

【相談事例33】裁判員裁判について①~裁判員裁判とは~

【相談内容】

昨年の11月頃に突然裁判所から郵便が届き、私が裁判員の候補者に選ばれたという内容が書かれていました。

私はもう裁判員になったということでしょうか。そもそも、裁判員裁判についてよくわかっていないので教えてもらえませんか。

【弁護士からの回答】

平成16年5月に「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」が成立し、平成21年5月21日から、裁判員制度が開始し、今年(平成31年)で、開始から10年が経過しようとしています。

皆様も裁判のニュースなどで裁判員裁判という名前自体は聞いたことがある方も多いと思います。
しかしながら裁判員としてどんな活動をするのかについては把握されていない方が多いと思いますので、今回から数回にかけて裁判員裁判制度についてご説明させていただきます。

1 裁判員制度とは

裁判員制度とは、一般の人が、裁判員として刑事裁判に参加し、起訴された人(被告人)が有罪か無罪か、有罪の場合にはどのような刑を被告人に科すかということを、裁判官とともに判断する制度をいいます。

重大な犯罪についての刑事裁判に一般の人が参加することにより、一般の方が持っている日常感覚や常識を刑事裁判に反映することを主たる目的として始まった制度になります(どのような事件が裁判員の対象となる事件かについては、別の機会にご説明させていただきます。)。

通常、裁判官3名、裁判員の6名、合計9名という構成(合議体といいます。)で裁判を行いますが、例外的に被告人が事実関係を争わない場合には裁判員4名、裁判官1名で審理する場合もあります。

2 裁判員の活動内容

裁判員は、裁判における審理に参加し、裁判官とともに、証拠調べを行い(書証や証言などを見聞きすることです。)、有罪、無罪の判断や有罪の場合にどのような刑を科すかという量刑についても判断することになります。

なお、法律に関する専門的な知識が必要な事項や、訴訟手続についての判断は、裁判官が行うことになります。

また、証人尋問や被告人質問の際には、裁判官のみならず、裁判員も被告人や証人に対し、質問をすることができます。

裁判員の具体的な活動内容については、別の機会にもご説明させていただきます。

3 裁判員の選任方法について

まず、全国の地方裁判所ごとに、翌年の裁判員候補者名簿をくじで選んで作成し、毎年11月頃に、裁判員候補者名簿に登録された人に対し通知を行います。

ご相談者様にも裁判員候補者名簿に登録されたという通知が来たとのことですが、この通知は、簡単にいうと、来年1年間裁判員裁判対象事件が起訴された場合に、裁判員に選ばれる可能性があるということを通知するものになるため、この通知が来た段階では、まだ裁判員になったというわけではありません。

その後、裁判員裁判対象事件が起訴された場合、事件ごとに、裁判員候補者名簿の中からくじ引きでその事件の裁判員候補者が選ばれることになります。

そして、裁判員候補者は裁判所において裁判官と面談などを行い、最終的に候補者の中から6名が裁判員として選ばれることになります。

次回は、どのような事件が裁判員裁判の対象となるかについてご説明させていただきます。

 

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2019.04.05

【相談事例32】自由に名前を変えられる?~改名するためには~

【相談内容】

先日ニュースで、自身の変わった名前を変更することができた人のことを取り上げていました。

私の名前は変わった名前というわけではなく、今の名前で支障が生じたりすることはないのですが、他の名前に変えたいと考えているのですが、どのような場合に名前を変えることができるのでしょうか?

【弁護士からの回答】

数年前より、自分の子どもの名前に、キャラクターの名前や、当て字などで通常読み難い名前などのいわゆる「キラキラネーム」という言葉を多く目にするようになってから、今後、改名を希望する人が増えるのではないかと個人的には考えていました。

先日ニュースで話題になった、改名を行った方についても、同じように一般的にキラキラネームに該当しうるお名前のケースだと思います。
今回はどのよう場合に改名が認められるか等についてご説明させていただきます。

1 改名の手続きについて

改名とは、大きく分けると「氏の変更」「名の変更」の二種類があります。
「氏の変更」とは、苗字を変更する手続きであり、「名の変更」とは、苗字と名前のうち、名前を変更するものであり、いずれも戸籍法に記載されています。
いずれの手続きにおいても、裁判所の許可を得て役所へ届け出ることが必要になります。

これは、氏名というものは、その人を特定する唯一無二の呼称であるため、自由に変更を認めてしまうと、その人個人を特定することができず、社会的にも混乱が生じてしまう可能性があるため、裁判所が許可した場合に限り、氏の変更や名の変更を認めているのです。

2 「名の変更」について

上記のとおり、氏名とは、個人を特定するためのものであり、一度定められた氏名について自由に変更されてしまうと、個人の特定が困難になってしまいます。
したがって、戸籍法上、名の変更が認められるためには、「正当な事由」が必要とされています(107条の2)。

「正当な事由」が認められる場合とは、営業上の理由より先代の名を襲名する場合や、通称名を非常に長期間使用しており、通称名の方が社会的に定着しているっ場合や、同姓同名の人がいて、生活上で支障がある場合などには認められていますが、そのような事情がない場合には、従前の氏名を継続することと、改名することの利益不利益を総合的に考慮して、変更する利益が大きい場合には認められるとされています。

したがって、ニュースで取り上げられたようなキラキラメールといった珍奇な名前の場合にはその名前を使用することによる不利益が大きいと認められる場合が多いといえるため、名の変更は認められる可能性が大きいでしょう。
しかし、ご相談者様のような主観的な理由のみによる変更については、必要性がないとして一般的には認められていません。

3 「氏の変更」について

氏(苗字)については、出生により授けられ、結婚、離婚、養子縁組等身分関係が変更するときに変更される以外は、基本的に変更されるものではなく、親族関係等を基礎づけるものとして非常に重要であるため、氏の変更が認められる要件としては、戸籍法上「やむを得ない事由」が必要であるとされており(107条)、名の変更よりも厳格な要件が設定されています。

名の変更では同姓同名の人がいる場合には認められていましたが、同姓同名の場合に氏を変更することは認められていませんし、いわゆるキラキラネームの場合であっても氏を変更することは認められていません。

4 最後に

氏名というものは、個人のアイデンティティの観点から非常に重要なものですが、キラキラネーム等のように名前により、苦しい思いをされているかたもいらっしゃると思います。

現在の名前で苦しい思いをされている方であっても家庭裁判所にて許可を得なければ名前を変えることはできないため、氏名でお悩みの方は一度弁護士にご相談ください。

 

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2019.03.11

【相談事例31】~迷惑動画④動画の拡散や実名を晒すのは違法?~

【相談内容】

先日、僕が通っている大学の同級生が身内のSNSで迷惑動画をアップしていました。

迷惑動画を投撮影することは悪いことですよね?動画を拡散するだけでなく、彼の名前や出身大学などを投稿して懲らしめたいと考えています。

【弁護士からの回答】

自らの正義感や面白半分などという理由により、迷惑行為を撮影した動画を拡散したり、ネット上で迷惑動画などの問題行動を行った当事者の個人情報を探し当て、その情報を拡散することが頻繁になされています。
ニュースなどでは、迷惑動画を撮影した人などを問題視するものが多く、動画を拡散したり、個人情報を晒したりする人の問題については取り上げられていることがなかったため、今回、そのような行為の法的リスクについてご説明させていただきます。

1 肖像権、プライバシー権侵害

判例上認められている個人の生活上の自由(権利)として、承諾なしにその容貌、姿態を撮影されないことが認められており、これを、肖像権やプライバシー権といいます。

したがって、迷惑動画を拡散することは、承諾なしにその容貌などを不特定多数の人に拡散してしまう行為であるため、肖像権やプライバシー権を侵害する行為として損害賠償の対象になりうる行為です。

迷惑動画を撮影するという行為自体は違法なのですが、違法な行為をした人は肖像権が失われるという考え方はなされておりません。
したがって、迷惑動画を撮影した人を拡散する行為も違法な行為に該当しうることになります。(逮捕された容疑者などを無断で撮影し、報道する行為についても肖像権との関係では一応問題となりうるといえるでしょう。)。

2 個人情報の拡散について

迷惑動画の拡散に加えて、動画に映っている人の氏名、住所、出身大学等個人情報についても拡散した場合にはどのような問題があるのでしょうか。

自分自身で行っているので、自業自得という側面は否定できないものの、特定の人物が店の信用を損なうような行為を行っているということは、一般的にその人の名誉を毀損する内容であることが一般的であるため、個人情報を含めて動画を拡散した場合には、かかる行為が民事上違法な行為であることに加え、名誉毀損罪として刑事責任を問われてしまう可能性も否定できません。

以前にご説明したことがありますが、名誉毀損行為を行ったとしても公益的な目的である場合には、違法性が認められない場合もありますが、いわゆるジャーナリズムとは異なり、一般の人がSNSで拡散する行為は、面白半分である場合やリツイート数や「いいね」の数を稼ぐためであることが多いと思われますので、違法性が否定される場合は少ないでしょう。

3 まとめ

スマートフォン及びSNSの普及により、今では誰でも簡単に情報発信をすることができる時代であり、迷惑動画に限らず、ほんの軽い気持ちで投稿したことで他人に多大なる損害を与えてしまう場合や、自分自身を傷つけてしまうことが容易に想定されます。

技術の進歩は素晴らしことですが、それに伴って、技術を用いる人のリテラシーの向上も進歩に比例して必要不可欠になっていると思います。
もし、自分の行うとしている行為が、法的に問題があるのではないかと不安を抱いた場合には、行動を起こす前に弁護士にご相談いただくことをおすすめします。

 

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2019.03.11

【相談事例26】弁護士の仕事とは③~裁判業務について~

【質問内容】

弁護士さんのお仕事といったら裁判で活躍するというのが印象的ですが、裁判ではどのようなことをされているのですか。
テレビドラマであるように毎回毎回法廷で相手方と言い争っていると思うととっても大変ですね。

【弁護士からの回答】

テレビドラマなどでは、弁護士が法廷で依頼者側の主張を延々と述べ、その主張の優劣で裁判の結論が変わるかのような演出がなされていることが多くみられます。
確かに、刑事裁判においては、被告人の代理人として裁判官や裁判員に対し、無罪であることや、量刑を軽くするために、法廷で発言することがありますが、民事裁判の場合はそのような機会はほとんどなく、実際に行われている裁判の期日の内容は皆さんが抱いている裁判のイメージと大きく異なると思われます。
そこで、今回は、裁判業務についてご説明させていただきます
(刑事裁判や民事裁判の具体的な内容については、別の機会にご説明させていただきます。)

1 刑事裁判について

刑事裁判では、起訴された被告人の代理人(弁護人)として被告人が無罪の場合には無罪を主張し、罪を犯したことは間違いないとしても、被告に有利な証拠(情状)を提出することにより、量刑を減刑するよう活動を行います。

その活動のなかで、証人に対し質問(尋問といいます)したり、被告人に対し質問を行ったりする尋問手続きという手続きがあるのですが、その尋問手続きは、テレビドラマで見ているように、弁護士が法廷で証人に対し質問を行うことになります。

また、裁判の終盤には、検察官の方から被告人がこれだけ悪いことをしているので厳罰にすべきであるというようなことを主張する論告・求刑という手続きがあり、それに対し、弁護側として、犯人ではない、犯罪は成立しない、犯罪は成立するとしても、このような事情が存在するので、刑を軽くすべきであるというような主張を行う弁論という手続きがあります。

別の機会にご説明させていただきますが、裁判員裁判においては、先ほどの尋問手続きと、この弁論でどのような主張を行うかによって、裁判員が受ける印象も大きく異なってくるとも言われているので、弁護士の腕の見せ所であるともいえると思います。

2 民事裁判について

民事裁判における弁護士の役割は、刑事裁判とは大きく異なり、基本的には弁護士が法廷で発言するような期間はほとんどといっていいほどありません。

具体的には裁判までの期日までに、書面を作成して証拠を作成し事前に裁判所と相手方にて出し、裁判では、その書面と証拠を提出したことを確認したうえで、次回の期日までに提出すべき書面(相手方の反論や、こちら側の主張の補充などです。)などを確認して、1回の期日が終わります。

時間にすると平均して10分程度で終わるのが通常かもしれません。ご依頼いただいた方も裁判に一度出席したいとの意向で、期日に出廷される方もいらっしゃるのですが、1回の期日があまりにも短く終わってしまうので拍子抜けしてしまう方も少なくありません。

そのように、主張を行い続けていった上で、争点に関し、刑事事件と同様に証人や当事者に対し尋問手続を行います。
もっとも、民事裁判においては証人尋問における証言の重要性はあまり高くなく、証人尋問前の書面や証拠が非常に重要となります。

3 最後に

このように、刑事裁判や民事裁判において弁護士が行う活動は様々ですが、基本的に裁判所で活動をできるのは弁護士のみであるため、裁判を起こす、裁判を起こされたという事態になったらなるべく早期に弁護士にご相談ください。

 

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2019.03.11

相談事例集の掲載にあたって

当事務所では、初回相談に関しては、1時間無料にて対応させていただいていることから、日々様々なご相談をいただいております。
これまで、離婚、相続等個々の分野に関して、コラムを作成させていただきましたが、日常で発生する法律問題については、離婚、相続に限らず、あらゆる法律問題が存在しています。
当事務所にご相談に来られる方もこうした様々な法律問題や、そもそも法律の問題ではないトラブルについてもご相談いただくことがございます。

そこで、この相談事例集では、ご相談にお越しいただいた方の相談内容や、社会的に問題になっている事項等を参考に、一般的な相談内容に対し、弁護士としての見解やアドバイス等をご紹介させていただくことにより、弁護士を身近なものに感じていただき、那珂川町のみならず、春日市、大野城市、太宰府市等にお住いの皆様からお気軽にご相談にお越しいただけたらと考えております。

【注意事項】
ご紹介する相談事例はあくまでも一般的な事例であるため、当事務所への個々の相談や、受任している個別の事件とは一切関係ありません。
また、回答に関しても一般的な相談に対するものであるため、実際の事件の際には異なる処理が適切である場合がございます。
したがって、この事例集をご覧になられた方において、相談事例と同様若しくは類似すると感じた場合でも必ず弁護士のご相談を受けることをおすすめいたします。

2018.10.15

弁護士の仕事とは②~裁判外業務について~

前回は,弁護士の仕事の総論的な部分をご説明させていただきました。

今回は,弁護士の仕事のうち,裁判外業務の内容について,ご説明させていただきます。

 

1 代理人としての交渉業務

弁護士 裁判外の業務において一定の割合を占めるのが,この代理人としての交渉業務になります。お金を貸したのに返してもらえない,家賃を払ってもらえないので,アパートから退去して欲しい,夫と離婚したい,交通事故に遭ってしまったので相手方保険会社との間に入って欲しいなど,様々な法律問題について依頼者の代理人として依頼者の利益を実現するために相手方と交渉を行うのが弁護士としての役割です。また,上記のような民事上のトラブルだけではなく,刑事上のトラブル,例えば,ケンカをして相手を殴ってしまい,ケガをさせてしまった場合には,被害者との間で示談を成立するための活動を行うことも弁護士の仕事です。

 この交渉業務は,弁護士の業務において非常に重要な業務であると考えています。すなわち,交渉によりトラブルが解決することにより,依頼者が抱える問題を早期に解決することができ,紛争にまきこまれることを防ぐことができるため,交渉によりスムーズにトラブルを解決することが弁護士としての責務ではないかと感じています。

 

2 顧問弁護士としての顧問業務

 上記の交渉業務に関しては,基本的には法的トラブルが発生した段階でお手伝いさせていただくことが多いです。しかし,弁護士の業務として企業や時には個人の顧問弁護士として常日頃,相談等関係を構築しておくことで,弁護士として紛争が起こらないようにアドバイスをすることができます。たとえば,法的にトラブルが発生しないようにきちんとした契約書を作成することや,就業規則の作成を行ったり,何か行動を起こす前に,法的に問題がないかの確認を弁護士に依頼したり(リーガルチェックといいます。)するなど,顧問弁護士を利用することにより,紛争が発生することを防ぐためにお手伝いさせていただくことができます。

 機会があれば,ご説明させていただきますが,何かトラブルがおきてから弁護士に依頼するよりも,何かトラブルが起きないように弁護士に相談をする方がとても重要であるため,顧問業務については重要な仕事であると考えています。

 当事務所には,支払った顧問料を無駄にすることなく,積み立てることができる,「フレックス顧問契約」という形態をとっておりますので,顧問弁護士をご検討されている方につきましては,是非,一度ご相談ください。

2018.10.11

弁護士の仕事とは①

 第三者委員会のメンバーになったり,刑事事件の弁護人になったりと弁護士さんのお仕事の場面は色々あるのですね。弁護士がどんなお仕事をしているのかってあまり知る機会がないため,弁護士の仕事について教えてもらいたいです。

 

【弁護士からの回答】

 一般の方が日常生活を過ごす中で,トラブルに巻き込まれない限り,弁護士と関わり合うことが通常ないと思われます。したがって,弁護士の仕事がどのような内容であるかについては,あまり知る機会がないと思われます。そこで,今回から数回にかけて,弁護士の仕事の内容についてご説明させていただきます。

 

1 弁護士とは

 まず,弁護士についてご説明させていただきます。弁護士とは,司法試験という国家試験に合格し,国家資格を有する法律の専門家をいいます。弁護士になることで,他人の法律事件に関して報酬を得て代理行為などを行うことができます。逆をいえば,原則として他人の法律問題について,報酬を得て間に入ることができるのは弁護士だけということになります。

 

2 弁護士の仕事について

 弁護士の仕事について,大きく2つに分けると,①裁判業務と②裁判外業務の2つがあります。①の裁判業務については刑事裁判と民事裁判に分けられます。刑事事件の場合には,起訴された被告人の代理人(弁護人といいます)として,検察官が起訴した事実について,被告人が犯人ではない場合や,犯罪が成立しない場合には,無罪を主張し,逆に犯人であることや有罪であることが間違いない場合であっても,被害者と示談を行ったり,被告人を監督する親族等の証人として申請する等する弁護活動(情状弁護といいます。)を行います。

 他方,民事裁判では,契約関係のみならず日常生活での当事者間のあらゆる紛争について一方当事者の代理人として,主張を行うとともに,証拠とともに立証活動を行います。

 ②の裁判外業務については,簡単に言えば,弁護士が行う業務のうち,裁判業務以外の全て業務であり,交渉,書面作成,法律相談,法的なアドバイス等様々な活動があります。

 テレビドラマなどで俳優などが演じている弁護士はほとんどが,裁判での活動を行っているため,一般の方からすると,弁護士の活動はほとんど裁判所で仕事をしているといったイメージを持たれている方も少ないのではないかと思いますが,基本的に,弁護士の活動は,裁判外の業務の方が多いというのが一般的であると思います。

 今回は,弁護士の仕事の総論的な部分をお話しさせていただきましたが,次回からは具体的な内容についてご説明させていただきたいと考えております。

2018.10.09

保釈とは②

逮捕された段階では,保釈は認められないのですね。そういえば,保釈金ってニュースなどでみると,300万円とか500万円など非常に高い金額になっている気がしますが,保釈金の金額はどのようにして決まるのですか。また,一度保釈金を払ってしまうと,払ったお金を戻ってこないのですか。

 

【弁護士からの回答】

 前回は,保釈の定義や要件についてご説明させていただきました。今回は,保釈金について,その内容や保釈金の金額の決まり方についてご説明させていただきます。

 

1 保釈金とは

 保釈金とは,裁判所が保釈の決定を出す際に,被告人支払いを求める金銭のことであり,正確には,保釈保証金といいます。

 身体拘束から解放された被告人が逃亡することなく裁判所に出頭してもらうために一時的に裁判所に預けられる金銭になります。したがって,保釈金については,一度支払ったら戻ってこないものではなく,きちんと裁判所に出頭すれば,事件終了後に返金されることになります(これを還付といいます。)。しかし,被告人が正当な理由なく裁判所に出頭しない場合や,逃亡したり,証拠を隠滅しようとした場合には,保釈が取り消されることになり,その際に,保釈金も没収されることになります。このように,保釈金は,身体拘束から解放された被告人に対し,金銭をいわば人質として裁判所に預けさせることにより,きちんと裁判所へ出頭すること確保するためのものになります。

 

2 保釈金はどうやって決まるの?

それでは,この保釈金の金額はどのように決まるのでしょうか。

 刑事訴訟法93条2項では,「犯罪の性質及び情状,証拠の証明力並びに被告人の性格及び資産を考慮して,被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額でなければならない。」と記載されています。「被告人の出頭を保証するに足りる」金額,裁判官が「このぐらいの金額を預かっておけば,逃げずに裁判所に出頭してくれるだろう」と考える金額を支払わなければならないといっても過言ではないと思います。

 したがって,芸能人ではない一般人の方の保釈金であっても,200万円~300万円の支払いが要求されるのが通常です。これに対し,芸能人や高収入の方で,200万円程度では,出頭しなければならないという金額ではない場合には,数千万円,場合によっては億を越える金額が決定されることもあります。

 

3 最後に弁護士より

 保釈については,被告人が長期間身体を拘束されることによる,不利益を回避するために有意義な制度ではあるとは思います。しかし,無実の罪の方の場合を除き,起訴されて身体拘束されている人は,それだけ重大な犯罪を犯してしまったため,拘束されているという事実を忘れてはいけないと考えています。自分で犯してしまった罪と向き合い,もう二度と罪を犯さないようにするために,保釈をしないという方もいらっしゃいます。もっとも,保釈の必要性が認められる方も当然おられます。保釈を認めてもらうためには弁護士の協力が必要不可欠であるため,是非一度,弁護士にご相談ください。

2018.10.04

保釈とは①

芸能人や有名人が逮捕されてしばらくすると,裁判が始まる前に保釈されたというニュースを目にすることがあります。保釈とはどういった制度なのでしょうか。

どうして逮捕されてすぐに保釈をしないのでしょうか。

 

【弁護士からの回答】

 犯罪を行い,逮捕されるといった事態が起きない限り,一般の方が保釈について知りうる機会は,上記のような芸能人などのニュースの場面でしかないのではないかと思います。そこで,今回から数回にかけて保釈についてご説明させていただきます。今回は,保釈の定義や要件をご説明させていただきます。

 

1 保釈とは

 保釈とは,刑事訴訟法により認められている制度で,被告人が一定の金銭の納付等を条件にして,勾留を停止し,身体拘束の状態から解放するものです。

 通常,犯罪を行い,逮捕され,起訴(刑事裁判にかけられることです。)されると(刑事手続きの正確な流れについては,別の機会にご説明させていただきます。),裁判が行われている期間については,留置場や拘置所いなければならず,身体が高速された状態になっています(この状態を勾留(起訴後勾留)といいます。)。起訴されてから裁判が始まるまでの期間については,事件の性質によっても異なりますが,最低でも3週間程度要するとされており(重大な事件の場合には数か月要する場合もあります。),その期間身体拘束が継続することによる不利益を回避するために,一定の要件を満たし,かつ金銭の納付をした者に対し,身体拘束から解放することを認めています。

 

2 保釈はいつからできるのか

 上記のように,保釈は,被告人,すなわち起訴された人のための制度であるため,まだ,逮捕されて起訴されていない人(被疑者といいます。)には保釈は認められていません。よく,逮捕された人やそのご親族から「すぐに保釈してください」と頼まれることがあるのですが,その際には,「残念ですが,起訴されるまでは保釈がそもそも認められていないのですよ」と説明することを繰り返しています。

 

3 保釈の要件は?

 保釈には,権利保釈,裁量保釈,義務的保釈という3つの種類があり,権利保釈は,刑事訴訟法に定めた事由(重大犯罪の場合,常習犯罪の場合,罪証隠滅の恐れがある場合)に1つも該当しない場合に必ず認められるものです。裁量保釈は,権利保釈が認められない場合であっても,裁判所が適当と認めるとき(失職の恐れがある場合,家庭の事情,逃亡や証拠隠滅の恐れの有無,捜査の進捗,示談の有無などを総合的に判断します。)に認められるものです。義務的保釈とは,あまりなされるものではありませんが,勾留による身体拘束が不当に長期間に渡っている場合に認められるものです。

 今回は,保釈の要件についてご説明させていただきました。次回は,保釈金などについてご説明させていただきます。

2018.10.02

どうして第三者委員会に弁護士が?

 ニュース等で,企業やスポーツ団体に不祥事などが起きたときに,第三者委員会というものが設置されるのを目にするのですが,第三者委員会のメンバーに弁護士の方が入っているのを見かけます。スポーツの専門家ではない弁護士がなぜメンバーに入っているのか気になりました。

【弁護士からの回答】

 ニュースでも連日,不祥事などの問題が多く報じられており,問題となっている事実等が存在したか否かについて,判断をする第三者委員会というものが設置されているのを目にされている方も多いのではないかと思います。そこで,今回は,第三者委員会における弁護士の役割についてご説明させていただきます。

 

1 第三者委員会とは

 第三者委員会という名称は,法律などで決まっているわけではなく,何らかの問題が発生したときに,当事者以外の外部の有識者によって,構成され,問題となっている事柄の存否,原因等を調査するための委員会のことをいいます。

 以前は,会社や団体内で問題が生じた際には,会社の担当者などが内々で調査をするというのが一般的でしたが,マスメディアやインターネットの発達により,こうした内部での調査に対しては,調査の客観性に対して疑念を持たれるようになったため,当事者ではない第三者に調査を依頼することにより,調査の信頼性等を確保することを目的としています。

 

2 弁護士の必要性について

 上記のように,第三者委員会では,事実の有無の調査,事実が存在した場合における適法・不適法(違法)の調査などが行われます。そして,弁護士の仕事の1つとして(弁護士の仕事の内容については,機会があればまとめてお話しさせていただければと考えています。),裁判での活動があり,裁判での弁護士の活動は,証拠に基づき事実を認定するよう裁判所に求め,または,その事実が法律の要件に該当するかしないかについて主張を行うことが求められます。

 このように,日々の業務において,弁護士は,事実の有無の判断や,事実の調査,当該事実の適法・不適法の判断等を専門的に行っているため,そのような弁護士が第三者委員会に参入することで,調査委の正確性や信頼性が確保されることになるため,多くの第三者委員会において,弁護士が委員として入ることになっています。

 もっとも,弁護士自身,団体の内部のルールやスポーツのルール等の独自の専門的分野については,知識がないのが一般的であるため,第三者委員会には,そうした当該分野の専門家や有識者もメンバーとして入ることもあります。 

 

3 最後に弁護士より

 このように,第三者委員会に弁護士が入ることにより,調査の公平性,正確性を確保することができます。もっとも,弁護士としての立場としては,企業などにおいてトラブルが発生する前に発生するリスクを発見し,リスクをなくしていくことが企業や団体にとって,とてもメリットが高いと感じています。

 したがって,企業の経営者の方には,企業の規模の大小にかかわらず,顧問弁護士をつけていただくことをおすすめしています。当事務所の顧問契約は,払い込んだ顧問料が繰り越すことができるフレックス顧問契約というものを採用しているため,是非一度ご検討ください。

 

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